臨床心理士 ロールシャッハ:H7-50

ロールシャッハ習得のための留意点に関する問題です。
ロールシャッハ手続きの各段階の価値を理解しておくことが重要ですね。
一度は実施しておくとわかりやすいかもしれないですね。

A.質問段階の質問手法は、本法にとって決定因の確定のために最も大切なものである。

質問段階では、自由反応段階で得られた反応について、いくつかの角度から質問を行います。
この質疑のテクニックは非常に重視です。
それによって、反応を分類する上で重要な情報が得られます。

さきの段階では、被験者の自発的な反応を待ったのであるが、この段階では、被験者は、検査者の一定の質問に答えることになります。
しかし、検査者の質問の仕方はやはり非指示的であり、被験者の自発的な応答が中心となります。

この段階における検査者の役割は、かなり熟練を要するものとされています。
検査者は分類法を完全に習得した上で、順次質問を展開しながらも、それが誘導的であっても暗示的であってもなりません。
この段階で検査者がすべきことは、得られた各反応について、より適切に分類することができるように、主として「その反応は図版のどこに対してなされたのか(反応領域)」、「その反応はいかにして決定づけられたのか(反応決定因)」、「反応内容は何か(反応内容)」の三つの面から質問していくことです。

Beck、Klopferともにこの質疑の重要性を認めており、とくにKlopferはかなりまとまった手順を示しています。
彼によれば、この質疑の巧妙さと、テスト全般に関する検査者の豊かな知識によって反応が反応として生きるのだとしています。
ただし、質問をすればするほど良いというものではなく、聞き漏らしがないようにとあらゆる角度から突っ込んだ質問をして情報を多く得ようとすると危険が伴うことになります。
必要なのは、その被験者の、その反応の精度なり性質なりにマッチした聞き方、突っ込み方をすることが必要ということです
以上の事柄より、選択肢Aは○と判断できます。

B.継起分析の適用には、内容分析法の習得が必要とされる。

1940年代以降、内容分析の重要性が認識されるようになりました。
それはRorschachが強調した知覚の形式的な面の意義を否定するものではなく、むしろ、取り残された側面として、内容分析の方向が注目されたためです。
例えば、あるプロトコルは形式的な分析からは、とくに異常を指摘できないにも関わらず、内容的に見ると明らかに問題を持つと診断されることが稀ではありません。
内容分析は多岐にわたっており、反応内容の一般的な意味づけから、特殊な内容分析法に至るまでさまざまです。

馬場(1995)は、継起分析の方法について述べており、その中で反応継起の前段階として各反応語の分析を行うこととしています。
1個の反応語を構成しているのは、領域・決定因・内容・形態水準という記号化された4つの側面です。
さらに記号化されないが重要な構成要素として、その反応語を示す際の被験者の態度という要素があります。
このそれぞれが被験者の行動や表現を反映することになります。
インクブロットの全体、あるいは一部を何に見立てたか、どのような場面に見立てたかというのが反応内容です。
ここには領域や決定因とは異なる要素があります。
それは見立てることに伴う想像活動です。

被験者は一般に、意識レベルでは、ブロットの客観的属性に基づいて、似ているものを見つけ出そうとしています。
しかし無意識的には、刺激条件から、感覚的感情的反応が活性化されているので、さまざまな個人的連想や想像が誘発されやすいです。
この客観的認知と個人的連想とが混ざり合って反応内容を構成することになります。
また、継起分析では、個々の反応内容の意味ばかりでなく、その連続的展開にも注目するわけです。
これらの事柄より、継起分析習得には内容分析法が欠かせないということができそうなので、選択肢Bは○と判断できます。

C.サイン・アプローチは、全体の実施手続きと共に、本法習得のための最初のカリキュラムである。

サイン・アプローチとは、群間比較に基づいたいわゆる実証的なデータから、スコアおよびその量について、その意味するところに関する知見を示すことです。
例えば、「M反応の多い人は、~である」というように、述語部分を対象の属性に依拠して決定した上で、命題の主題に当たる部分をさまざまなスコア特徴で発見する試みです。

ロールシャッハにおいて、力動的な理解がその理論的妥当性の観点から見て、いかに優れたものであっても、実際は、同じプロトコルを対象にした臨床所見が、テスターによって異なることはよくあります。
従ってテスト解釈に必要な臨床経験に基づいた理解力、あるいは臨床家のセンスの重要さを強調すれば、その作業はしばしば職人芸にたとえられてきました。
プロトコルのどの部分、要素を重視し、そのほかの特徴との関連をどのように把握するか、その上で被験者の最も本質的な病理に言及するという作業には、テスターのさまざまな能力がかかわって来ざるを得ません。
所見を書くという作業は人間がやることであるから、以上のことは心理臨床に携わるものの避けられない現実であるという認識は持たねばなりません。

他方、それだからこと「臨床」は非科学的なのだという論があります。
後者のような観点に立つと、「誰が何度やっても同じ」という意味での信頼性と、統計的実証によって妥当性を確保することが必要となります。
そういった試みの一つがサイン・アプローチであり、近年のエクスナー法の隆盛であるといえるでしょう。

以上の事柄より、サイン・アプローチは継起分析に代表される力動的解釈と並び、重要な位置を占めていると言えますから、選択肢Cは○と判断できます。

D.本法習得のためのスーパーヴィジョンは、主として解釈について行われる。

ロールシャッハのスーパーヴィジョンで行われるのは以下の通りです。

  1. ロールシャッハを体験する;スーパーヴァイジーはスーパーヴァイザーでない臨床心理士から検査を受け、テープに記録し、逐語記録を作る。その際にどんな体験であったかも記録する。
  2. スコアリングの学習;各自、練習問題によってスコアリングを習得し、整理の方法に慣れる。この過程はスーパーヴァイジーの独習となるが、グループメンバー間で積極的に討論をしてもらう。
  3. スーパーヴァイジーはテスターになってその状況を録音し、逐語記録を作り、それによってスコアリングを行う。まだスコアリングは不充分であるが、主として質問段階における記号の確かめ方についてスーパーヴィジョンがなされる。これを通して、各カードの特性についても説明する(この段階では解釈については触れない)。
  4. テスターの葛藤;質問段階になると、スコアリングのために聞きたい質問と暗い円との心理的状態によって聞いても答えが返らない場合と、実施上禁止されている質問とで、テスターはさまざまな葛藤にさらされる。またクライエントから説明されるほど記号化ができない場合もある。検査実施場面における臨床家とクライエントの関係は複雑で一筋縄ではいかない。しかしこういうことは心理臨床行為の中で日常的に起こる心理臨床家の葛藤でもある。二人の関係の中で心理臨床家がどういう情報を選んで、クライエントを理解していくのか。ロールシャッハの質問段階ではこういう問題を考えていくのもスーパーヴィジョンの重要なことである。
  5. ロールシャッハの特性と人格理論;自由反応段階と質問段階があることによって、クライエントの情報が豊かに得られること、イメージを形成する力、他者との関係の中でイメージを共有できる力、ここで働く自我機能のあり方など、心理学のモデルを実際の反応形式に触れて理解が進む。

上記の1~3までは2~5回くらいのSVをあてます。
時には質問段階の訓練のためにロールプレイを行うこともあります。
質問段階は、クライエントとの相互関係が大切であることを経験し、クライエントを尊重しながら、必要な情報は確かめていきます。
心理療法過程での明確化と共通するものがあるので、それらを踏まえてスーパーヴィジョンの中盤には中心課題となります。
クライエントのイメージ形成過程を追っていきながら、そのイメージを客観化、あるいは共通化を行う過程であることを学習してもらうわけです。

以上よりロールシャッハテストのスーパーヴィジョンでは解釈以外の指導も行われると言えますから、選択肢Dは×と判断できます。

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