公認心理師 2021-13

DSM-5のカテゴライズを問う問題です。

こういう「出題されることが想定される内容」で「単純に覚えるしかない」問題は大変ですが、コツコツ覚えるしかないですね。

資料室にある「2020年度作成 DSM-5に関する確認テスト」をご活用ください。

問13 DSM-5の神経発達症群/神経発達障害群に分類される障害として、正しいものを1つ選べ。
① 素行症/素行障害
② 脱抑制型対人交流障害
③ 神経性やせ症/神経性無食欲症
④ 解離性同一症/解離性同一性障害
⑤ 発達性協調運動症/発達性協調運動障害

解答のポイント

DAM-5の各障害群とそれに含まれる障害を把握している。

選択肢の解説

① 素行症/素行障害

こちらは「秩序破壊的・衝動制御・素行症群」に含まれる障害になります。

このカテゴリーの障害としては…

  • 反抗挑戦性障害
  • 間欠性爆発性障害
  • 素行障害
  • 反社会性パーソナリティ障害(素行障害のスペクトラムと密接につながっているという理由で、このカテゴリーに記載があるものの、本来はパーソナリティ障害群の障害である)
  • 放火症
  • 窃盗症

…が挙げられます。

素行障害の診断基準は以下の通りです。


A.怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも6ヵ月間は持続し、以下のカテゴリーのいずれか少なくとも4症状以上が、同胞以外の少なくとも1人以上の人物とのやりとりにおいて示されている。

怒りっぽく/易怒的な気分
1.しばしばかんしゃくを起こす。
2.しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい。
3.しばしば怒り、腹を立てる。

口論好き/挑発的な行動
4.しばしば権威ある人物や、または子どもや青年の場合では大人と、口論する。
5.しばしば権威ある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する。
6.しばしば故意に人をいらだたせる。
7.しばしば自分の失敗、また不作法を他人のせいにする。

執念深さ
8.過去6ヵ月間に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある。

注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもについては、他に特に記載がない場合は、ほとんど毎日、少なくとも6ヵ月間にわたって起こっている必要がある(基準A8)。5歳以上の子どもでは、他に特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヵ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、例えばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮するべきである。

B.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中にのみ起こるものではない。同様に重篤気分調節症の基準は満たさない。

▶現在の重症度を特定せよ
軽度:症状は1つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)
中等度:いくつかの症状が少なくとも2つの状況で見られる。
重度:いくつかの症状が3つ以上の状況で見られる。


なお、私は乳幼児期~20歳前後の人を中心に心理支援業務を行っていますが、反抗挑戦性障害・素行障害・反社会性パーソナリティ障害という地続きで捉えられている在り様に関しては、「障害」と見なすのには違和感を覚えています。

なぜなら、本当に乳幼児期から彼らを縦断的に見ていると、明らかに家庭環境に要因があるように見受けられる例が多いからです(最近はこうした傾向に関する講演や研修が多いですね)。

この仕組みの正確な記述は、それ自体が膨大になるので省きますが、自己愛のテーマの問題(万能感が下方修正されていない)、倫理観がどうやって身に付くのか、それらを招く子育ての在り様(社会的には好ましいと思われているものも実は含まれている)、などが中核的な問題と考えています。

なお、これらの背景に発達障害の存在は確かにあり得ますが、確実にそれは遠因に過ぎません。

いずれにせよ、選択肢①は神経発達症群/神経発達障害群に分類される障害ではありません。

よって、選択肢①は誤りと判断できます。

② 脱抑制型対人交流障害

こちらは「心的外傷およびストレス因関連障害群」に含まれる障害になります。

このカテゴリーの障害として…

  • 反応性愛着障害
  • 脱抑制型対人交流障害
  • 心的外傷後ストレス障害
  • 急性ストレス障害
  • 適応障害

…が挙げられます。

脱抑制型対人交流障害の診断基準は以下の通りです。


A.以下のうち少なくとも2つによって示される、見慣れない大人に積極的に近づき交流する子どもの行動様式:

  1. 見慣れない大人に近づき交流することへのためらいの減少または欠如
  2. 過度に馴れ馴れしい言語的または身体的行動(文化的に認められた、年齢相応の社会的規範を逸脱している)
  3. たとえ不慣れな状況であっても、遠くに離れて行った後に大人の養育者を振り返って確認することの減少または欠如
  4. 最小限に、または何のためらいもなく、見慣れない大人に進んでついて行こうとする。

B.基準Aにあげた行動は注意欠如・多動症で認められるような衝動性に限定されず、社会的な脱抑制行動を含む。

C.その子どもは以下の少なくとも1つによって示される不十分な養育の極端な様式を経験している。

  1. 安楽、刺激、および愛情に対する基本的な情動欲求が養育する大人によって満たされることが持続的に欠落するという形の社会的ネグレクトまたは剥奪
  2. 安定したアタッチメント形成の機会を制限することになる、主たる養育者の頻回な変更(例:里親による養育の頻繁な交代)
  3. 選択的アタッチメントを形成する機会を極端に制限することになる、普通でない状況における養育(例:養育者に対して子どもの比率が高い施設)

D.基準Cにあげた養育が基準Aにあげた行動障害の原因であるとみなされる(例:基準Aにあげた障害が基準Cにあげた病理の原因となる養育に続いて始まった)。

E.その子どもは少なくとも9ヵ月の発達年齢である。

▶該当すれば特定せよ
持続性:その障害は12カ月以上存在している。

▶現在の重症度を特定せよ
脱抑制型対人交流障害は、子どもがすべての症状を呈しており、それぞれの症状が比較的高い水準で現れているときには重度と特定される。


以上のように、選択肢②は神経発達症群/神経発達障害群に分類される障害ではありません。

よって、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 神経性やせ症/神経性無食欲症

こちらは「食行動障害および摂食障害群」の障害になります。

このカテゴリーの障害として…

  • 異食症
  • 反芻性障害
  • 回避・制限性食物摂取障害
  • 神経性無食欲症
  • 神経性大食症
  • 過食性障害

…が挙げられます。

神経性やせ症/神経性無食欲症の診断基準は以下の通りです。


A.必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対する有意に低い体重に至る。有意に低い体重とは、正常の下限を下回る体重で、子どもまたは青年の場合は、期待されている最低体重を下回ると定義される。

B.有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続した行動がある。

C.自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如。

▶いずれかを特定せよ
(50.01)摂食制限型:過去3ヵ月間、過食または排出行動(つまり、自己誘発的嘔吐、または緩下剤・利尿薬、または浣腸の乱用)の反復的なエピソードがないこと。この下位分類では、主にダイエット、断食、および/または過剰な運動によってもたらされる体重減少についての病態を記載している。
(F50.02)過食・排出型:過去3ヵ月間、過食または排出行動(つまり、自己誘発的嘔吐、または緩下剤・利尿薬、または浣腸の乱用)の反復的なエピソードがあること。 (F50.02)過食・排出型:過去3ヵ月間、過食または排出行動(つまり、自己誘発的嘔吐、または緩下剤・利尿薬、または浣腸の乱用)の反復的なエピソードがあること。

▶該当すれば特定せよ
部分寛解:かつて神経性やせ症の診断基準をすべて満たしたことがあり、現在は基準A(低体重)については一定期間満たしていないが、基準B(体重増加または肥満になることへの強い恐怖、または体重増加を回避する行動)と基準C(体重および体型に関する自己認識の障害)のいずれかは満たしている。
完全寛解:かつて神経性やせ症の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間診断基準を満たしていない。

▶現在の重症度を特定せよ
重症度の最低限の値は、成人の場合、現在に体格指数(BMI:Body mass index)(下記参照)に、子どもおよび成人の場合、BMIパーセント値に基づいている。下に示した各範囲は、世界保健機関の成人のやせの分類による。子どもと青年については、それぞれに対応したBMIパーセント値を使用するべきである。重症度は、臨床症状、能力低下の程度、および管理の必要性によって上がることもある。
軽度:BMI≧17kg/㎡
中等度:BMI16~16.99 kg/㎡
重度:BMI15~15.99 kg/㎡
最重度:BMI<15 kg/㎡


以上のように、選択肢③は神経発達症群/神経発達障害群に分類される障害ではありません。

よって、選択肢③は誤りと判断できます。

④ 解離性同一症/解離性同一性障害

こちらは「解離症群/解離性障害群」の障害となります。

このカテゴリーの障害としては…

  • 解離性同一性障害
  • 解離性健忘
  • 離人感/現実感消失障害

…が挙げられます。

解離性同一性障害の診断基準は以下の通りです。


A.2つまたはそれ以上の、他とはっきりと区別されるパーソナリティ状態によって特徴づけられた同一性の破綻で、文化によっては憑依体験と記述されうる。同一性の破綻とは、自己感覚や意思作用感の明らかな不連続を意味し、感情、行動、意欲、記憶、知覚、認知、および/または感覚運動機能の変容を伴う。これらの徴候や症状は他の人により観察される場合もあれば、本人から報告される場合もある。

B.日々の出来事、重要な個人的情報、および/または心的外傷的な出来事の想起についての空白の繰り返しであり、それらは通常の物忘れでは説明がつかない。

C.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

D.その障害は、広く受け入れられた文化的または宗教的な慣習の正常な部分とは言えない。
注:子どもの場合、その症状は想像上の遊び友達または他の空想的遊びとしてうまく説明されるものではない。

E.その症状は物質(例:アルコール中毒時のブラックアウトまたは混乱した行動)や他の医学的疾患(例:複雑部分発作)の生理学的作用によるものではない。


以上のように、選択肢④は神経発達症群/神経発達障害群に分類される障害ではありません。

よって、選択肢④は誤りと判断できます。

⑤ 発達性協調運動症/発達性協調運動障害

こちらは「神経発達症群/神経発達障害群」に含まれる障害になります。

このカテゴリーの障害としては…

【知的能力障害群】

  • 知的能力障害
  • 全般的発達遅延

【コミュニケーション障害群】

  • 言語障害
  • 語音障害
  • 小児期発症流暢障害
  • 社会的(語用論的)コミュニケーション障害

【自閉症スペクトラム障害】

  • 自閉症スペクトラム障害

【注意欠如・多動性障害】

  • 注意欠如・多動性障害

【限局性学習障害】

  • 限局性学習障害

【運動障害群】

  • 発達性協調運動障害
  • 常動運動障害
  • チック障害群

…となっています。

発達性協調運動症/発達性協調運動障害の診断基準は以下の通りです。


A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習および使用の機会に応じて期待されているものよりも明らかに劣っている。その困難さは、不器用(例:物を落とす、または物にぶつかる)、運動技能(例:物を掴む、はさみや刃物を使う、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。

B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活動作(例:自己管理、自己保全)を著明および持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前および就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。

C.この症状の始まりは発達段階早期である。

D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってはうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例:脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。


以上のように、選択肢⑤は神経発達症群/神経発達障害群に分類される障害です。

よって、選択肢⑤が正しいと判断できます。

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