公認心理師 2023-105

説明に合致する学習法を選択する問題です。

こうした「学習法」に関する問題も頻出になっていますね。

問105 新しい知識を学ぶ際に、学習者が既に持っている認知構造に結びつけることで効果的に学習する方法として、適切なものを1つ選べ。
① 問答法
② 個別学習
③ 発見学習
④ プログラム学習
⑤ 有意味受容学習

解答のポイント

各学習方法について把握している。

選択肢の解説

① 問答法

教師と児童・生徒との相互的な質問・応答の過程を通して、学習を深化させようとする学習指導法であり、対話(質問・応答)により相手の矛盾・無知を自覚させつつ、真の知の自覚に導こうとしたソクラテスの対話法に由来しています。

問答法は、教師の一方的な働きかけである講義法にみられる生徒の受動的学習態度を克服し、学習者の個別性に基づいた積極的知的活動を促進しようとするものです。

したがって、教師の質問は、その目的が明確であり、生徒の多面的知識と経験を刺激するよう配慮されねばなりません。

その際、質問は生徒個人に向けられたとしても、それが学級全体の生徒の問題関心に結合される必要があります。

こうした問答法の内容は、本問の「新しい知識を学ぶ際に、学習者が既に持っている認知構造に結びつけることで効果的に学習する方法」とは合致しないことがわかります。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② 個別学習

個別学習とは、児童生徒のそれぞれの能力、資質に応じて、それぞれの自発性を尊重して、学習目標を達成させようとする学習形態を指します。

一般的なの一斉授業による学習形態では学習者一人ひとりの個性や能力に十分に対応することは困難であるが、この欠陥を補うものとして考え出されたものであり、個々の学習者の能力・思考傾向などに応じた指導がなされるよう配慮されます。

「学習のつまづき」や「思考の誤り」を発見し、それを克服させるというところも大切とされており、一斉授業およびグループ学習と合わせて、それぞれの長所短所を活かすために相補的に採用されるものになります。

近年では文部科学省が「個別最適化学習」を推しており、これは「特別な支援が必要な子どもたちも含め、一人ひとりの理解状況や能力、適性に合わせて個別に最適化された学びを行うこと」と表現されています。

具体的に「学習の個別化」とは、どの子も自分の興味関心にあった学習を行ったり、自分にあったアウトプットの方法で表現したりすることです。

だから、ある学習目標(例えば、家庭科でミシンを使う、ボタンを留めるなど)に沿ってそれが達成されるのであれば、それぞれの子どもが興味のある題材(エプロン、手提げかばん、リュックサックなど)を選択できるという形になるわけです。

小学校・中学校の「総合的な学習の時間」や、高校の「総合的な探究の時間」において、子どもたち一人一人が自分の興味関心に基づいて学習テーマを選び、探究的に学んでいくようなことも「学習の個性化」と言えますね。

上記の通り、個別学習は、本問の「新しい知識を学ぶ際に、学習者が既に持っている認知構造に結びつけることで効果的に学習する方法」に該当しないことがわかりますね。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 発見学習
⑤ 有意味受容学習

Brunerは1960年に、学習者が原理原則を「発見学習」(学習者自らが試行錯誤して学ぶこと)できるように授業を組み立てる方法を提唱しました。

Ausubelはこれを、教師が知識内容を提示し学習者が「受容学習」(教員が学習者に一斉授業を行うタイプの学習のこと)を行う伝統的な教育方法と対峙するものとして位置づけました。

オーズベルは、現代では習得すべき学習内容が膨大であることから、すべてを発見学習で学ぶことは非現実的であるとして、受容学習の重要性を強調しました。

学習には有意味学習と機械的学習があります。

機械的学習は、意味を考えずに丸暗記する方法であり、こちらは記銘や想起が困難なうえ、確実に行うためにはリハーサルを大量に行う必要があります。

これに対し、有意味学習は「学習者がすでにもっている知識に学習材料をうまく関連づけることによって新しい概念を獲得しようとする学習」であり、記銘・再生や再認のどの段階も機械的学習よりも容易であり、保持期間も機械的記憶よりも長いという特徴があります。

有意味学習では、学習内容が認知構造に関連付けられて処理されているため、新たに学習すべき量が少ない、学習所要時間や記憶負担も少なく、意味的学習想起が生じやすい、問題解決場面に役立ちやすい、などの特徴を持つとされており、教科書をいかに有意味化するかが重要であるとされています。

こうした「発見学習 対 受容学習」「有意味 対 機械的」の4通りを組み合わせると「機械的受容学習」「機械的発見学習」「有意味受容学習」「有意味発見学習(いわゆる発見学習)」の四つの学習型に分類され、オーズベルが提唱したのは「有意味受容学習」です。

有意味受容学習とは、有意味学習の「学習者がすでにもっている知識に学習材料をうまく関連づけることによって新しい概念を獲得しようとする学習」と、受容学習の「指導者によって提示される学習内容に基づいて進められる学習」を組み合わせたものです。

ですから、学習者が新しい概念や情報に接したとき、それを自分自身の既有の認知構造に組み入れて解釈しようとする性向を有しており、提示される学習材料が学習者の知的能力や知識に応じた適切なもの(潜在的に有意味)であれば、学習者は自らの力でその意味を理解し、それを利用可能な知識として獲得することができるわけです。

この有意味受容学習を助けるものとして先行オーガナイザーがあります。

新たに学習する内容に関連する抽象的・概念的な枠組みを先に呈示しておくと、新たな内容を理解しやすくなることが分かっており、先行オーガナイザーとは、学習前にあらかじめ呈示する枠組みのことを言います。

要するに、ポンと提示された最終形の学習内容と学習者の認知構造との間にはギャップがあるので、このギャップを埋めて学習内容を学習者の認知構造に適切に結び付けるのを支援するものが先行オーガナイザーということになります。

記憶内の既有知識が明確かつ適切に構造化され、しかも安定していれば、新しい学習内容は正確な意味づけがなされて構造化され、既有の意味ネットワークにうまく移植されることになりますが、既有知識の構造が曖昧で混沌とした状態で不安定な場合は、新しい情報の受容学習は妨害されて、定着は成功しないとオーズベルは考えました。

学校で授業を受ける前に、学習者個人が予習をすると効果的であることが知られていますね。

これは、予習が主体的な学習姿勢を形成すると同時に、予習内容が先行オーガナイザーの働きを持つためと考えられています。

このように発見学習とは「学習者が能動的にその知識の生成過程をたどることにより知識を発見し学習する学習法」のことを指し、有意味受容学習とは「これから学ぶ学習内容の総括的な情報(先行オーガナイザー)を学習者側に事前に与え、その知識と学習内容を関連づけて学習すること」を指します。

本問の「新しい知識を学ぶ際に、学習者が既に持っている認知構造に結びつけることで効果的に学習する方法」が有意味受容学習のことを指しているのがわかると思います(「学習者が既に持っている認知構造」が先行オーガナイザーになるわけですね)。

以上より、選択肢③は不適切と判断でき、選択肢⑤が適切と判断できます。

④ プログラム学習

プログラム学習は、スキナーの理論提起が主たる契機となって構築されたものです。

プログラム学習におけるプログラムとは「学習目標を書く学習者に達成させるために学習内容を具体化し目標行動として、あらかじめ系列化した意図に従って確実に学習させる整理・体系化した内容」を指します。

すなわち、学習内容が強化の論理に従って細かく順序よく整理され(=スモールステップの原理)、ステップごとに学習者の反応が喚起されるよう(=積極的反応の原理)に進行しながら、各ステップの学習の確認(=フィードバックの原理)がなされ得るようになっていることです。

また、プログラムによる学習の進度は各学習者の個別(=自己ペースの原理)に応じてなされます。

更に、意図的に作成され学習者に供するプログラムは常時学習者の学習結果により修正(=学習者検証の原理)されることが特徴です。

つまりプログラム学習は以下のようにまとめられます。

  1. スモールステップの原理:最終目的に至るまでの下位目標を難易度の順に配列し、スモールステップを重ねることで最終目的に到達できるようにする。
  2. 積極的反応の原理:回答を書くなどのように積極艇に行動で反応させる。反応には強化(正誤に基づくフィードバック)が与えられる。
  3. フィードバックの原理:正誤に基づくフィードバックは回答の直後に即時的に与えられる。
  4. 自己ペースの原理:個人差に応じて、学習者のペースで進められる。「オペラント=自発」であることからも、これが前提であると言える。
  5. フェイディングの原理:はじめは正答が出やすいようにヒントなどの援助を多く与えるが、次第に援助を減らし、自己の力で行うようにさせる。
    (なお、これらの原理について一つ、以下を掲げる研究者もいます)
  6. 学習者検証の原理:教師により作成された上述のプログラムの妥当性を、学習者の理解や発達度との一致度により検証する。

こうしたプログラム学習の長所は、①学習者の能力や学習態度に対応して、学習を最適化できる、②教師の学習指導方法における個人差の影響を小さくできる、③自分で誤答を訂正することができ、不安の高い学習者も安心できる、などが挙げられます。

これに対して、プログラム学習の短所は、①プログラム学習そのものを適用できる教科が、確実に正解が出せる科目に限られる、②学習者の自由な発想や積極的な学習活動を育成しづらい、③課題が単調になり、学習者が飽きてしまうことがある、などが挙げられます。

このように、プログラム学習とは、いくつもの小単位に分割された学習内容を小単位ごとに習得しながら、小単位間の系統的な関係に基づく順序計画に従って学習を進めることにより、最終的に小単位が統合された学習内容全体の習得に至る学習法になります。

これは本問の「新しい知識を学ぶ際に、学習者が既に持っている認知構造に結びつけることで効果的に学習する方法」に合致しないことがわかります。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

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