公認心理師 2023-108

酸素含有量が最も少ない血液が流れる血管を選択する問題です。

中学2年生の知識を動員して解説していきましょう。

問108 酸素含有量が最も少ない血液が流れる血管に該当するものを1つ選べ。
① 冠動脈
② 肝動脈
③ 大動脈
④ 肺静脈
⑤ 肺動脈

解答のポイント

血液のめぐりと各臓器の役割を把握している。

選択肢の解説

① 冠動脈
② 肝動脈
③ 大動脈
④ 肺静脈
⑤ 肺動脈

本問は中学校2年生の理科の問題に近い内容となっています。

人間の身体は多くの臓器によって成り立っているわけですが、その臓器では多くの酸素を必要としています。

血液が循環することで、各臓器に酸素を送り、体内で産出された二酸化炭素を受け取り、絶えず循環しています。

この循環は、心臓を中心とした体循環と、肺での働きを主とする肺循環から成り立っています。

体循環では、左心室から送り出された(動脈血)は、大動脈などを通って各臓器や筋肉などに行き渡り、毛細血管で酸素と二酸化炭素、さらに栄養と老廃物の交換を行って、静脈血となり、大静脈などを通って、右心房に戻ってきます。

肺循環は右心室を起点とする循環路であり、右心室から出た血液は、肺動脈を経て左右の肺の毛細血管に至り、肺胞で二酸化炭素と酸素のガス交換が行われた後、肺静脈を通って左心房に戻ります。

肺循環の目的は、静脈血に含まれる二酸化炭素を排出し、新たに酸素を取り込み、酸素を内包する血液=動脈血にすることです。

左心室から全身へと送られる血液と右心室から肺へと送られる血液は、心臓のポンプ機能によって同時に駆出されることから、体循環と肺循環は同時に絶えず行われています。

さて、こうした文脈からも読み取れるように、肺動脈から肺に入っていった血液は、肺の中で酸素を取り入れ、二酸化炭素を体外に排出し、肺静脈に血液が流れ出ていくわけです。

肺動脈は、心臓→肺に向かう二酸化炭素を最も多く含む血液が流れる血管であり、全身を巡ってきた血液が大静脈から心臓へ入り、肺動脈を通って肺へ向かいます。

全身を巡って各臓器に酸素を与え、二酸化炭素を受け取ってきた血液が流れているので、「全身のうち最も多くの二酸化炭素を含んだ血液が流れる」のが肺動脈であると言えます。

対して肺静脈は肺→心臓へ向かい、酸素を最も多く含む血液が流れる血管であり、肺で二酸化炭素と酸素を交換した後の血液が流れています。

これは酸素を各組織・臓器に渡す前の状態になりますから、「全身のうち最も多くの酸素を含んだ血液が流れる」のが肺静脈と言えます。

これは同じような理屈が他にも成り立ちます。

例えば、消化された栄養分は小腸で吸収され血液に乗せて運ばれることになりますから「養分が最も多い」のは小腸を出た直後の血液となりますし、腎臓は不要分を取り除く臓器ですから「不要分が最も少ない」のは腎臓を出た食後の血液になります(詳しくはこちらをどうぞ)。

選択肢②の「肝動脈」は心臓から肝臓に流れる動脈になりますが、肝臓は必要とする酸素と栄養素を門脈と肝動脈の2つから得ています。

門脈は、肝臓への血液供給の3分の2を担っていおり、その血液には酸素のほか、肝臓で処理するために腸から運ばれる多くの栄養素が含まれています。

肝動脈は、残る3分の1の血液供給を担っていて、その血液は、心臓から流れてきた酸素を豊富に含む血液で、肝臓に供給される酸素の約半分を運んでいます(この時点で肺動脈よりも酸素量は多いだろうと予測できますよね)。

肝臓はこれら2つの血管で血液を供給する仕組みによって保護されており、仮に片方の血管に損傷を受けても、もう一方の血管を流れる血液から酸素と栄養を得られるため、肝臓は機能を維持することができます。

こちらの図がわかりやすいですね(中学校のときに見た覚えありますね)。

選択肢①の「冠動脈」とは、心臓の筋肉に血液を送っている血管のことを指し、大動脈弁のすぐ上方にある上行大動脈から分枝し(この時点で、肺動脈よりも酸素量は多いだろうと想定可能)、大きく左前下行枝、左回旋枝、そして右冠動脈の3本あり、特に左心室に多くの血液を送っています。

冠動脈が何らかの原因で狭窄、あるいは閉塞した状態によって引き起こされる疾患を、虚血性心疾患と呼びます。

通常、毛細血管はどこかが詰まってもほかの動脈から血液が得られるようになっていますが、冠状動脈にはこうした応援の血管がありませんので、冠状動脈が狭窄や閉塞を起こすと、心筋に血液が流れなくなり、障害が現れることになるわけです。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は「酸素含油量が最も少ない血液が流れる血管」には該当しないと判断でき、選択肢⑤が該当すると判断できます。

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