公認心理師 2024-16

日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査を選択する問題です。

各選択肢が、どの検査を指しているのか読み取れることが前提になっていますね。

問16 高次脳機能の神経心理学的アセスメントにおいて、日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① KWCST
② RBMT
③ SLTA
④ VPTA
⑤ WMS-R

選択肢の解説

① KWCST

こちらは「慶應版ウィスコンシンカード分類検査」を指していますが、ここではまず「ウィスコンシンカード分類検査(Wisconsin Card Sorting Test:WCST)」について解説していきましょう。

ウィスコンシンカード分類課題は強化学習の状況の変化に直面した際の柔軟さを意味するセットシフティングの能力を見るための神経心理学的課題です。

この課題は前頭葉の機能障害に対して感受性をもつとされていることから、遂行機能(実行機能とも言われる) の計測法として有効であるとされています。

遂行機能には以下のような要素が含まれます。

  • 意思や目標の設定:
    目標の設定には、何をしたいのかを決め、未来に向けてどのようになるかを考えるといった複雑な過程が関係している。目標を明確化する能力、意図を形作る能力が必要で、それには動機づけ、自分自身や環境についての認識なども必要になる。
    一例としては、会話を始めない、感情の平板化、冷蔵庫が空でも買い物に行かない、などとなる。
  • 計画の立案:
    目標を達成するためには、必要な手段や技能、材料、人物などを決定する能力、よく考えてそれらを評価したり、選択を下す能力、更に行動を方向づける枠組みを構成し組織化する能力が必要である。
    一例として、話をまとめにくくなり、話題が飛んで核心に迫らなかったり、買い物が行き当たりばったりになるなど。
  • 目的ある行動・計画の実行:
    一連の複雑な行動に含まれる各行為を、行為者が正しい順序、かつまとまった形で、開始し、維持し、変換し、中止する能力が必要とされる。
    一例として、衝動的な行動は障害されないため衝動買いが多くなるなど。
  • 効果的に行動する:
    効果的な行動を行うためには、自分自身の行動を監視し、修正し、調節する能力が必要である。
    一例として、相手が関心がなくても話し続けるなど。

こうした障害の有無や程度を調べる方法として、ウィスコンシンカード分類課題があります。

この課題は自体は、6歳半から89歳までの幅広い年齢の患者に用いられています。

ただし「Wisconsin Card Sorting Test」として出版されているものに関しては、適用範囲が成人になっているなどさまざまではあります。

さて、本選択肢では「慶應版ウィスコンシンカード分類検査」であり、原法をNelsonが修正し、さらに編著者が変更を加えたものであり、慶應版は原法と比べて検査時間が短縮されていて、被検者の負担が少なくほとんどの脳損傷者に施行可能とされています。

原法のウィスコンシンカード分類検査よりも、実施法の簡便化や所要時間の短縮などの点で注意持続時間の短い5~6歳の年少児においても実施が十分可能であり、検査者にとっても評価が簡便であることや、発達障害への適用においても従来のWCSTよりも容易であるとされています。

とは言え、元々の「ウィスコンシンカード分類検査」と本質的な検査目的は変わりませんから、本問の「高次脳機能の神経心理学的アセスメントにおいて、日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② RBMT

記憶障害の検査は、その記憶内容による分類があります。

記憶はその内容によって、宣言的記憶・非宣言的記憶に分類され、宣言的記憶はエピソード記憶と意味記憶に、非宣言的記憶はプライミングと手続き的記憶に分類されます。

それぞれの記憶の種類の説明に関しては他に譲りますが(「公認心理師 2018追加-24」など)、以下では各記憶内容に沿った検査法を簡単に説明していきます。

【エピソード記憶の検査法:前向健忘の評価】

WMS-R:前向性健忘に関する総合的な検査バッテリー。この検査では、視覚性記憶指数、言語性記憶指数と遅延記憶指数に加え、注意・集中力指数を測定することができます。

Reyの聴覚性単語学習検査(AVLT):言語性素材の学習能力を評価する検査。短期記憶容量を超えた単語のリストを繰り返し提示し、そのたびに再生を行わせ、その内容を記録する。それに加え、干渉後の再生と遅延再生、再認の成績も併せて評価する。これにより言語性素材の学習効率、再生と再認成績の解離や、保続、迷入の有無など多くの情報を得ることができる。

三宅式記銘検査:題材として2つの単語が対になったものを10組含んだ単語リストを用いる。検査者は被検査者に単語リストを読んで聞かせ、これを記憶させる。その後、対になっていた単語の一方のみを提示し、もう一方の単語を再生させる。この学習と再生を3回繰り返して施行し、その成績を記録する。

Rey-Osterriethの複雑図形:視覚性記憶の代表的な検査。18のコンポーネントより構成された複雑な幾何学図形を題材として用いる。それぞれのコンポーネントにつき、形と位置が正しいものには2点、いずれかが正しいものを1点、形も位置も正確ではないが認識できるものを0.5点を与える。

ベントン視覚記銘検査:複数の単純な図形が同時に提示され、被験者は特定の提示時間の後に、学習した図形を記憶により描画する。10指向が1セットになっており、初めの2試行では1つの図形が、それ以降の試行では2つの大図形と1つの周辺図形が提示され、試行を重ねるごとに図形はより複雑になっていく。

Warringtonの再認テスト:言語素材として単語を、視覚素材として顔写真を用いる。被験者の言語性、視覚性記憶における再認能力を評価する検査。記銘用に50枚の写真を用い、それぞれ3秒に1枚のスピードで提示され、すべて見せられ終わると、見せられた刺激とディストラクターが1枚ずつ提示され、二者択一で正しいものを選択する。

リバーミード行動記憶検査(Rivermead behavioral memory test:RBMT):従来の記憶検査の成績は、必ずしも日常生活における障害のレベルを反映しているとは限らない。Wilsonらによって考案されたRBMTは、日常生活における障害を予測するために、普段の生活で記憶に加えられる負荷を想定して作られた検査である。認知症などの生活障害を定量化できる数少ない検査であり、検査結果や解釈が理解しやすいこと、予定(展望)記憶(しかるべき時に、あるいは適切なキューに基づいて、するべきことを思い出す能力のこと。これが低下すると、就労などの社会生活の支障となりやすい)を測定できる有用な検査と言える。
RBMTでは、人名の記銘と遅延再生、未知相貌と日用品の記銘と再認、道順の記銘と遅延再生、予定(展望)記憶など、日常生活で要求される能力の評価を目的とした課題から成り立っている。
cut off値として、39歳以下が19/20点、40~59歳が16/17点、60歳以上が15/16点、スクリーニング合計点のcut off値として、39歳以下が7/8点、40~59歳が7/8点、60歳以上が5/6点と示されており、Wilsonらによると12点を満たない場合は独居や就労、就学が困難とされます。

【エピソード記憶の検査法:逆向健忘の評価】

自伝的記憶検査:個人史を3期に分け、それぞれにおける質問項目を定めている。時間と場所が特定されたエピソードは3点、個人的であるが非特異的な出来事や、特異的であっても時間や場所が想起できなかったものは2点、漠然とした個人的な記憶には1点を与える。逆向健忘の期間や個人的意味記憶とエピソード記憶の解離、時間勾配の有無についての定量的評価が可能。

クロヴィッツテスト:被験者に10個から20個のキーワードを提示し、それから想起される個人的エピソードを聴取する。陳述されたエピソードの具体性に応じて点数化を行うが、採点方法は前述の自伝的記憶検査と同様。

社会的出来事検査:有名人にまつわる出来事や大きな事件など、社会的な出来事の想起も逆向健忘の評価に用いられることが多い。こうした検査は、逆向健忘の期間や時間勾配の検出に効果を有する反面、個人の興味や生活状況に影響を受けやすいため、結果の解釈には注意が必要になる。

【意味記憶の検査法】

意味記憶は年齢や生活環境により大きく作用されるため、標準化された検査は少ないです。

例えば、ウェクスラー式の言語性下位検査である知識、単語、動作性下位検査である感が完成課題などは、それぞれ言語性、視覚性の意味記憶検査として見なすことができます。

【非宣言的記憶の検査法:プライミング】

Warringtonらは、段階的に単語や線画の一部を消去した画像を用い、被験者に最も断片化の程度の強い情報の乏しい画像から、徐々に断片化の少ない元の素材に近い画像を提示し、どの段階で同定できたのか記録しました。

この繰り返しの中で、より断片化の強い画像での同定が可能になり、この効果は翌日も持続しており、これが知覚性プライミングの代表的な例とされています。

【非宣言的記憶の検査法:手続き記憶】

回転盤追跡課題:知覚運動技能に関する手続き記憶の検査法。被験者は回転する円盤状の指標に、片手で持ったペン状の電極をできるだけ長時間接触させる。電極は記録計に接続されており、指標と電極が接触した時間と回数が記録される。訓練により指標との接触時間は増加する。

鏡映描画課題:知覚運動技能の獲得を調べる検査。被験者には自分の手の動きは鏡を通してしか見えないように鏡と衝立を設置し、その状態で2本の平行線で構成された図形をトレースするように命じる。検査者は所要時間と線から逸脱した回数を記録する。訓練の結果、逸脱の回数は減少し、所要時間も短縮する。技能の改善は訓練時と異なる図形を用いた場合でも見られる。

鏡映文字音読検査:知覚処理に関する手続き記憶の検査であり、上肢の運動要因を含まない。鏡を映したように形態の左右を反転させた単語のリストを用いる。リストの半数は各試行を通じて同じ単語を、残りの半数は各試行ごとに異なる語を用いる。リストの音読を繰り返し試行すると、繰り返し出現した単語だけでなく、新規に出現する語に関しても所要時間が短縮する。つまり、視覚パターン分析に関わる技能の獲得がみられる。

ハノイの塔:手続き記憶は運動や知覚処理だけでなく、問題解決に要する認知課題でも獲得されることが知られている。ハノイの塔は3本の棒にはめ込んである円盤の山を、最初の棒から別の棒へ移動させる課題である。円盤は1度に1枚、小さい円盤の上に大きい円盤を重ねてはだめというルールがある。5枚の円盤を用いた場合は、最短で31回円盤を動かさなくてはならない。訓練を重ねることにより、より少ない回数で円盤の山を移動させることが可能になる。なお、多くの円盤がある課題をさせるという拷問が古代にはあったという(1秒間に1つ動かしても一生かかる)。

さて、上記に記載してあるRBMTは、エピソード記憶に関する障害の検査であることがわかります。

従来の記憶検査の成績は、必ずしも日常生活における障害のレベルを反映しているとは限らないという視点から作成され、日常生活における障害を予測するために、普段の生活で記憶に加えられる負荷を想定して作られたという特徴を有しています。

認知症などの生活障害を定量化できる数少ない検査であり、検査結果や解釈が理解しやすいこと、予定(展望)記憶(しかるべき時に、あるいは適切なキューに基づいて、するべきことを思い出す能力のこと。これが低下すると、就労などの社会生活の支障となりやすい)を測定できる有用な検査と言えます。

これらを踏まえれば、リバーミード行動記憶検査(Rivermead behavioral memory test:RBMT)は「高次脳機能の神経心理学的アセスメントにおいて、日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査」であると言えますね。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

③ SLTA

失語症は大脳の一定部位が限局性に損傷された結果生じる巣症状で、通常は、聴く、話す、読む、書くのいずれかの言語様式でも何らかの能力低下を示します。

こうした言語症状およびその類型としての失語症の型を明らかにするために、失語症検査が用いられます。

失語症者の言語能力を検査する方法としては、「標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia:SLTA)」「WAB失語症検査日本語版」がよく用いられております。

一方、これらの失語症検査が聴覚理解や口頭表出など言語様式別に検索する検査法であるのに対し、より実用的な言語運用の側面を評価する検査として「実用コミュニケーション能力検査(CADL)」が開発されています。

標準失語症検査(Standard Language Test of Aphasia:SLTA)は、リハビリテーション計画作成のための症状把握を目的に日本で開発された失語症検査です。

聴く(聴覚的言語理解)、話す(口語言語表出)、読む(音読、読字理解)、書く(自発書字、書取)、計算(四則筆算)の5つの大項目からなり、その下に合計26の下位項目があり、所要時間は60~90分とされています。

各言語様式で単音、単語、文レベルの能力を検索します。

読み書きに関しては漢字と仮名を別々に検査するなど日本語の特徴に即した内容になっています(漢字と仮名で脳の機能する場所が違うのは「公認心理師 2021-10」で示した通りですしね)。

原則として6段階に評価され、第6段階および第5段階の反応が得点となります。

SLTAは、失語症のタイプを分類することを主目的とした検査ではないので、必ずしも各失語型が示す典型的なプロフィールパターンがあるとは言えませんが、ウェルニッケ失語では下位項目1の「単語の理解」で得点が低下していたり、伝導失語では復唱の項目が低得点だったりするなど、ある程度の特徴が現れる場合があります。

また、純粋語啞では復唱や音読を含む「話す」の下位項目での低下、純粋語聾では聴覚入力を必要とする項目(聴く、復唱、書取)での低下など、それぞれの純粋型では言語様式間で得点差の著しいプロフィールとなります。

さらに、日本失語症学会(1999)により、SLTAの26項目の難易度だけではカバーできない軽度の失語症の症状把握や掘り下げテストを目的とした標準失語症検査補助テスト(SLTA-ST)が出版されています。

単純な質問に「はい・いいえ」で答える課題、日常生活上必要となるお金や時間の計算能力、ユーモアの理解を含むまんがの説明、長文の理解など、より詳細に把握できるのが特徴であり、所要時間は90分強です。

上記を踏まえれば、SLTAは本問の「高次脳機能の神経心理学的アセスメントにおいて、日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査」には該当しないことがわかりますね。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ VPTA

VPTA(Visual Perception Test for Agnosia)は、標準高次視知覚検査のことを指します。

高次視知覚機能障害、すなわち皮質盲、物体・画像失認、相貌失認、色彩失認、失読、視空間失認など包括的に捉えることのできる検査になります。

検査項目は、視知覚の基本機能、物体・画像認知、相貌認知、色彩認知、シンボル認知、視空間、認知と操作、地理的見当識の7大項目から構成され、115枚の図版および評価用紙が用意されてます。

所要時間は一通り行うと1時間半強かかります(検査開始から終了までの期間は原則として2週間とされている)。

こうしたVPTAの検査目的は、本問の「高次脳機能の神経心理学的アセスメントにおいて、日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査」とは合致しないことがわかりますね。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ WMS-R

ウェクスラーにより開発され翻訳されたウェクスラー記憶検査(WMS-R)は、記憶の総合検査として代表的なものです。

以下のような下位検査で構成されています。

  1. 情報と見当識:
    長期記憶や見当識から引き出される一般的な知識についての質問で、スクリーニング用の項目を含んでいる。
  2. 精神統制:
    健常者には難なく回答することができる学習された材料を検索する。
  3. 図形の記憶:
    受験者に、1組の抽象的な模様を提示し記憶してもらう。それを取り除いた後に、もっと数の多い模様の中から同じものを選択させる。
  4. 論理的記憶I:
    検査者が受験者に物語を読んで聞かせた後に、記憶を頼りにその物語を話すことが求められる。
  5. 視覚性対連合I:
    6つの抽象的な線画と連合する色とを、学習することが受験者に求められる。正しく回答するまで提示される。
  6. 言語性対連合I:
    容易な対語4つと困難な対語4つを、1回で完全に反復できるまで実施する。
  7. 視覚性再生I:
    受験者は、10秒間提示された簡単な幾何学図形を記憶を頼りに再生する。
  8. 数唱:
    数字の順唱と逆唱をする。
  9. 視覚性記憶範囲:
    受験者は提示されたのと同じ順序で、一連の色のついた四角形に触れる。次第に数が増加する。次に、触れた順序とは、逆の順序で四角形に触れていく。
  10. 論理的記憶II
  11. 視覚性対連合II
  12. 言語性対連合II
  13. 視覚性再生II

上記の10以降の課題は、いずれも4〜7の課題の遅延再生となります。

WMS-Rでは、記憶の要素を「言語性記憶」「視覚性記憶」「一般的記憶(言語性と視覚性を統合したもの)」「注意/集中力」「遅延再生」の5つの指標で表現できる点が特徴です。

長谷川式などの他の記憶検査では把握しきれない、記憶の細かな性質ごとの状態像を把握するのにWMS-Rは適切な検査であると言えるでしょう。

具体的には、より正確に近時記憶障害を検出するためには、ストーリーを覚えてもらうWMS-Rの論理的記憶(すごく長いストーリーです)などを用いると良いとされています。

上記の通り、WMS-Rは記憶の総合検査であり、記憶の細かな性質ごとの状態像を把握、特に正確な近時記憶障害を検出するのに優れた検査となっています。

こうした検査目的は、本問の「高次脳機能の神経心理学的アセスメントにおいて、日常記憶や生活障害を定量的に測定する心理検査」とは合致しないことがわかりますね。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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