公認心理師 2018追加-34

心理アセスメントについて、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

心理アセスメントは、公認心理師法第4条第1号に「心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること」と記載があり、この業務を行う者が公認心理師と言えます。

アセスメント面接における基本的な内容が問われています。
インテーク面接などの知識も若干混じってきますね。

解答のポイント

アセスメント面接の基本的ルールについて把握していること。
アセスメント面接が行われる状況、目的、具体的なやり方などについて、領域を超えて共通している事柄を把握していること。

選択肢の解説

『①アセスメント面接では構造化されていない自由面接を用いる』

公認心理師2018追加-16でも述べたとおり、面接形態には構造化面接・半構造化面接・非構造化面接があります。

  • 構造化面接:
    あらかじめ設定された仮説に沿って、事前に質問すべき項目を決めておき、仮説の妥当性を検証するためのデータを統計的に収集することが目的であることが多い。
  • 半構造化面接:
    あらかじめ仮説を設定し、質問項目も決めておきますが、会話の流れに応じ、質問の変更や追加を行って自由な反応を引き出すもの。
  • 非構造化面接:
    質問項目を特に用意はせず、被面接者の反応に応じ、自由に方向づけを行う。多面的・多層的・全体的なデータを収集して、仮説を生成することが目的であることが多い。

非構造化面接のように、クライエントが自由に語ることで得られる情報は多いと思われます。
一方で、アセスメント面接では人格検査・知能検査を実施することもありますが、こちらは質問項目が決まっている典型的な構造化面接になります

また、医療機関であれば特定の病理が疑われた時点で、特定の質問項目を決め、そこから会話の流れに応じて随時変更していく形式(半構造化面接)を採用することも多いでしょう
このことは特定の病理だけでなく、特定の問題を専門的に扱う機関全般に言えることでしょう

熟練の心理師になれば、クライエントに「自由に語っている」「語りたいことを語っている」という実感を持たせつつ、アセスメントに必要な情報をきちんと把握しているという形になっているものです。
構造化面接・半構造化面接・非構造化面接という分類は、あくまでも説明のための方便と捉えておいた方がよく、成長とともに実践ではその境界線があいまいになっていくというのが良いのだろうと考えています

以上より、選択肢①は不適切と言え、こちらを選ぶことが求められます。

『②アセスメント面接は一般に治療的面接を開始する前に行われる』

こちらはインテーク(初回、受理)面接の内容と捉えることも可能です。
インテーク面接では、クライエントの見立てを行うための情報収集、すなわちアセスメント面接を行います

アセスメント面接を行い、その結果によっては他機関にリファーすることも考える必要があります
例えば、大学附属のカウンセリングセンターなどで、統合失調症の急性期状態のクライエントや、自殺念慮が強いクライエントを受け入れることは難しいので、他機関にリファーするという選択を行います。

またアセスメント面接の結果、所属機関で受け入れてカウンセリングを実施する場合、その第1回目の面接以降(クライエントからすると2回目以降)がいわゆる「治療的面接」とされます
もちろん、アセスメント自体は治療的面接の中でも刻々と行われているものではありますが、治療を開始する上での見立てや所属機関で受け入れられるか否かといった判断をするためのアセスメント面接は治療的面接実施前に行うのが一般的と言えます

なお、インテーカー(インテークを行うカウンセラーのこと)はある程度経験のある心理師が行い、それ以降の治療的面接は別のカウンセラーが担当するという形式が大学附属カウンセリングセンター等を中心に見られます。
臨床心理士の世界ではかなり一般的な形式ですが、私個人はこの形式には賛成しかねます。

クライエントからすると、インテーカーとの関係性が重要であることが少なくないので、短期間に2人のカウンセラーと立て続けに会うというのは大変なことです。
また、インテーカーとは言えやはりクライエントとの人間関係が生じるので、クライエントからすると「信頼できそうな人だったから継続で面接に来たのに」となっても不思議ではありません。

もちろん、インテーカーとクライエントが結ぶ信頼関係は、インテーカー個人に対してではなく、カウンセリング文化全体への信頼となっているのが適切です。
しかし、それも少し無理がある論ではないかなというのが個人的な印象ですね。
何をもってカウンセリング文化全体への信頼を高めたかというのは判断できないところですし、カウンセラー側の自己満足と言われても反論しようがありませんので。

いずれにせよ、本選択肢の通りアセスメント面接、特に治療的面接を行っていく上での見立てや受け入れの可否についての判断は、治療的面接を行う前に実施するのがセオリーです
よって、選択肢②は適切と言え、除外することが求められます。

『③クライエントのリソースや強みなど肯定的心理的特徴も見定める』

アセスメントにおいては、クライエントの問題や症状といった点だけでなく、ポジティブな心理的特徴や社会的資源、家族の協力具合なども見定めていくことが重要です
例えば、「あなたがそんなに苦しい状況なのに、仕事を続けられたのは何があったからか?」などの質問によって、サポート資源などが明らかになることもあります。
このようなクライエントの伸ばした方が良い面なども、面接の中では取り上げていくことが多いので、こうした点のアセスメントも重要になります

ただ、この選択肢の内容には心理臨床業務を行う者としてちょっと引っかかるニュアンスがあります。
それは「肯定的」という表現です。
これはクライエントの特徴を「肯定的」「否定的」という二分法で捉える思想が背景にあると推測できますが、実際のクライエントの特徴には肯定的・否定的が混在しているのが通常です。

例えば、Kannerが示した「症状の意義」には以下のような事柄が挙げられます。

  • 入場券としての症状:
    症状は映画の入場券と同じで、それを見ただけでは中身まではわからない。
    すなわち、症状だけからクライエントの心理的問題の全容を把握することはできない。
  • 危険信号としての症状:
    症状は「ここに何とかせねばならない問題がありますよ」というアラームとしての機能がある。
  • 迷惑事としての症状:
    支援を受けるためには周囲に気づかれることが必要になる。
    そのためには周囲の目に留まる必要があるので、症状は周囲にとって厄介で迷惑な反応となりやすい。
  • 問題解決の企図としての症状:
    症状は、その人なりに自分の問題を何とかしようとした結果生じる。
    例えば、夫婦の不仲を自身の体調不良で結び付けようとする子どもなど。

症状はクライエントにとっても一般的にもネガティブなものであると言えます。
しかし、症状には上記のような様々な意味が隠されており、ネガティブであるかどうかは状況や視点、置かれた立場で変わるものです

よって、本来は特徴ごとに「否定的・肯定的」という分け方をするのではなく、ある特徴の肯定的側面と否定的側面の両面をアセスメントするということが重要となります
いずれにせよ、本選択肢の内容は概ね適切と言うことができるでしょう。

以上より、選択肢③は適切と言え、除外することが求められます。

『④クライエントの問題を包括的に捉えるためにテストバッテリーを組む』

こちらの選択肢は意外と間違えやすいのではないかと思います。
この内容を「アセスメント面接ではテストバッテリーを組むことが前提である」と読み違えてしまうと間違えてしまいます。

あくまでも「クライエントの問題を包括的に捉える」という目的のために、「テストバッテリーを組む」ということの整合性について問うていると捉えるのが良いでしょう
当然、包括的な理解のためにテストバッテリーを組むというやり方を選択することは十分あり得ると言えます

包括的な理解のためというと、クライエントの精神内界・機能のさまざまな水準を把握するという意味が考えられると思います
例えば、SCTとロールシャッハテストを組み合わせるということがありますが、これはSCTという投影法でも比較的表層的・全般的な理解に富む検査と、ロールシャッハテストという深層心理の理解が可能な検査を組み合わせることで、幅広い理解が可能になります。
また、人格検査と知能検査を組み合わせることで、心理的側面と発達的側面の両面からクライエントの問題を把握することが可能になります。

以上のように、選択肢④は適切と言え、除外することが求められます。

『⑤クライエントの許可を得たうえで、必要に応じて関係者から情報を収集する』

クライエントの問題によっては、関係者から情報を収集することが重要であることも少なくありません。

発達障害児であれば、本人だけでなく家族、学校教員からも聞き取りができると望ましいです。
その大きな理由として、いくつかの発達障害の診断基準に2つ以上の状況下で症状が生じていることが要件として挙げられているということがあります
複数の状況下での本人の様子を、客観的に把握することが重要になります。

また認知症者であれば、家庭内と社会的場面での本人の症状にはずいぶん違いがあるとされています
この場合、家族からの情報収集によって、クライエントの状態を適切に把握することがしやすくなると言えます。

更に不登校児では、SCと面談するには学校に来てもらう必要があることが少なくありませんが、そもそも学校に来れないのにという矛盾した状況も生じやすいです
そういった場合、保護者に来てもらって本人の状態を把握し、家庭内でできること、学校ができることを見立てていくことが求められます。

上記の認知症や不登校児では、クライエント本人から許可を得るのが難しい場合も少なくありません。
ですが、それを取り付けようとする努力自体が心理療法的意味を持つことも少なくありません

クライエントが拒否をすれば、どういったところが嫌なのかということを聞くことが自然ですが、この「私は他の人から情報を出されたくない」という意思の背景にある思いはアセスメントにおいて非常に重要な事柄であることが多いです
周囲との関係性、本人の抱えている問題の水準などがそこから見えてきます。

そして、そういった手続きを経ることで「あなたが支援の主体であり、あなたの意向を無視して何事も進めることはしない」といったメッセージに成り得ますし、大げさに言えば「あなたを一人の人格を持つ個人として尊重する」ということにもなると思います

以上より、選択肢⑤は適切と言え、除外することが求められます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です