公認心理師 2022-88

脈絡叢で産生され、中枢神経系の保護と代謝に関わるものを選択する問題です。

各体液等の役割を把握していることが求められています。

問88 脈絡叢(みゃくらくそう)で産生され、中枢神経系の保護と代謝に関わるものとして、適切なものを1つ選べ。
① 血液
② 粘液
③ 組織間液
④ 脳脊髄液
⑤ リンパ液

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なし

解答のポイント

各体液等の役割を把握している。

選択肢の解説

① 血液

ヒトを含む多細胞生物は、内部環境の恒常性を維持するために血液循環を必要とします。

血液は体重の約8%を占め、赤血球・白血球・血小板から成る細胞成分と血液成分の血漿から成っています(血液細胞自体は「骨髄」で作られる)。

血液は、呼吸(血液ガス、すなわち酸素および二酸化炭素の運搬)、栄養の運搬(糖、脂質、アミノ酸、タンパク質等のエネルギー基質)、各種ホルモンなど作用物質の運搬(全身の情報・指令伝達)、防御(凝固・線溶系、免疫)、体温調整、排出、組織で産生された代謝老廃物を肺、腎臓・肝臓・皮膚・腸管などの器官に運搬する、代謝産物運搬、体内に分布する化学受容器、圧受容器に適合刺激を与える、体内の酸と塩基の平衡を維持してpHを調節する、水分代謝を調整し、血圧や組織液の浸透圧などをコントロールする、など様々な役割を担っています。

一般には、心臓のポンプ機能で血管内を循環することにより、全身の細胞に外界から得た酸素・栄養素を与え、細胞から生じた二酸化炭素・老廃物を運び去って外界へ排出するという役割が主であると言ってよいでしょう。

上記の通り、血液は本問の「中枢神経系の保護と代謝に関わるもの」とは言えないことがわかります。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② 粘液

粘液細胞は、粘液腺及び混合腺に存在し、粘性の高い糖たんぱく質であるムチンを分泌し、食塊や粘膜の表面を滑らかにします。

粘液は、生物の体表を物理・化学的に保護する障壁として働く(ヌタウナギが大量の粘液を出す、あの感じ)ほか、保水(ナメクジやカタツムリなどの体表の粘液は水の蒸散を抑える)、捕食、物質輸送(鼻や口から気道に入り込んだ異物はこの粘液層によって絡め取られ、ベルトコンベアのように輸送されて排除される)、感覚の補助など、状況に応じて多様な機能を持っている。

このことからも、粘液は本問の「中枢神経系の保護と代謝に関わるもの」とは言えないことがわかります。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 組織間液

人体の重量の60%は水溶液(体液)であり、細胞内液(体液のうち細胞内に存在するもの)と細胞外液から成っています。

細胞は、体内を循環する細胞外液から酸素や栄養素を受け取り、エネルギー消費によって代謝・産生された老廃物を体外に排出することで活動しています。

細胞外液は、血管内の血漿(体重の5%)と血管外で細胞間隙を満たす間質液(組織間液:体重の15%)から成り、両者は毛細血管壁で仕切られています。

組織間液は細胞と細胞の間にある水分で、蛋白質を含まない血清とほぼ同じ成分組成です(血管壁が分子や粒子の大きい蛋白質などを透過させないから)。

ちなみに、浮腫はこの間質に水分が貯留した状態をいいます。

血液により運ばれた酸素やタンパク質などの物質は毛細血管壁を介して組織間液へと拡散した後、組織間液から組織の細胞へと拡散していく機能を持ちます。

このように、組織間液は本問の「中枢神経系の保護と代謝に関わるもの」とは言えないことがわかります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 脳脊髄液

脳脊髄液の70%は側脳室と第三・第四脳室にある脈絡叢から、18%は脳の毛細血管から分泌され、残りの12%は代謝産物としての水になります。

脳席部位液は側脳室からモンロー孔を経て第三脳室へ、さらにシルビウス中脳水道を通って第四脳室へ行き、ここからルシュカ孔とマジャンディー孔を通って、くも膜下腔に出た後、一部は下行して脊髄腔循環し、一部は上行して脳表面を覆うくも膜下腔に出ます。

くも膜の一部は脳硬膜を貫いて硬膜静脈洞内に突出しくも膜絨毛で覆われたくも膜下腔に出た脳脊髄液はこのくも膜絨毛から静脈中に排出されます。

このように、脳脊髄液は脳室系の脈絡叢から産生される廃液であって、脳の水分含有量を緩衝したり、形を保つ役に立っています。

脳脊髄液の異常として臨床で最初に見つかるのは、頭蓋内圧の上昇であり、決まった体積しか入らない頭蓋内に、ないはずのものが新たに加わると、脳脊髄液に高い圧力がかかり、同時に脳の実質も圧迫されて、頭痛、嘔吐、痙攣、徐脈、精神症状、視神経乳頭の浮腫・鬱血、外転神経の麻痺などの所見を呈することになります。

脳圧亢進の原因として、脳脊髄液が頭蓋内にたまることを挙げられ、そのうちもっとも代表的なものが水頭症になります。

これらの内容は、「脈絡叢で産生され、中枢神経系の保護と代謝に関わるもの」という説明に合致するものと考えられます。

よって、選択肢④が適切と判断できます。

⑤ リンパ液

リンパ液は、毛細血管の非常に薄い壁を通過して細胞と細胞の間の空間に出ていく液体から作られます。

その液体の大部分は毛細血管に再吸収されますが、残りはリンパ管に流れ込み、最終的に静脈に戻されます。

リンパ液には、タンパク質・ミネラル・栄養素など組織への栄養補給につながる物質、損傷した細胞・がん細胞・組織液に入り込むことのある異物(細菌やウイルスなど)などが含まれます。

リンパ節は、リンパ液が集まる多数の拠点ですが、すべてのリンパ液は要所要所に配置されたリンパ節を通過していき、そこではリンパ液から損傷した細胞、がん細胞、異物がこし取られます。

リンパ節には、損傷した細胞、がん細胞、感染性微生物、異物などを飲み込んで破壊する特殊な白血球(リンパ球やマクロファージなど)も存在しており、リンパ系は損傷した細胞を体から排除し、感染やがんの拡大を阻止するという重要な機能を果たしています。

このように、リンパ液は本問の「中枢神経系の保護と代謝に関わるもの」とは言えないことがわかります。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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