公認心理師 2024-37

子どもの心理的アセスメントにおける人物画の表現の取扱いに関する問題です。

正答は選びやすいと思いますが、それ以外の選択肢にきちんと理由を付けられることが重要ですね。

問37 子どもの心理的アセスメントにおける人物画の表現の取扱いについて、不適切なものを1つ選べ。
① 知的発達の評価に用いる。
② 省略された物や部分について検討する。
③ 描かれたものについて実施後に話題にする。
④ 対人関係やパーソナリティの理解に活用する。
⑤ 描画内容が示唆するものを一義的に解釈する。

選択肢の解説

① 知的発達の評価に用いる。
③ 描かれたものについて実施後に話題にする。
④ 対人関係やパーソナリティの理解に活用する。

人物画検査には大きく二つ存在し、一つはDAP(Draw a Person)であり、もう一つはDAM(Draw a Man)です。

DAPはMachover(マッコーバー)が作成した「パーソナリティ検査」になります(選択肢④で問われているのはこっちのこと)。

性別の異なる1人の人物をそれぞれ1枚ずつ描き、それらの人物を描く過程での内容や順序、その他さまざまな要素(動態分析や形態分析という表現は使ってないけど、そういうもの)を解釈し、被検査者の人格特徴を査定します。

「Macを食べすぎて(マックをオーバー=マッコーバー)、お腹がダップダップ(DAP)」と覚えておきましょう。

こうしたDAPに対して、DAMはGoodenough(グッドイナフ)が開発した「動作性知能検査」になります(選択肢①で問われているのはこちらのことですね)。

1926年にグッドイナフが最初に知能を測定する簡便な方法として報告し、世界各地で広範囲に施行されています。

DAMの特徴は、「人を一人描いてください(頭の先から足の先まで全部です)」という教示をするため特に子どもが好んで積極的に実施すること、言語や聴覚に問題のある被検査者にも適用できること、採点が容易であることなどが挙げられます。

女性が描かれた場合は、更に男性を描いてもらい、男性像のみを採点の対象とします。

からだの各パーツごとに設けられた採点基準があり(こういう風に手を描くのは〇歳〇カ月みたいな感じで)、それに従って採点を行い評価と検討を行うことになります。

ちなみに適用年齢は健常児の場合、3歳~8歳半までになります。

そして、選択肢③「描かれたものについて実施後に話題にする」についても考えてみましょう。

DAM(知能を測定する方)については、知的水準測定のために採点を行う(日本にDAMを導入した桐原の採点基準では51の採点項目が存在する)わけですが、子どもが描くものですから、どうしても採点の際に判定に迷う箇所が出てきます。

その場合は、絵を話題にしつつ簡単に確認していくという作業が入ってくるでしょうし、そもそも子どもに絵を描かせておいて、その絵を受け取って何もコメントせずに終わるというのもカウンセラーというよりも「子どもとやり取りする大人」としていかがなものかと思います。

また、DAMは描かれたものを数量化して知能測定するばかりではなく、知覚・認知面での障害の有無の予測や、クライエントの「人間」に対する興味の在り様、顔の表情の実際に投影される描き手の感情、などを細かく見ていくことによって、パーソナリティ解釈にも有効な材料をもたらしてくれるものです。

もちろん、この点については「DAM」という検査の枠を超えたものではありますが(内容としては「DAP」のものですよね)、それでも描かれた絵を介したやり取りを通して、できる限りクライエントに資する情報を得ようとすることが大切になります。

さて、パーソナリティの査定を行う「DAP」であれば、尚更、実施後にクライエントとやり取りすることは重要になってきます。

描画終了後には、描かれた絵を中心にして、クライエントに絵の説明をしてもらったり、検査者が質問をしたりしながら、話し合うことで描かれた絵について更に多くの情報を得ることが必要になってきます。

ですから、やはり「描かれたものについて実施後に話題にする」ということは基本的に行っていく内容であると言えますね。

以上より、選択肢①、選択肢③および選択肢⑤は適切と判断でき、除外することになります。

② 省略された物や部分について検討する。
⑤ 描画内容が示唆するものを一義的に解釈する。

選択肢②は解釈についてですが、各描画法には構成上必須の部分というのが存在します。

家屋画であれば「屋根」「壁」「窓」「扉」、樹木画であれば「樹冠」「幹」「枝」「根」、人物画であれば「顔」「首」「身体と衣服」「手」「足」などが必須部分として挙げられます。

特に内容分析では、これらの必須部分に省略や強調、描き直しや奇妙な表現があったか否か、ある部分にだけ多くの時間を費やしていないかを検討し、特有のサインの持つ意味を検討することになります。

具体的な例としては、後ろに回した手は抑制を示唆し、握りこぶしが敵意を示唆する、などとされています(あくまでも「示唆する」)。

他の描画法でも、人物画自体を省略する場合は葛藤や不安の存在を、省略された部分とその周辺に心理的否定を意味することが多いなどが示されています。

上記はDAP(パーソナリティアセスメントのほう)を中心に述べましたが、知的水準を評価するDAMであっても「その箇所がなぜ省略されたのか?」はとても大切な思考になります。

目の前の子どもと相対したときに感じる発達水準からすると、明らかに描かれた方が自然と思える箇所が省略されていた場合、①見かけの発達水準に誤りがある(例えば、子どもが合わせるのが上手いため、実際よりも発達水準が高く見えているだけで、実際の能力はもっと低いところにある等)、②何かしらの心理的要因によって省略されている(例えば、「手」という周囲と関わりの上で大切な箇所が省略されている:関わりの抑制の可能性)などがあります。

このように、「省略された物や部分について検討する」というのは描画法に対する解釈全般において重要な視点であると言えます。

さて、上記で解釈の例について述べた際、すべて「示唆する」という表現に留めていたことにお気づきでしょうか。

各描画法には、特にみられやすいサインと、それへの解釈が提示されています。

例えば、窓も扉もない家屋画はひきこもりや外界との接触の拒否を、樹木画における幹の傷が外傷体験や援助を求める気持ち、枝がすっぱりと切れていれば外界に対する抑制、風景構成法における田んぼは仕事や学校への態度が反映されている、などがあります(人物画についても、上記で述べた通りさまざまな知見が示されています)。

ただ、重要なのは、これらの細部のサインにこだわるとかえって全体的評価が混乱しやすいものになります。

あくまでも「そうである可能性が高い」というものに過ぎず、この細部のサインと、絵の全体を見渡した時の印象とに違いがあるのであれば、大切なのは「どっちが正しいのか」ではなく「この印象と解釈の違いはどこからきているのか」を考えることで、目の前のクライエントの心理状態を推定しやすくすることです。

ですから、「描画内容が示唆するものを一義的に解釈する」のは避けるべきであり、描画表現には多様な意味があり得ること、一義的に捉えることで豊かな意味を見逃す可能性などを考慮しておく必要があります。

以上を踏まえると、選択肢②は不適切と判断でき、除外することになります。

また、選択肢⑤が不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

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