公認心理師 2023-107

労働安全衛生法において定められている役割に関する問題です。

初出の名称もあるので、この場で勉強しておきましょう。

問107 常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任される者で、労働安全衛生法が定める、作業条件、作業環境の衛生上の改善や疾病の予防処置などの管理を担当する者として、正しいものを1つ選べ。
① 衛生管理者
② 衛生推進者
③ 作業主任者
④ 産業看護職
⑤ 労働衛生コンサルタント

解答のポイント

労働安全衛生法に基づいて、50人以上の事業場で選任される者を把握している。

選択肢の解説

① 衛生管理者

まず労働安全衛生法における衛生管理者について見ていきましょう。


(衛生管理者)
第十二条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 前条第二項の規定は、衛生管理者について準用する。

(総括安全衛生管理者)
第十条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの


衛生管理者においては、衛生に係る技術的事項を管理する者で、常時50人以上の労働者を使用する一定の事業場において選任が義務付けられております(労働安全衛生法施行令第4条)。

衛生管理者の選任は、衛生管理者を選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、選任報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生規則第7条)。

衛生管理者が行うべき具体的な措置として次の事項が示されています。

  1. 健康に異常がある者の発見及び処置
  2. 作業環境の衛生上の調査
  3. 作業条件、施設等の衛生上の改善
  4. 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
  5. 衛生教育、健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
  6. 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
  7. その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し、必要な措置
  8. その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等

なお、これらの事項は昭和47年に示されたもので、その後の労働安全衛生法の改正によって、次の事項が総括安全衛生管理者の職務として追加されているので、衛生管理者の職務もこれらに関する事項も含まれることになります。

  1. 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
  2. 労働安全衛生法第28条の2第1項別ウィンドウが開きます又は第57条の3第1項及び第2項別ウィンドウが開きますの危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
  3. 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。

これらを踏まえて本問の「常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任される者で、労働安全衛生法が定める、作業条件、作業環境の衛生上の改善や疾病の予防処置などの管理を担当する者」を見ていきましょう。

まず、「常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任される者」および「労働安全衛生法が定める」に関しては上記の中でクリアされていることがわかりますね。

そして「作業条件、作業環境の衛生上の改善や疾病の予防処置などの管理を担当する者」についても、上記の具体的な業務を見る限り衛生管理者のものであると考えて間違いないです。

以上より、選択肢①が正しいと判断できます。

② 衛生推進者
⑤ 労働衛生コンサルタント

衛生推進者については法律では以下の通り条項が定められています。


(安全衛生推進者等)
第十二条の二 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。


このように、衛生推進者とは、労働安全衛生法に基づいて選任が義務付けられた、衛生管理の責任者のことです。

常時10~50人未満の従業員を雇用する事業場が対象で、職場における安全衛生水準の向上を目指し、さまざまな事案を担当します。

つまり、安全管理者及び衛生管理者の選任が義務づけられていない中小規模事業場の安全衛生水準の向上を図るため、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者を選任し、労働者の安全や健康確保などに係わる業務を担当させなければならないことになっています。

安全衛生推進者(衛生推進者)が担当する職務は…

  1. 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
  2. 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
  3. 健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること。
  4. 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。

…等ですが、衛生推進者については衛生にかかる業務に限ることになっています。

安全衛生推進者(衛生推進者)は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならず、その事業場に専属の者を選任することになります。

ただし、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントその他厚生労働大臣が定める者のうちから選任するときは、この限りではありません。

労働衛生コンサルタントとは、労働安全衛生法第83条に基づく労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、同法第84条に基づき厚生労働省に備える労働衛生コンサルタント名簿に登録した者です。


(労働衛生コンサルタント試験)
第八十三条 労働衛生コンサルタント試験は、厚生労働大臣が行なう。
2 前条第二項から第四項までの規定は、労働衛生コンサルタント試験について準用する。この場合において、同条第三項第一号及び第二号中「安全」とあるのは、「衛生」と読み替えるものとする。

(登録)
第八十四条 労働安全コンサルタント試験又は労働衛生コンサルタント試験に合格した者は、厚生労働省に備える労働安全コンサルタント名簿又は労働衛生コンサルタント名簿に、氏名、事務所の所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けて、労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントとなることができる。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、前項の登録を受けることができない。
一 心身の故障により労働安全コンサルタント又は労働衛生コンサルタントの業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 この法律又はこれに基づく命令の規定に違反して、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
三 この法律及びこれに基づく命令以外の法令の規定に違反して、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
四 次条第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者


業務は、同法第81条第2項に「労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする」と規定されているとおりです。

労働衛生コンサルタントは、労働衛生のスペシャリストで、厚生労働大臣に認められた国家資格であり、企業の衛生水準を向上させるため、事業場に入り、診断や指導を行います。

労働衛生コンサルタントは、以下のような業務を行います。

  • 事業所の衛生状況の把握・診断
  • 改善のための計画策定・責任者への指導
  • 事業所の衛生状況の最適化(就業規則や社内規定の設定など)
  • 労働安全衛生マネジメントシステムの監査・評価
  • 衛生管理教育
  • 外部委託の衛生管理者業務

つまり、労働衛生コンサルタントは、「事業所の衛生状況を把握・診断し、必要に応じて指導や最適化、関係者への教育などを行う」仕事です。

この労働衛生コンサルタントと衛生管理者」の仕事内容は似ているように感じますが、労働衛生コンサルタントと衛生管理者には、大きく以下の3点の違いがあります。

1点目は「選任に関する法的義務の違い」であり、衛生管理者は、労働安全衛生法第12条により、常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任する義務が生じ、労働者数に応じて選任すべき衛生管理者の人数も増えます。

一方、労働衛生コンサルタントの選任については法的義務がないため、労働衛生コンサルタントの利用は任意という特徴があります。

2点目の「兼任可否の違い」について、衛生管理者は原則1つの事業場に専任となります。

ただし、衛生管理者を2人以上選出し、その中に労働衛生コンサルタントがいる場合、この労働衛生コンサルタントについては専属でなくても問題ありません。

つまり、労働衛生コンサルタントは場合によって複数の事業場を兼任することが認められています。

3点目の「資格の違い」について、衛生管理者と労働衛生コンサルタントは別の国家資格です。

このように常時50人以上の労働者を使用する事業場では、安全管理者、衛生管理者の選任が義務付けられていますが、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、業種によって、安全衛生推進者か衛生推進者(安全衛生推進者等)を選任しなければなりません。

50人未満ですから、本問の「常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任される者」には該当しないことがわかりますね。

また、労働衛生コンサルタントについても利用は任意となっておりますね(位置づけとしては、衛生管理者の上位資格という感じがしますが、法的には衛生管理者の選任が求められるという感じになっています)。

よって、選択肢②および選択肢⑤は誤りと判断できます。

③ 作業主任者

作業主任者は、労働安全衛生法第14条により、労働災害を防止するための管理を必要とする一定の作業について、その作業の区分に応じて選任が義務付けられているものです。


(作業主任者)
第十四条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。


作業主任者を選任しなければならない作業を抜き出すと長くなってしまうので、こちらのサイトをご覧ください。

作業主任者を選任したときは、当該作業主任者の氏名及びその者に行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければなりません。

なお、見やすい箇所に掲示する等の等について、当該作業主任者にに腕章をつけさせる、特別の帽子を着用させる等の措置が含まれるものであることとされています。

作業主任者の職務は安衛則等の厚生労働省令に示されていますが、その多くは、①作業の直接指揮、②使用する機械等の点検、③機械等に異常を認めたときの必要な措置、④安全装置等の使用状況の監視等です。

これらより、本問の「作業条件、作業環境の衛生上の改善や疾病の予防処置などの管理を担当する者」には該当しないことがわかりますね。

よって、選択肢③は誤りと判断できます。

④ 産業看護職

産業看護とは、事業者が労働者と協力して、産業保健の目的を自主的に達成できるように、事業者、労働者の双方に対して、看護の理念に基づいて、組織的に行う、個人・集団・組織への健康支援活動です。

そして、産業看護職とは「企業で従業員の健康管理に従事する保健師・看護師」のことであり、法律上の選任義務はありませんし労働安全衛生法に条項も設けられておりません。

ちなみに、類似の職種として「産業医」がありますが、こちらは労働安全衛生法により、ひとつの事業場で働く労働者が50人を超えると選任する義務があります。

厚生労働省が「職場のメンタルヘルス対策における産業看護職の役割」という報告書を出しているので、こちらを読まれると全容がわかるかもしれません(長いので私は全部読んでいません)。

産業看護職とは産業保健師および産業看護師をまとめての呼び名であり、企業内に設置された健康管理室や医務室・保健室などで働くことになりますね。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

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