公認心理師 2020-96

CDRという認知症評価法について理解していることが求められています。

認知症の評価スケールは数多くありますし、過去に多くの検査が出題されているので、各検査について基本的な情報は把握しておきたいですね。

問96 Clinical Dementia Rating〈CDR〉について、正しいものを1つ選べ。
① 介護必要度に関する評価はしない。
② 質問調査による他者評価尺度である。
③ 健常と認知症の境界は、0.5点である。
④ 判定には、家族からの情報は考慮されない。
⑤ 人の見当識障害は、中等度障害と判定される。

解答のポイント

CDRの基本情報を把握している。

選択肢の解説

② 質問調査による他者評価尺度である。
④ 判定には、家族からの情報は考慮されない。

本問ではCDRの基本情報を把握しておくことが重要です。

ですが、その前にもっと視野を広げて、認知症検査全般について理解しておきましょう。

認知機能には様々な機能が含まれているため、当然認知症の症状・問題も多岐にわたり、それをアセスメントする検査にも様々なものがあります。

認知症のスクリーニング検査としてはMMSEや改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などが有名ですが、これらは認知機能の全般を調べるものになります。

このほかにも、軽度認知障害(MCI)ならばMoCA-JやACE-Rが有用ですし、認知症症状の推移を把握していきたいならばADAS-Jcogが役立ちます。

これらは認知症を複合的・全般的に評価する検査ですが、例えば知能ならWAIS-Ⅲ、全般的な記憶であればWMS-R、言語であればWAB失語症検査、視空間認知であればRey複雑図形検査、前頭葉機能を特に査定するならトレイルメーキングテスト(TMT)やWisconsinカード分類検査(WCST)などが選択されることになります。

もちろん、これらの検査のカットオフ値等を把握し、正常・異常の判断ができるだけでなく、これらの数値を丸呑みせずにクライエントの前後状況等から実際の認知機能を評価していくことが重要となります。

認知症は、本人が自身の問題について自覚的に理解できる面もありますが、周囲が違和感を覚えて受診等に至ることも少なくありません。

特に行動や心理に関する症状(BPSD)やADLなどといった面に関しては、本人だけでなく家族や介護者といった周囲の人たちの評価が重要になってきます。

こうした他者からの評価を含む検査としては、BPSDであればNPI(10項目の精神症状の有無や頻度および重症度を評価する。最近は2項目追加されて12項目版が用いられることも多い)やBehave-AD(25項目について重症度を4段階で評価)などがあり、ADLであればPSMS(基本的ADL6項目を介護者が評価する)やIADL(道具使用のADL8項目を介護者が評価する)などがあります。

本問で出題されているCDR(Clinical Dementia Rating)は、こうした観察による認知症評価法の一つであり、認知症の全般的な重症度をアセスメントすることができます。

以下では、CDRの基本情報について述べていきましょう。

CDRは1982年にHughesらによって報告され、認知症の重症度を判定するために国際的に広く活用されている検査です。

CDRでは、家族や介護者からの情報を得た後に、本人への問診を行って評価します。

認知症が重度になって本人からの協力が得られない場合もあり得るので、そういった場合に認知症にみられる臨床症状を専門家が全般的に評価することによって重症度を判定することができる点に有用性があると言えます。

ただし、上記の通り、家族からの聞き取りだけで評価するのではなく、本人への問診を行うことになっていますから、完全なる他者評価というわけではありません(上記の通り、どうしても本人からの聞き取りができないという状況は症状によってあり得る。ただし、聞き取りができないほどであるなら、かなり症状が進んでいると言えますね)。

これらを踏まえると、選択肢②の「質問調査による他者評価尺度」という認識は誤りであり、選択肢④の「家族からの情報は考慮されない」も間違いであることがわかりますね。

以上より、選択肢②および選択肢④は誤りと判断できます。

① 介護必要度に関する評価はしない。
③ 健常と認知症の境界は、0.5点である。
⑤ 人の見当識障害は、中等度障害と判定される。

さてCDRの中身について見ていきましょう。

CDRでは、記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況および趣味・関心、介護状況の6項目について評価し、それらを総合して「障害なし(=0)」「認知症の疑い(=0.5)」「軽度(=1)」「中等度(=2)」「重度(=3)」の5段階で重症度を判定します。

6項目については、以下の通りになっています。

選択肢①にある「介護必要度に関する評価」については、介護状況の項目で評価することになっていますね。



上記のような項目について、家族や介護者及び本人から聞き取りを行い、評価するわけです。

一般に、CDR=0.5を軽度認知障害(MCI)、CDR=1以降を認知症として捉えることが多い。

軽度認知障害は認知症の一歩手前の状態で、認知症における物忘れのような記憶障害が出るものの症状はまだ軽く、正常な状態と認知症の境目に位置すると言えます。

つまり、CDR=0.5が、健常と認知症の境界に位置する得点であると言えますね。

また、上記を見てもらえればわかると思いますが、選択肢⑤にある見当識に関する項目では…

  • 問題なし:0=見当識障害なし
  • 認知症疑い:0.5=時間的関連性に軽度の障害がある以外は見当識障害なし
  • 軽度:1=時間的関連に中等度の障害があり、検査では場所の見当識良好、他の場所で時に地誌的失見当
  • 中等度:2=時間的関連性に重度の障害がある。通常時間の失見当識、しばしば場所の失見当識あり。
  • 重度:3=人物への見当識のみ

となっております。

一般に思い浮かべてもらえればわかると思いますが、認知症ではまず時間に関する見当識(現在の日時や時間など)が障害されることが多く、その後、場所に関する見当識(自分が今いる場所がどこか)などが障害され、人物への見当識が障害されていきます。

重度では「人物への見当識のみ」と表記がありますが、人物への見当識が障害されていればかなり重度の認知症と見なされるということになりますね。

なお、実際に評価をしていく際、最も重視されるのは「記憶」のカテゴリーで、次いで「見当識」「判断力・問題解決」が重視されることになっています(どこが特に障害されているかで、総合判定が変わってくる。記憶が障害されていれば、それが最も重みづけされるということ)。

以上より、選択肢①の介護必要度に関する項目は設けられており、選択肢③の健常と認知症の境界は0.5であり、選択肢⑤の人の見当識障害は重度障害と判定されることがわかります。

よって、選択肢①および選択肢⑤は誤りと判断でき、選択肢③が正しいと判断できます。

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