公認心理師 2023-78

Bowlbyの提唱するモーニングの段階に関する問題です。

こちらは過去問でも示されている内容になっていますね。

問78 J. Bowlbyの提唱する、モーニングの第一期の心理状態に該当するものを1つ選べ。
① 混乱
② 思慕
③ 絶望
④ 探索
⑤ 無感覚

解答のポイント

Bowlbyの提唱するモーニングの段階を把握している。

選択肢の解説

① 混乱
② 思慕
③ 絶望
④ 探索
⑤ 無感覚

喪の作業はフロイトの造語で「trauerarbeit」と命名され、英語では「mourning work」もしくは「grief work」と訳されます。

愛着対象を失った際に生起する能動的な心の営み、あるいは失われた過去を想起しながら内面に対象表象を再建していく作業を意味します。

行動レベルとしては、故人との思い出を語ること、故人の手記を書くこと、遺品を片付けること、遺言を実現すること、自助グループに参加することなどが挙げられます。

喪の作業では心模様が変化しますが、遺族の観察から様々な段階設定が試みられており、その代表的な知見としてはBowlbyのモデルがあります。

  • 第1段階:情緒危機;ショックと茫然自失(数時間から1週間程度)
    死を事実として受け止められず、死を知らされた直後の急性ストレス反応としての無感情状態。死後1週間程度続く無感覚の段階。一種の急性のストレス反応。激しい衝撃に茫然としてしまい、死を現実として受け止めることができない。
  • 第2段階:否認;追慕と探索(数週間~数年の間)
    喪失を受け止め始めながら、受け止めきれず、深い悲嘆が始まる。喪失を事実として受け止め始め、強い思慕の情に悩まされ深い悲嘆が始まる。他方、喪失を充分には認めることができず、強い愛着が続いている段階。この時期には喪失に対する責任を巡り、怒りや抗議も見られる。
  • 第3段階:断念;混乱と絶望
    喪失の現実が受け入れられ、絶望を感じ、抑うつ状態に陥る。喪失の現実が受け入れられ、愛着は断念される。それまで故人との関係を前提に成立していた心の在り方・生活が意味を失い、絶望、失意、抑うつ状態が大きくなる。
  • 第4段階:離脱・再建;心理‐社会的な再建
    それまで愛着が向けられてきた故人から離脱し、再建していく段階。故人の思い出が穏やかで肯定的なものとなり、新しい人間関係や環境の中で、死別者の心と社会的役割の再建の努力が始まる。

こうした悲嘆過程において最終的に重要なのは、喪失対象との絆の持続的維持になりますね。

つまり、新たな形で喪失対象が「生き続ける」という世界を構築するということです。

こうした悲嘆過程の経過が悪い場合の因子としては、予期せぬ突然の死である、悲嘆の遅延が生じている、悲しみや悲嘆の抑圧、生前の死者との感情的葛藤・愛憎のアンビバレンス、死者への強い依存・愛着、などが指摘されています。

ボウルビィの提唱内容は、やはり愛着理論との関連を感じるものになっていますね。

さて、上記を踏まえて各選択肢の内容を見ていきましょう。

選択肢⑤の「無感覚」が、第一期の心理状態であることがわかりますね。

大切な対象が亡くなったことで無感情状態になる時期で、イメージとしては大きなショックを受けたときの現実感覚がなくなる感じ(おそらく解離と同じと思ってよい)に近いでしょうね。

選択肢②の「思慕」と選択肢④の「探索」が第二期の心理状態であり、喪失を事実として受け止めることで起こる強い愛着反応としての思慕と、その対象を求める探索が生じるということですね。

こういうモーニングの過程を考えるときに限らずですが、その人が適切な心理状態になる、心理的な成長のために必要な心理的危機・障壁というものがあり、そこには苦しみが伴うけど必要なものであるという認識ですね(生みの苦しみというものはやはりあると思います)。

選択肢①の「混乱」と選択肢③の「絶望」は第三期の心理状態であり、求めても求めても失った人は存在しないという現実を受け容れ、愛着が断念されることで起こります。

こうした時期を経て心理社会的な再建の心理状態になっていくわけですね。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④が不適切と判断でき、選択肢⑤が適切と判断できます。

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