公認心理師 2021-23

授業におけるユニバーサルデザインに関する問題です。

こうした問題では、不適切選択肢もユニバーサルデザインと関連するものをもってくるものだと思っていましたが、どうやらそうでもなかったようです(だから調べるのにえらい時間がかかりました)。

問23 ユニバーサルデザインの考え方に基づいて、授業を実施する場合に重要な視点として、最も適切なものを1つ選べ。
① 同化
② 熟達化
③ 焦点化
④ 体制化
⑤ 符号化

解答のポイント

授業におけるユニバーサルデザイン化に関する理解を有する。

選択肢の解説

③ 焦点化

ユニバーサルデザイン(universal design:UDと略される)の概念を提唱したアメリカのメイスは「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間をデザインすること」と定義づけました。

彼は「すべての人が人生のある時点で何らかの障害を持つ」ということをUDの発想の起点としており、「可哀想な人に何かを施す」ということではないと述べています。

すなわち障害者や高齢者、子どもといった社会的弱者に対して、その自立を妨げずに公平かつ活用しやすいサービスを提供できるように、というのが彼の発想ということですね。

なお、バリアフリーとの異同ですが、バリアフリーは「障害者にとって使い易いデザイン」を検討するのに対し、UDは「障害のあるなしに関わらずできるだけ多くの人が使えるデザイン」を目指しているということになります。

こうしたUDには以下のような原則が設けられています。

  • 公平性:誰にとっても使用可能であるようにデザインする。
  • 柔軟性:幅広い人たちの好みや能力に合わせやすいようにデザインする。
  • 利用しやすさ:使い易くシンプルにデザインする。
  • わかりやすさ:必要な情報が効果的に伝わるようデザインする。
  • ミスの起こりにくさ:失敗が起こりにくいようにデザインする。
  • 身体的負担の軽減:快適で疲れにくいようデザインする。
  • スペースの確保:利用者が安全に使用できる大きさと広さを提供する。

つまり、それまでは「つくる人たちの考え」重視だったものが、「使う人の立場にたって」デザインするという発想になったわけです。

さて、ここまでがUD自体の概要になります。

以下では、教育におけるUDについて述べていきましょう。

教育分野におけるUDは「通常の学級における特別支援教育」の文脈において発達障害のある子どもを育てる視点の一つとして語られるようになったという経緯があります。

このような教育分野でのUDの視点の導入は、通常の学級における在籍率が6.5%といわれるLDやADHD、ASDの可能性のある子どもへの対応に新しい意味を与えるものでした。

つまり、発達障害のある子どもだけにではなく、その子を含む、全ての子どもへの対応を豊かにすることで、結果的に6.5%の子どもへの支援を実現するという視点移動であり、それは現場のニーズにマッチするものでした。

実際の教育現場における具体的なUD化の流れは、学校環境、教室環境のUD化からスタートしました。

例えば、教室の前面の壁の掲示物を極力減らして注意集中を妨げる刺激の少ない環境を作るなどの工夫がありますね。

こうした「刺激量の調整」とともに、教室内の整理を進めて空間を構造的にする「場の構造化」、暗黙のルールを作らない「クラスルールの明確化」、時間の見通しをもたせる「時間の構造化」なども示されています。

このように、それまでは特別支援教育では定番であった方法が、次々に通常の学級に紹介され、応用される形で学校・教室環境のUD化が進んでいます。

こうした動きの中で、さらに「授業」そのものをUD化しようという流れが生じてきました(ここが本問と絡むところ)。

この流れは教科教育研究に熱心な教師を中心として生じた現場発の動きです。

その一つとして、桂(2010)は国語授業において「焦点化」「共有化」「視覚化」などの工夫を行うことが、発達障害のある子どもを含めたすべての子どもに対して「わかる・できる」を実感させることができると発信し、多くの教師の共感を得ることになりました。

各工夫については以下の通りです。

  • 焦点化:授業のねらいや活動を絞って、児童に確実に力を付けていくことである。付けたい力を具体的にすること、発問を具体的な言葉で行うこと、活動をシンプル化することなどを行っていく。
  • 視覚化:活動を視覚化することにより、全ての児童の学習活動を支援していくことである。授業の流れを見える化すること、発問や活動を見える化することなどにより、児童一人一人に主体的な学習を保障していく。
  • 共有化:一人一人の学びを広げ、みんなのものにしていくことである。自分の考えを確実にもたせた後に、ペア学習、グループ学習などを仕組んでいく、集団解決の場で児童の考えをつなげていくことなどにより、学び合いの中で個に応じた成長を促していく。

こうした動きは、まさに「教科教育と特別支援教育の融合」の実現であり、これまでは交わりにくかった二つの領域が第三の道を見出すという画期的な動きでした。

こうした教育におけるUDの動きは「障害はその子の中だけにあるのではなく、その子の外にもある」という視点を本格的に現場に落とし込んだものだと評価できます。

以上より、授業のUD化においては「焦点化(シンプルに指導内容を絞る)」「視覚化(ビジュアル化してイメージしやすいようにする)」「共有化(学習者間で学びを共有・拡散する)」ということが重要であると示されています。

よって、選択肢③が適切と判断できます。

① 同化

この名称を聞いて真っ先に思い出す(思い出してほしい)のは、ピアジェの理論ですね。

ピアジェの発達段階論では、発達を感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期に分けて論じています(各段階論の解説は「公認心理師 2019-128」でどうぞ)。

まずピアジェの理論を理解するのに欠かせないのが、ピアジェ理論の中核概念である「シェマ」という概念に関する理解です。

シェマとは「自分が引き起こせる行動の型」「その行動を可能にしている基礎の構造」と言えます。

手を閉じたり開いたりするのも、そういうシェマを持っているためです。

これは動作ですが、イメージや概念もシェマということになります。

犬の概念を頭で思い浮かべたり、母親のイメージを自分の内に持っていたりすることができるはずです。

わかりやすく言えば、人間の知性というものは、環境から与えられた体験を取り入れて、それによって外界に対する自分なりの「捉え方」「型」を作っていくわけです。

その「捉え方」「型」のことをシェマと呼ぶのです。

始めは感覚的なレベルのシェマが、体験を積み重ねることで概念的になっていくという流れをピアジェは示しています(これが、上記の発達段階で成熟していくということ)。

シェマを理解する上で、同化と調節という概念は欠かせません。

「環境から与えられた体験を取り入れること」を同化と呼び、これに対して、「外界に応じて自己のシェマを改変していくこと」を調節と呼びます。

学びの体験では、自分の持っているある概念の中に新たな知識を加えるときに「あー、わかった」となりますが、これは同化という現象が生じているわけです。

ただ、学ぶ上ではいつも同化ばかりができるわけではなく、自分のシェマを変えていかないと同化できないこともあるでしょう。

そういう時に調節が行われるわけです。

即ち、同化していって、同化しきれないと矛盾が生じ、それで調節が起こり、また新たな同化が起こる…ということになり、そういう形で次第にバランスが保たれていくことを「均衡化」と呼びます。

ピアジェは研究の主眼を認識(知的発達)に絞った研究者であり、言い換えるなら、ピアジェの発達論は「シェマの発達論」ということになります。

シェマ同士がどのように(同化と調節の繰り返しによって)構造化され、より高次の組織化が作られてゆくのかを理論化したものと言うことができ、その過程を人間の発達の中核とし、他の諸側面の発達はそれと関係づけてゆくことにより説明が可能であるとピアジェは考えていたということです。

以上のように、同化はUDに関する概念ではなく、ピアジェ理論の重要な概念の一つです。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 熟達化

そして本選択肢の「熟達化」は長期にわたる学習の一種であり、初心者が経験による学習によって高次のスキルや知識の獲得をして、素早く、正確に遂行するエキスパート(熟達者)になる学習プロセスを指します。

熟達した段階では、一般的に基本的な技能は自動化され、直観的な判断で問題の深層を捉えることができます。

領域によってその性質は異なり、科学の問題解決や医学的診断などでは、よく構造化された知識に基づく柔軟な処理(適応的熟達)が特徴ですが、タイプライティングなどの感覚運動的な領域では、定型的な手続き的な処理の高度な自動化とその速さや正確さの向上(定型的熟達)が特徴で、更には「創造的熟達」の段階があるとされています。

熟達者になるには10年ルール(Ericsson)といわれるように長い時間がかかり、これは仕事だけでなく趣味やスポーツの領域でも同様です。

熟練技能には、手技的・操作的技能のみではなく作業状況の判断や成果像など全体プロセスの把握・理解といった精神的技能の熟達化も含めて考えられています。

以上のように、熟達化は授業のUD化の概念ではなく、学習心理学の概念の一つです。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

④ 体制化
⑤ 符号化

これらは記憶領域の概念としてまとめて解説していきましょう。

「符号化」は外界から入力された情報を、のちに元の情報に複合化できるようコードを変換することを指します(記憶における符号化は記銘処理、複合化は検索処理に相当する)。

どのような符号化を行うかによって、後の検索可能性が影響を受けるとされています。

代表的な符号化の一つに「精緻化」があります。

例えば「平安京遷都は794年」という事項をそのまま丸暗記するよりも、「鳴くよウグイス平安京」と語呂合わせの精緻化をすることで、既有知識との関連性が豊富になり、後で検索しやすくなりますね。

他にも「体制化」はよく用いられる符号化であり、記銘項目を個別に丸暗記するよりも、カテゴリー情報や分類基準を利用して群化することで、記銘活動も検索も効率が良くなります。

このような方略は、人間の記憶が関連する情報同士がまとまりを成して蓄積されているということ(=体制化されている)を前提とした方略です。

私が資格試験の勉強で分野ごとに学ぶことが重要だと考えていること、問題が問われたときに「どの分野が問われているか」がわかることが重要だと捉えているのは、こうした体制化された知識群が想起されやすくするためです。

このように記憶する上で効果的な符号化を学習者が意図的に行っている場合には「方略(記憶方略、学習方略)」と呼ぶことができるが、符号化自体は意図的な活動に限定されず、記銘意図がなくても各種の符号化は行われます。

記銘情報それ自体だけでなく周辺の文脈情報も併せて符号化されることで、記憶の文脈依存の効果や符号化特定性の現象が生じやすくなります。

資格試験の勉強においても、多くの人と話しながら学ぶことで「記憶の文脈依存」が生じやすくなり(言い換えるなら、意味記憶ではなくエピソード記憶になる)、学びが促進されやすくなります。

本サイトで、語りかけるような書き方をするときがあると思いますが、少しでも「記憶の文脈依存」を生じやすくするための工夫でもあります。

以上のように、符号化や体制化は記憶領域の概念として示されております。

なお、体制化については「記憶の体制化」だけでなく「知覚の体制化(ものを見るときに、ある法則に従ってまとまりを作ろうとする傾向)」があり、「図と地の分化」や「プレグナンツの傾向」などが関連概念として示されています。

以上より、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です