公認心理師 2023-58

労働基準法が定める、労働者に対して使用者が負う義務に関する問題です。

細かい数字が変更されているタイプの問題で、問題自体は常識的な内容ではありますが、不正解になってしまう人が多かった可能性がありますね。

問58 労働基準法が定める、労働者に対して使用者が負う義務として、正しいものを2つ選べ。
① 毎週少なくとも2回の休日を与える。
② 解雇する場合には、少なくとも2週間前にその予告をする。
③ 6週間以内に出産する予定の女性による休業の申請に応じる。
④ 雇入れの日から4か月間継続勤務をした場合には、有給休暇を付与する。
⑤ 労働時間が6時間を超える場合には、少なくとも45分の休憩時間を与える。

解答のポイント

労働基準法に定められている、労働者の権利等を理解している。

選択肢の解説

① 毎週少なくとも2回の休日を与える。

まずは労働基準法第35条を見ていきましょう。


(休日)
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。


労働基準法では、少なくとも1週間に1日(例外的に4週間に4日)の休日を与えなければならないとされています。

このような法の求める最低基準の休日を「法定休日」といい、これを超える休日を「法定外休日」と呼びます。

法定休日は必ずしも日曜日や祝祭日である必要はありません。

最近では、週休2日制が普及していますが、2日のうちどれが法定休日に当たるかは就業規則等によって明確にしておくことが望ましいとされています。

「法定休日」に労働させた場合には3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりませんが、「法定外休日」の労働に対しては、週の法定労働時間を超える部分に2割5分以上5割以下の割増賃金を支払えば法的には足ります。

ただし、時間外労働が1か月につき60時間を超えた場合、超えた時間につき5割以上の割増賃金を支払わねばなりません。

このように、法の求める休日は原則として週に1日ですので、週休2日制を採っていなくても直ちに法違反とはなりません。

ただし、労働時間は1週間で40時間以下、1日で8時間以下と規制されているため(使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない:第32条)、1日の所定労働時間が8時間であれば、労働日は1週間で5日以内としなければならないため必然的に週休2日制となるわけです。

しかし、例えば、月曜日から金曜日までの所定労働時間が7時間、土曜日の所定労働時間が4時間と定められていれば、週の所定労働時間は39時間となり、週休2日制を採っていなくても法の基準は満たすこととなります。

また、1か月単位の変形労働時間制を採用し、1日の所定労働時間を7時間とした上で、4週6休制を採った場合でも、期間平均の週当たり労働時間が40時間以内に収まっているので問題がないことになります。

単に「週休二日制」という言葉だけで考えるのではなく、法の建付けがどうなっているのかを理解した上で労働環境については理解しておく必要があります。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

② 解雇する場合には、少なくとも2週間前にその予告をする。

使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)。

解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要です。

例えば、解雇の理由として、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか、最終的には裁判所において判断されます。

また、一定の場合については法律で解雇が禁止されています(以下、主なもの)。

<労働基準法>
業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

<労働組合法>
労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

<男女雇用機会均等法>
労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇

<育児・介護休業法>
労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。

そして、解雇の予告については労働基準法第20条に規定されています。


(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者


このように、合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。

予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります(例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要がある)。

なお、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません(労働基準法第22条:労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない)。

上記の通り、解雇の予告については「2週間前」というのは誤りで、実際には30日前までに行う必要があります。

よって、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 6週間以内に出産する予定の女性による休業の申請に応じる。

こちらについては労働基準法第65条に規定されています。


(産前産後)
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③ 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。
② 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
③ 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。


このように、産前休業については、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、請求すれば取得できます。

また、出産の翌日から8週間は就業することができないことになっていますが、産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業することができます。

上記の通り、「6週間以内に出産する予定の女性による休業の申請に応じる」ことは労働基準法に定められている内容と言えますね。

よって、選択肢③は正しいと判断できます。

④ 雇入れの日から4か月間継続勤務をした場合には、有給休暇を付与する。

年次有給休暇については、労働基準法第39条に規定されています。


第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
② 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。


このように、年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して与える必要があります。

年次有給休暇日数は初年度は10労働日ですが、その後は、1年毎に8割以上出勤した場合は、法令で定められた日数を付与することになります。

付与日数については次のとおりです。

  • 6か月:10日
  • 1年6か月:11日
  • 2年6か月:12日
  • 3年6か月:14日
  • 4年6か月:16日
  • 5年6か月:18日
  • 6年6か月以上:20日

上記の通り、「雇入れの日から4か月間継続勤務をした場合には」という箇所は間違いであり、実際は6か月間継続勤務していて、全労働日の8割以上出勤した場合に与えられることになります。

よって、選択肢④は誤りと判断できます。

⑤ 労働時間が6時間を超える場合には、少なくとも45分の休憩時間を与える。

こちらは労働基準法第34条に規定されています。


(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。


上記の通り、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定めています。

つまり、1日の労働時間が6時間ぴったり、または6時間に満たない場合は、従業員に休憩を与える必要はありません。

休憩の有無は、1日の労働時間によって決まるため、正社員でも非正規雇用でも同じ条件で休憩の有無を考えることになります。

休憩の有無や最低限度の休憩の長さに関しては労働基準法で定められたルールのため、万が一従業員に正しく休憩を付与していなかった場合、企業は法律違反で罰則を受けることになります。

もし、企業が法定休憩以上の休憩を取らせたほうがよいと考えるのであれば、6時間を超える勤務の従業員に対して1時間の休憩を与えたり、8時間を越えて働く従業員に2時間の休憩を与えたりしても構いません。

休憩時間は「企業や上司の指揮命令下にない完全に自由な時間」なので、たとえば、一日6時間半の労働時間を設定していると、「6時間半の労働時間」「45分の休憩時間」を合わせて、合計7時間15分会社に滞在することになりますね。

「休憩時間=企業や上司の指揮命令下にない完全に自由な時間」という当たり前の前提を知らない人が多いのか、時々、「市役所職員が〇〇していた」「配送業の人がコンビニで買い物していた」などというクレームがあると聞きます。

質問にせよクレームにせよ、それをしている人の知性・常識などが反映されるものなので、あまり軽々しく上記のようなことを言わない方が賢明だと思うのですが、そうではない人が増えているのは残念なことです。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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