公認心理師 2023-117

TEGの自我状態と関係がある特徴の説明に関する問題です。

各自我状態に関する基本的な理解があれば解くことができますね。

問117 TEGの自我状態と関係がある特徴の説明として、不適切なものを1つ選べ。
① A は、物事を客観的に理解するという特徴と関係がある。
② AC は、感情表出を抑えるという特徴と関係がある。
③ CP は、自分の価値判断が正しいものとして譲らないという特徴と関係がある。
④ FC は、責任感が強いという特徴と関係がある。
⑤ NP は、親身になって世話をするという特徴と関係がある。

解答のポイント

TEGにおける各自我状態の特徴を把握している。

選択肢の解説

① A は、物事を客観的に理解するという特徴と関係がある。
② AC は、感情表出を抑えるという特徴と関係がある。
③ CP は、自分の価値判断が正しいものとして譲らないという特徴と関係がある。
④ FC は、責任感が強いという特徴と関係がある。
⑤ NP は、親身になって世話をするという特徴と関係がある。

TEGはTokyo University Egogramの略で、質問紙法による性格検査の一つです。

アメリカの精神科医E.Berneが創始した交流分析理論を基礎としています(バーンの弟子、J.M.Dusayがエゴグラムを考案しました)。

TEGの基礎となる交流分析理論の概略は以下の通りです。

人の内部には、親の自我状態(Parent:Pと略す)、成人の自我状態(Adult:Aと略す)、子どもの自我状態(Child:Cと略す)の3つの自我状態があると考えます。

このP・A・Cのバランスを知ることで性格特性を知ることができるというものです。

このような構造をより深く理解するため、PをCP(Critical Parent:CP;批判的な親)とNP(Nurturing Parent:NP;養育的な親)に分け、CをFC(Free Child:FC;自由な子ども)とAC(Adapted Child:AC;順応な子ども)に分け、全部で5つの機能側面としてこれらがどう機能しているかを分析します。

  • P(Parent):親の自我状態。親や養育親から取り入れた状態・行動の自我状態。精神分析における超自我に相当する。以下の2つの要素がある。
    CP(Critical Parent):批判的な親。父親のような厳しい部分。つまり理想、良心、責任、批判などの価値判断や倫理観を主にしている。
    NP(Nurturing Parent):養育的な親。母親のような養育的な部分。つまり共感、思いやり、保護、受容など子どもの成長を促進するような部分。
  • A(Adult):成人の自我状態。事実に基づいて物事を客観的、論理的に判断する自我状態。現実を客観視し、情報収集し、それらを基に冷静に計算し推定して意思決定を行い、判断を下す。PやCをコントロールし、統合的で創造的、自律的な活動を促進する役目を担っている。精神分析で言う自我に相当する。
  • C(Child):子どもの自我状態。子どものころに感じ、行動した自我状態。人間が持って生まれたままの本能的な欲求や感情などの生命の原点である。それと共に、人生早期の体験から学んだ周囲への対応様式も含まれている。精神分析で言うエスに相当し、以下の2つの要素がある。
    FC(Free Child):自由な子ども。親の影響を全く受けていない生まれながらの部分である。快感を求めて天真爛漫に振る舞い、直感的な感覚や創造性に長け、表現力豊かである。
    AC(Adapted Child):順応的な子ども。親の期待に沿うような従順な子どもの部分。人生早期に周囲の人たちの愛情を失わないために、子どもなりに身につけた処世術で、親の期待に沿うように常に周囲に気兼ねし自由な感情を抑える「良い子」である。

それぞれの自我状態には肯定的側面と否定的側面があり、各尺度の高低を見た上で解釈するのが基本であり、その上で、各尺度間の相互関係を考えることが重要になります。

上記でも述べているように、TEGの目的はP・A・Cのバランスを知り性格特性を把握しようとすることです。

TEGの検査結果は正常~異常の判別をすることを目的としておらず、自己分析・自己成長の為に役立てられるように工夫されたものです。

CP~ACの5尺度の高低をパターンとして類型化し、各尺度の高低の示す意味と各尺度の相互関係からエゴグラムを把握します。

それにより、性格特性、行動パターンや交流パターンが理解できるということです。

さて、上記を踏まえて各選択肢を見ていくと、選択肢①の「A は、物事を客観的に理解するという特徴と関係がある」、選択肢②の「AC は、感情表出を抑えるという特徴と関係がある」、選択肢③の「CP は、自分の価値判断が正しいものとして譲らないという特徴と関係がある」、選択肢⑤の「NP は、親身になって世話をするという特徴と関係がある」は適切な内容と言えます。

これに対して、選択肢④の「FC は、責任感が強いという特徴と関係がある」ですが、「責任感が強いという特徴と関係がある」はFCではなくCPの自我状態であると言えます。

FCは親の影響を全く受けていない生まれながらの部分であり、快感を求めて天真爛漫に振る舞い、直感的な感覚や創造性に長け、表現力豊かなどの特徴を反映しています。

よって、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢⑤は適切と判断でき、除外することになります。

また、選択肢④が不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

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