公認心理師 2023-33

発熱時に起こる身体の変化に関する問題です。

風邪をひいたことがある人なら、多分解けるでしょう。

問33 発熱時に起こる身体の変化として、最も適切なものを1つ選べ。
① 呼吸数の減少
② 心拍数の減少
③ 基礎代謝量の低下
④ 消化液分泌の抑制
⑤ タンパク質分解の抑制

解答のポイント

風邪をひいたことがある。

選択肢の解説

① 呼吸数の減少
② 心拍数の減少
③ 基礎代謝量の低下
④ 消化液分泌の抑制
⑤ タンパク質分解の抑制

一般的に発熱が生じやすい風邪(要するに感染症)を例にとって考えていきましょう。

風邪の原因となるウイルスが侵入してくると、外敵に気づいた免疫細胞たちが一斉に動き出します。

免疫細胞は相手を攻撃する力を持つものだけでなく、味方に情報を知らせる役割を果たすものもあり、この伝令に基づき外敵の侵入情報を脳で体温調節の司令塔となっている視床下部に伝えます。

外敵侵入の情報を得た視床下部は、身体の各部に体温を上げるように指示を出します。

発熱が生体全体にとって有利に働く理由は、まだ十分にわかっていませんが、試験管内の実験では、高い温度環境においては免疫細胞の働きがよくなり、ウイルスなどの異物に対する応答が強くなることが示唆されており、発熱は生体にとって有利な応答であると推測されています(ウイルスは37℃くらいで最も増殖が活発になりますが、39℃の環境ではほとんど増殖できない)。

18~19世紀に解熱剤が開発された時は、発熱は病的な状態なので、すぐに解熱剤を飲んで体温を下げるべきだと考えられていましたが、現在では発熱は体が身を守るための生体防御機能の一つとして理解されるようになっています。

感染症にかかったときに早い段階で解熱剤を服用すると、治癒までの期間が長くなるなど、予後を悪くする可能性があるといったデータもあり、ある種の感染症の治療に対しては、特定の解熱剤で副反応が強まることも報告されています。

こうしたことから、安易な解熱剤の使用は控えるべきといえますが、高熱が長く続くと体力の消耗や貧血などを引き起こすため、その場合は使用することもあります。

解熱剤の使用は、その人の体力や病態と併せて考えて判断していくことになりますから(熱性けいれんを起こしたことのある小児の場合は、解熱剤を早めに使うことも多い)、医師の判断なども含めて多面的に考えていくことが重要になりますね。

熱の高さにより、微熱(37℃以上、37.5℃未満)、中程度の発熱(37.5℃以上、38.5℃未満)、高熱(38.5℃以上)に分類されます。

熱型では、稽留熱(1日の日差が1℃以内で高熱が持続)、弛張熱(日差が1℃以上で、解熱時も平熱にならない)、間欠熱(日差が1℃以上で、平熱になる時間がある)に分けられます。

では、発熱によって身体に起こることを述べていきましょう。

平熱は体温を常に一定の温度に調節することによって決まりますが、発熱は正常よりも高い温度に設定されて上昇した平熱のことです。

平熱がいつもより高い温度に設定されると、身体は寒い環境に置かれた時のような反応を起こします。

筋肉は震え、体内の代謝は亢進し熱を産生し、皮膚血管は収縮し熱放散は減少します(この時、身体は寒さを感じます)。

体温が1℃上昇すると代謝が13%増加し、熱感、発汗、倦怠感などが生じます。

また、代謝の亢進に伴って各組織で酸素や栄養分が必要とされ、それを供給するために心拍数が増加し、血流速度も上昇します。

熱を作り出すために酸素が必要になるため、呼吸数は多くなります。

発熱すると基礎代謝が亢進してエネルギー消費が高まることで体力が失われていくとともに、体内のタンパク質の分解が進んでいきます。

体温が平熱よりも1℃上昇すると基礎代謝は13%上昇し、たんぱく質の分解は平常時に比べて2倍以上になります。

発熱の影響は消化機能にまで及び、食欲不振や悪心・嘔吐、下痢などの症状が現れ、発熱によって水分が失われるため、脱水や便秘を起こしやすくなります。

なお、発熱によって頭痛、めまい、悪心、嘔吐、せん妄などが起きやすいのは、中枢神経の機能障害によるものです。

このように、各選択肢にある「呼吸数の減少」「心拍数の現象」「基礎代謝量の低下」「タンパク質分解の抑制」は実際とは逆の内容になっていることがわかりますね。

選択肢④の「消化液分泌の抑制」についてですが、発熱時には消化機能が低下(消化液の分泌が減る)します。

食べ物を消化するには胃を動かして消化液を分泌する必要がありますが、消化しづらい食べ物が胃の中にあると活発に胃を動かす必要があり、消化液をたくさん分泌することになります。

「体調が悪いときには消化の良いものを」とされているのは、こうした発熱時に消化機能が低下するため、刺激の強い食べ物を避けることが大切になります。

なお、刺激が強い食べ物としては、辛さの強いコショウ、塩味の強い漬物、酸味の強い酢の物が該当し、これらの食べ物は分解するのに大量の消化液を必要としますので、胃に大きな負担となります。

だから、風邪をひいたときには消化の良い物、例えば、お粥とかそうめんとかが良いわけですね。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢④が適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です