公認心理師 2019-38

問38は半構造化面接に関する問題です。
過去にまとめている記事があるので、こちらもご参照ください(有斐閣の「臨床心理学」では構造化面接と質問紙法を分けてありますが、実態としては同じものと見なして良いと思います)。

問38 半構造化面接について、不適切なものを1つ選べ。
①質問紙型の面接ともいわれる。
②質問を追加することができる。
③面接の前に質問項目を用意する。
④構造化の程度による面接区分の一種である。
⑤対象者の反応に応じ、質問の順番を変更する。

過去問としては、2018追加-34の選択肢①で少し出てきていますね。
また、2018追加-16の選択肢⑤も「構造化面接-半構造化面接-非構造化面接」の理解を前提に解かせる内容となっていますね。
ブループリントにも記載があり、それほど理解が難しいわけでもないので、しっかりと押さえておきましょう。

解答のポイント

「構造化面接-半構造化面接-非構造化面接」の異同をしっかりと理解していること。

選択肢の解説

①質問紙型の面接ともいわれる。

面接形態には構造化面接・半構造化面接・非構造化面接があります。

  • 構造化面接:
    あらかじめ設定された仮説に沿って、事前に質問すべき項目を決めておき、仮説の妥当性を検証するためのデータを統計的に収集することが目的であることが多い
  • 半構造化面接:
    あらかじめ仮説を設定し、質問項目も決めておきますが、会話の流れに応じ、質問の変更や追加を行って自由な反応を引き出すもの。
  • 非構造化面接:
    質問項目を特に用意はせず、被面接者の反応に応じ、自由に方向づけを行う。多面的・多層的・全体的なデータを収集して、仮説を生成することが目的であることが多い。

非構造化面接のように、クライエントが自由に語ることで得られる情報は多いと思われます。
一方で、アセスメント面接では人格検査・知能検査を実施することもありますが、こちらは質問項目が決まっている典型的な構造化面接になります
ただし、人格検査でも投影法のようなクライエントの反応によって、こちらの対応が変わってくる可能性があるものは異なりますね。
選択肢にある質問紙のような質問内容が常に決まっており、その回答次第で対応が変わらないものを「構造化面接」と呼んでよいわけです

以上より、選択肢①は構造化面接に関する記述であり、誤りと判断できるので、こちらを選択することが求められます。

②質問を追加することができる。
③面接の前に質問項目を用意する。
④構造化の程度による面接区分の一種である。
⑤対象者の反応に応じ、質問の順番を変更する。

上記の通り、これらの内容は全て「半構造化面接」に関する記述だと見なすのが適切です。
そもそも「構造化面接・半構造化面接・非構造化面接」という分類は、選択肢④にある「構造化の程度による面接区分」であり、半構造化面接というのはその一種ということです

その特徴は「あらかじめ仮説を設定し、質問項目も決めておきますが、会話の流れに応じ、質問の変更や追加を行って自由な反応を引き出すもの」ですから、選択肢③の「面接前に質問項目を用意」した上で、「質問を追加」したり(選択肢②)、「対象者の反応に応じ、質問の順番を変更する」(選択肢⑤)という、柔軟性を含んだやり方となります

カウンセリング場面では、これらの構造を「あまり意識せずに」使い分けていると思います。
例えば、「死にたい」と言われたときに、その思いを自由に語ってもらう場面もあれば、「具体的に方法を考えたりしていますか?」といった定型の質問を行うこともあるでしょう。
これらの構造区分は説明のための方便のようなもので、実態としてはグラデーションです。

グラデーションの移り変わりで基準とすべきは、クライエントの内にあるこころの文脈というか、雰囲気の流れに反さないようにするということです。
すなわち、クライエントが自由に語っているときに、いきなり事務的な質問様式が出てきてしまうと、明らかに空気や雰囲気のずれが生じてしまいます。
そんなことにならないよう、カウンセリング過程の「空気を読む」「流れを読む」ということは大切だと思っていますし、これは普段の対人関係の中で練習することもできることだと思います。

また、定型の質問であっても、そのカウンセリング過程の文脈に沿って伝えられるような技術も重要です。
それは定型の質問を言い換える力だったり、その質問を行うことが自然な文脈になるまで自制する力だったり、定型の質問を情緒でくるむ力だったりします。
もちろん、事務的に問うた方が良い場面というのも存在します。

このように「構造化面接・半構造化面接・非構造化面接」と分けてはいますが、その実態はゴチャゴチャしたものだろうというのが実践から見た正直なところです。
いずれにせよ、選択肢②~選択肢⑤の内容は半構造化面接の特徴を述べたものと見なして相違ありません。
よって、選択肢②~選択肢⑤は半構造化面接について述べたものと判断でき、除外することが求められます。

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