公認心理師 2023-127

ランダム化比較試験の特徴に関する問題です。

研究の用語が普通に使われているので、ここで拒否反応が起こらないようにしましょうね。

問127 心理療法の効果研究におけるランダム化比較試験の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 交絡を防ぐ。
② アウトカムは設定しない。
③ 対照群には介入を実施しない。
④ 群への割り付けの際、参加者の意向を尊重する。

解答のポイント

ランダム化比較試験の特徴を把握している。

選択肢の解説

① 交絡を防ぐ。
② アウトカムは設定しない。
③ 対照群には介入を実施しない。
④ 群への割り付けの際、参加者の意向を尊重する。

臨床研究では、治療群(治療を行う群)と対照群(治療をせず観察のみの群:※ここに関しては後述あり)の2つに分けて比較するが、2つの群に分ける際に無作為(=random)に分けている研究を指します。

ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)という名の通り、対象者をランダムに2グループに分け(だから「ランダム化」と呼ぶ)、ある特定の手段の介入法を実施するグループ(介入群)と介入しないグループ(比較対照群)間の比較を行い、効果の分析・推論を行います。

その手法特性から、治療などの介入効果を科学的に分析・推論する手法として知られています。

他の条件の介在を排除するため、グループ分けをランダムに行うこと以外にも、対象者自身にもどちらのグループかわからないようにするなど、厳密性の確保のための条件設定が必要とされています(つまり、研究者自身にもどっちのグループが介入群かわからない。期待の効果などによる影響を排除できる)。

なお、ランダム化を行う際にはコンピュータで乱数を発生させて割り付け表を使用する方法が適切だとされています(くじ引きやサイコロの使用、受付番号などでの割り付けは準ランダム化となってしまい真の意味でのランダム化とは言えない)。

その他、コスト面、倫理面の問題もあるが、RCTが実施できれば介入による効果をわかりやすく示せるメリットは大きいです。

さて、こうしたランダム化比較試験の特徴を踏まえて各選択肢を見ていきましょう。

まず選択肢①の「交絡を防ぐ」ですが、この交絡とは原因変数と結果変数の因果関係に対して間接的に影響する変数のことであり、原因変数と関連していて、結果変数と因果関係を持つと考えられる変数になります。

より一般的な「独立変数・従属変数」という表現で言い換えると、交絡変数とは「独立変数と従属変数の両者に影響を与える(両者と関連がある)変数」のことを指しています(ちなみによく似た概念に思える剰余変数は「独立変数以外に従属変数に影響を与える恐れのある変数」ですね。交絡変数と同じものとして扱われることもあるけど、厳密な定義は異なる)。

対象が人間である以上、個体差があり、それが介入結果に影響を与えてしまうのは避けられません。

ですから、それなりの人数を用意し、ランダムに割り振ることで、A群とB群が「群の総体としては背景因子のつり合いが取れている」という状態にしているわけですね。

ランダム化比較試験において割り付けをランダムにするのは、こうした交絡因子の影響が介入するのが防ぐためであり、当然選択肢④の「群への割り付けの際、参加者の意向を尊重する」は不適切な内容となりますね(意向を尊重したらランダムにならない)。

続いて選択肢②の「アウトカムは設定しない」についてですが、アウトカムとはわかりやすく言えば評価項目であり、ランダム化比較試験を通して「観測したい項目」になります(糖尿病薬の臨床試験であれば「血糖値の低下」や「心血管イベントの発症割合」などですね)。

言わば「示したい「効果をみる指標」そのもの」であり、ランダム化比較試験においてはアウトカムを「試験前に設定する」ということになります。

試験途中や試験終了後のデータ解析中にアウトカムをすり替えるのは、結局のところ何でもありの状態になってしまうので研究不正となってしまいます。

ですから、ランダム化比較試験においてはアウトカムは設定するというのが適切な表現になりますね。

最後に選択肢③の「対照群には介入を実施しない」ですが、こちらがちょっと迷わせる内容だったと思います。

上記で「治療群(治療を行う群)と対照群(治療をせず観察のみの群)の2つに分けて比較する」とあるように、「対照群には介入を実施しない」が適切な内容に読み取れます。

ですが、実際には対照群にも介入が行われることが多いのです。

もちろん、上記のように「治療を行う群×治療をせず観察のみの群」という場合もあるのですが、実際には「新治療を行う群×従来の治療を行う群」という形になるのです。

例えば、新薬の効果を検証するのであれば、その病に元々用いられるのが一般的な治療薬を対照群には使用し、介入群に新薬を投与するという形になるでしょう。

ですから、実際には対照群にも「従来のアプローチ」「一般的な治療」などが行われることが多く、その意味では対照群にも「介入を実施する」と言えるわけです。

ランダム化比較試験において効果の検証を行いたい「新手法」「新しいアプローチ」などを対照群で実施することはありませんが、上記以外の一般的・従来的なアプローチは対照群にも行われるので、選択肢③の「対照群には介入を実施しない」は不適切な内容と言えますね。

以上より、選択肢②、選択肢③および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

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