公認心理師 2023-47

更生保護の内容に関する問題です。

過去問との関連も深いので、理解しやすい内容だったと思います。

問47 更生保護の内容として、誤っているものを1つ選べ。
① 恩赦
② 保護観察
③ 更生緊急保護
④ 特別改善指導
⑤ 仮釈放・仮退院

解答のポイント

更生保護法の内容を把握している。

選択肢の解説

① 恩赦

本問は更生保護法に基づいた内容になっています。

更生保護法の目的が第一条に「この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする」とあります。

この一文に解答が入っていると言えますが、もう少し詳しく述べていくことにしましょう。

更生保護法における恩赦の規定については、第六章に「恩赦の申出」として以下の通り示されています。


(恩赦の申出)
第八十九条 恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)第十二条に規定する審査会の申出は、法務大臣に対してするものとする。

(申出のための調査等)
第九十条 審査会は、前条の申出をする場合には、あらかじめ、申出の対象となるべき者の性格、行状、違法な行為をするおそれの有無、その者に対する社会の感情その他の事項について、必要な調査を行わなければならない。
2 審査会は、刑事施設若しくは少年院に収容されている者又は労役場に留置されている者について、特赦、減刑又は刑の執行の免除の申出をする場合には、その者が、社会の安全及び秩序を脅かすことなく釈放されるに適するかどうかを考慮しなければならない。


恩赦は、行政権によって国家刑罰権を消滅させ、裁判の内容を変更させ、または裁判の効力を変更もしくは消滅させる行為です。

恩赦法において、政令をもって行う恩赦(政令恩赦)と個別に行う恩赦(個別恩赦)の2種類が定められています。

政令恩赦:政令で恩赦の対象となる罪や刑の種類、基準日等を定めて、その要件に該当する人について一律に行われるもので、皇室または国家の慶弔ないし重要行事に際して行われてきました。大赦、減刑、復権の3種類があり、実施される恩赦の種類ごとに大赦令、減刑令又は復権令が公布されます。

個別恩赦:有罪の裁判が確定した特定の人に対して、個別に恩赦を相当とするか否かを審査し、相当と判断された人について行われる恩赦です。特赦、減刑、刑の執行の免除、復権の4種類がありますが、常時いつでも行われるもの(常時恩赦)と、内閣が一定の基準を設け、一定の期間を限って行われるもの(特別基準恩赦)があります。

個別恩赦の手続と問合せ先ですが、恩赦は内閣の権限として、内閣がこれを決定し、天皇が認証するという仕組みで行われます。

その手続は、恩赦を希望する人からの出願を受けた上申権者(刑事施設の長、検察官、保護観察所の長)が法務省に置かれている中央更生保護審査会(委員長と委員4人で組織する合議制の機関)に恩赦の上申を行い、同審査会の審査の結果、恩赦相当として法務大臣に恩赦の申出がなされた人について内閣が恩赦を決定し、天皇がこれを認証することとされています。 

  1. 刑事施設に収容中の場合→収容されている刑事施設
  2. 罰金刑、刑の執行猶予中、刑事施設を満期釈放となった場合等(3以外)→有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁
  3. 保護観察中又は過去に保護観察を受けた場合→保護観察を実施した保護観察所

主な問い合わせ先は上記の通りとなります。

以上より、恩赦は更生保護の内容に該当します。

よって、選択肢①は正しいと判断でき、除外することになります。

② 保護観察
③ 更生緊急保護

保護観察は、犯罪をした人又は非行のある少年が、実社会の中でその健全な一員として更生するように国の責任において指導監督及び補導援護を行うもので、保護観察処分少年、少年院仮退院者、仮釈放者、保護観察付執行猶予者及び婦人補導院仮退院者の計5種の人がその対象となります。

上記は更生保護法第48条に以下の通り規定されています。


(保護観察の対象者)
第四十八条 次に掲げる者(以下「保護観察対象者」という。)に対する保護観察の実施については、この章の定めるところによる。
一 少年法第二十四条第一項第一号又は第六十四条第一項第一号若しくは第二号の保護処分に付されている者(以下「保護観察処分少年」という。)
二 少年院からの仮退院を許されて第四十二条において準用する第四十条の規定により保護観察に付されている者(以下「少年院仮退院者」という。)
三 仮釈放を許されて第四十条の規定により保護観察に付されている者(以下「仮釈放者」という。)
四 刑法第二十五条の二第一項若しくは第二十七条の三第一項又は薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律第四条第一項の規定により保護観察に付されている者(以下「保護観察付執行猶予者」という。)

(保護観察の実施方法)
第四十九条 保護観察は、保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として、第五十七条及び第六十五条の三第一項に規定する指導監督並びに第五十八条に規定する補導援護を行うことにより実施するものとする。
2 保護観察処分少年又は少年院仮退院者に対する保護観察は、保護処分の趣旨を踏まえ、その者の健全な育成を期して実施しなければならない。


保護観察の流れや方法ですが、保護観察官及び保護司が協働して、指導監督及び補導援護を行うことになります。

更生保護法の第三章に大枠が規定されている内容ですね。

続く選択肢③の更生緊急保護とは、事件を起こして身体を拘束されその後釈放された者で、親族の援助が受けられない、福祉事務所などに保護を求めることができないなど、一時的に生活が困難な場合に法律により保護観察所に特別に保護の申し出ができる制度です。

上記がわかりやすいですね。

更生保護法では以下の通り規定されています。


(更生緊急保護)
第八十五条 この節において「更生緊急保護」とは、次に掲げる者が、刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後、親族からの援助を受けることができず、若しくは公共の衛生福祉に関する機関その他の機関から医療、宿泊、職業その他の保護を受けることができない場合又はこれらの援助若しくは保護のみによっては改善更生することができないと認められる場合に、緊急に、その者に対し、金品を給与し、又は貸与し、宿泊場所を供与し、宿泊場所への帰住、医療、療養、就職又は教養訓練を助け、職業を補導し、社会生活に適応させるために必要な生活指導を行い、生活環境の改善又は調整を図ること等により、その者が進んで法律を守る善良な社会の一員となることを援護し、その速やかな改善更生を保護することをいう。
一 懲役、禁錮又は拘留の刑の執行を終わった者
二 懲役、禁錮又は拘留の刑の執行の免除を得た者
三 懲役又は禁錮につき刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、その裁判が確定するまでの者
四 前号に掲げる者のほか、懲役又は禁錮につき刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、保護観察に付されなかった者
五 懲役又は禁錮につき刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その猶予の期間中保護観察に付されなかった者であって、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わったもの
六 訴追を必要としないため公訴を提起しない処分を受けた者
七 罰金又は科料の言渡しを受けた者
八 労役場から出場し、又は仮出場を許された者
九 少年院から退院し、又は仮退院を許された者(保護観察に付されている者を除く。)
2 更生緊急保護は、その対象となる者の改善更生のために必要な限度で、国の責任において、行うものとする。
3 更生緊急保護は、保護観察所の長が、自ら行い、又は更生保護事業法の規定により更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うものとする。
4 更生緊急保護は、その対象となる者が刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後六月を超えない範囲内において、その意思に反しない場合に限り、行うものとする。ただし、その者の改善更生を保護するため特に必要があると認められるときは、更に六月を超えない範囲内において、これを行うことができる。
5 更生緊急保護を行うに当たっては、その対象となる者が公共の衛生福祉に関する機関その他の機関から必要な保護を受けることができるようあっせんするとともに、更生緊急保護の効率化に努めて、その期間の短縮と費用の節減を図らなければならない。
6 更生緊急保護に関し職業のあっせんの必要があると認められるときは、公共職業安定所は、更生緊急保護を行う者の協力を得て、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)の規定に基づき、更生緊急保護の対象となる者の能力に適当な職業をあっせんすることに努めるものとする。

(更生緊急保護の開始等)
第八十六条 更生緊急保護は、前条第一項各号に掲げる者の申出があった場合において、保護観察所の長がその必要があると認めたときに限り、行うものとする。
2 検察官、刑事施設の長又は少年院の長は、前条第一項各号に掲げる者について、刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解く場合において、必要があると認めるときは、その者に対し、この節に定める更生緊急保護の制度及び申出の手続について教示しなければならない。
3 保護観察所の長は、更生緊急保護を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、その申出をした者の刑事上の手続に関与した検察官又はその者が収容されていた刑事施設(労役場に留置されていた場合には、当該労役場が附置された刑事施設)の長若しくは少年院の長の意見を聴かなければならない。ただし、仮釈放の期間の満了によって前条第一項第一号に該当した者又は仮退院の終了により同項第九号に該当した者については、この限りでない。


このように、更生緊急保護は更生保護の内容として定められていることがわかりますね。

保護観察と連続性のある制度ですから、併せて覚えておくと良いでしょう。

以上より、選択肢②および選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。

④ 特別改善指導

刑事施設においては、作業とともに矯正処遇の中心となる改善指導及び教科指導が行われます。

改善指導及び教科指導は、従来の教育等に代わるもので、受刑者処遇法によって受刑者に対して指導を受けることを義務付けることができることになりました。

これらの指導に加えて、刑執行開始時及び釈放前の指導が行われ、改善指導、教科指導、刑執行開始時の指導及び釈放前の指導の4つを併せて矯正指導と呼びます。

上記のうち、改善指導とは、受刑者に対し、犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために行う指導を指し、「一般改善指導」及び「特別改善指導」があります。

一般改善指導とは、講話、体育、行事、面接、相談助言その他の方法により、①被害者感情を理解させ、罪障感を養うこと、②規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し、心身の健康の増進を図ること、③生活設計や社会復帰への心構えを持たせ、社会適応に必要なスキルを身に付けさせること等を目的として行う指導をいいます。

特別改善指導とは、薬物依存があったり、暴力団員であるなどの事情により、改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し、その事情の改善に資するよう特に配慮した指導をいいます。

特別改善指導には、薬物依存離脱指導、暴力団離脱指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全指導及び就労支援指導があります。

これらについては刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)の103条に規定があります。


(改善指導)
第百三条 刑事施設の長は、受刑者に対し、犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるため必要な指導を行うものとする。
2 次に掲げる事情を有することにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し前項の指導を行うに当たっては、その事情の改善に資するよう特に配慮しなければならない。
一 麻薬、覚せい剤その他の薬物に対する依存があること。
二 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員であること。
三 その他法務省令で定める事情


上記の第1項が「一般改善指導」を指し、第2項が「特別改善指導」を指します。

特別改善指導の種類と対象者は以下の通りになります。

  1. 薬物依存離脱指導(R1):⿇薬、覚せい剤その他の薬物に対する依存がある者
  2. 暴⼒団離脱指導(R2):暴⼒団員である者
  3. 性犯罪再犯防⽌指導(R3):性犯罪の要因となる認知の偏り、⾃⼰統制⼒の不⾜等がある者
  4. 被害者の視点を取り⼊れた教育(R4):⽣命を奪い、⼜は⾝体に重⼤な被害をもたらす犯罪を犯し、被害者及びその遺族等に対する謝罪や賠償等について特に考えさせる必要がある者
  5. 交通安全指導(R5):被害者の⽣命や⾝体に重⼤な影響を与える交通事故を起こした者や重⼤な交通違反を反復した者
  6. 就労⽀援指導(R6):刑事施設において職業訓練を受け、釈放後の就労を予定している者等

これらの特別改善指導は、矯正局から提示されている標準プログラムに基づき、各施設において実践プログラムを策定、実施しています。

各施設では収容している受刑者の特性や施設の置かれている状況等に応じて、「医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術を活用」(同法第84条第5項)しながら、科学的根拠に基づく効果的な指導を行うべく努力を重ねていると考えられます。

上記の通り、特別改善指導とは、刑事施設で行われる作業とともに矯正処遇の中心となる改善指導及び教科指導を指します。

更生保護は、犯罪をした人や非行のある少年を社会の中で適切に処遇することにより、その再犯を防ぎ、非行をなくし、これらの人たちが自立し改善更生することを助けることで、社会を保護し、個人と公共の福祉を増進しようとする活動です。

対して特別改善指導は刑務所等で行われている取組であり、刑事施設に入所している間に自分が犯した罪の重さを自覚し反省を促すとともに、過ちを二度と起こさないよう、改善更生の意欲を呼び起こして社会生活に適応できる能力を身に付けさせるために行われているものです。

更生保護は、社会復帰に向けた出所・出院後の指導や支援ということになりますから、その辺で弁別することが大切ですね。

以上より、選択肢④が誤りと判断でき、こちらを選択することになります。

⑤ 仮釈放・仮退院

矯正施設に収容されている人を収容期間満了前に仮に釈放して更生の機会を与え、円滑な社会復帰を図ることを目的とした制度として、刑事施設等からの仮釈放、少年院からの仮退院等があります。

更生保護法に規定されている仮釈放については以下の通りです。


(法定期間経過の通告)
第三十三条 刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、刑法第二十八条又は少年法第五十八条第一項に規定する期間が経過したときは、その旨を地方委員会に通告しなければならない。

(仮釈放及び仮出場の申出)
第三十四条 刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、前条の期間が経過し、かつ、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮釈放を許すべき旨の申出をしなければならない。
2 刑事施設の長は、拘留の刑の執行のため収容している者又は労役場に留置している者について、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮出場を許すべき旨の申出をしなければならない。


なお、仮釈放などの期間中は保護観察に付されることになりますから、保護観察とも連動があると理解しておくと良いでしょう。

続いて、少年院からの仮退院についてです。


(仮退院を許す処分)
第四十一条 地方委員会は、保護処分の執行のため少年院に収容されている者(第六十八条の五第一項に規定する収容中の特定保護観察処分少年を除く。第四十六条第一項において同じ。)について、少年院法(平成二十六年法律第五十八号)第十六条に規定する処遇の段階が最高段階に達し、仮に退院させることが改善更生のために相当であると認めるとき、その他仮に退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるときは、決定をもって、仮退院を許すものとする。

(準用)
第四十二条 第三十五条から第三十八条まで、第三十九条第二項から第五項まで及び第四十条の規定は、少年院からの仮退院について準用する。この場合において、第三十五条第一項中「前条」とあるのは「少年院法第百三十五条」と、第三十八条第一項中「刑」とあるのは「保護処分」と、「犯罪」とあるのは「犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為」と読み替えるものとする。


上記の通り、更生保護法に規定がなされています。

仮退院とは、収容期間の満了前に少年の収容を仮に解く制度です。

少年の少年院での処遇段階が最高段階(1級)に達し、審査の結果、仮退院を許すのが相当であると認めるときや、仮退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるときは、少年院の長は、地方更生委員会に対し、仮退院許可の申出をしなければならず(少年院法第135条、犯罪をした者および非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則第9条、第11条第2項、第30条、第13条)、地方更生委員会は、仮退院を相当と認めるときは、これを許可しなければなりません(更生保護法第41条)。

仮退院した少年は、保護観察に付されることになります(いわゆる2号観察、更生保護法第48条第2号)。

そして、保護観察を継続する必要がなくなったと認められると、保護観察所長の申出により、地方更生委員会が正式に退院を許可することになります(更生保護法第74条第1項)。

実務上、少年院に収容された少年の大半がこの仮退院を経て出院しています。

以上より、仮釈放・仮退院は更生保護の内容として規定されています。

よって、選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することになります。

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