公認心理師 2019-135

問135は犯罪被害者等基本法に関する問題です。
基本的には法律の条項に沿った問題となっているので、それほど難解というわけではないかなと思います。
といっても、やはり法律の条項を正確に把握するという作業は大変なんですけどね。

問135 犯罪被害者等基本法について、正しいものを2つ選べ。
①犯罪等とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為を指し、交通事故も含まれる。
②犯罪被害者等とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族であり、日本国籍を有する者をいう。
③犯罪被害者等基本計画の案を作成するなどの事務をつかさどる犯罪被害者等施策推進会議は、内閣府に置く。
④犯罪被害者等のための施策とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、社会に復帰できるための支援の施策である。
⑤犯罪被害者等のための施策は、警察等刑事司法機関に事件が係属したときから、必要な支援等を受けることができるよう講ぜられる。

この法律の前文にサラッと書いてある「国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ」という表現がとても怖いなと思って読んでいました。
超少子化・超高齢化で大人ばっかりが多い世界になっていますし、弱者が対象となるような事件も多くなっており(この辺の心理は、現代の子どもたちを見ていても強く実感します)、かつてのように子どもを自由に遊ばせておくという環境自体が失われているような気がしますね。

自分が幼児の時って、近所を一人でふらふら歩きまわって遊んでいたような気がしますが、今はそうはいかないことも多いような気がします。
子どもだけの「レジスタンス」のような集まりが生じにくくなっており、それがもたらしてくれていた精神的成長が失われているかもしれないなと思っています。

解答のポイント

犯罪被害者等基本法の目的・定義・基本理念を押さえておくこと。

選択肢の解説

①犯罪等とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為を指し、交通事故も含まれる。
②犯罪被害者等とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族であり、日本国籍を有する者をいう。
④犯罪被害者等のための施策とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、社会に復帰できるための支援の施策である。

犯罪被害者等基本法第2条には、以下の通り用語の定義が示されております。

  1. この法律において「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう
  2. この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう
  3. この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策をいう

内閣府は交通安全施策の中で「交通事故被害者等は、交通事故により多大な肉体的、精神的及び経済的打撃を受けたり、又は掛け替えのない生命を絶たれたりするなど、大きな不幸に見舞われており、このような交通事故被害者等を支援することは極めて重要であることから、犯罪被害者等基本法等の下、交通事故被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進する」とされており、この法律の「犯罪等」には交通事故被害者も含まれていることがわかります
また、内閣府において、全国交通安全運動の期間を中心に、各種の啓発事業が交通事故被害者等の視点も踏まえ展開されるよう努めているようです。

また、「犯罪被害者等」の条件には「犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族」とだけ記されており、日本国籍を有するか否かは規定されておりません
日本でもこれから移民を受けいれていこうという流れがある中で、日本国籍を有していないと犯罪被害者として支援を受けられないようでは困りますからね(移民の受け入れに関しては様々な意見もあるでしょうけど)。

更に、「犯罪被害者等のための施策」とは「犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策」です。
選択肢④の「その受けた被害を回復し、社会に復帰できるための支援の施策」という表現では、「再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにする」という点がすっぽりと抜け落ちていることがわかりますね

以上より、選択肢①は正しいと判断でき、選択肢②および選択肢④は誤りと判断できます。

③犯罪被害者等基本計画の案を作成するなどの事務をつかさどる犯罪被害者等施策推進会議は、内閣府に置く。

こちらは犯罪被害者等基本法第24条第1項に「内閣府に、特別の機関として、犯罪被害者等施策推進会議を置く」という規定があります。
そしてこの会議が司るのは次に掲げる事務とされています。

  1. 犯罪被害者等基本計画の案を作成すること
  2. 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等のための施策に関する重要事項について審議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視し、並びに当該施策の在り方に関し関係行政機関に意見を述べること。

この会議は、関係閣僚や犯罪被害者等への支援等に関する有識者で構成されており、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進に努めています。

会長は内閣総理大臣であり(同法第26条)、委員は①国家公安委員会委員長、②国家公安委員会委員長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者、③犯罪被害者等の支援等に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者、とされ①~③を合わせて10人以内で構成されています(同法第27条)。
また、専門委員も置いており「関係行政機関の職員及び犯罪被害者等の支援等に関し優れた識見を有するもののうちから、内閣総理大臣が任命する」とされています。

以上より、選択肢③は正しいと判断できます。

⑤犯罪被害者等のための施策は、警察等刑事司法機関に事件が係属したときから、必要な支援等を受けることができるよう講ぜられる。

こちらについては犯罪被害者等基本法第3条の基本理念に明示されております。

  1. すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
  2. 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。
  3. 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする

上記の第3号にあるとおり、「犯罪被害者等のための施策」は被害を受けた瞬間から講じられるものであり、選択肢にある「警察等刑事司法機関に事件が係属したときから」という点が誤りであることがわかりますね

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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