公認心理師 2022-19

ホームズ&レイの社会的再適応評価尺度に関する問題です。

全部は覚えていなくても、やはりLCU得点の高いイベントは把握しておくことが大切です(クライエントがそういう事態になったときに、どれくらい負担なのかを想像しやすいでしょう)。

得点の順位を知らなくても、この中で最もストレスフルなイベントはどれかを考えれば良いわけですから、理解しやすいだろうと思います。

問19 T.Holmesらの社会的再適応評価尺度において、LCU得点〈Life Change Unit score〉が最も高く設定されているライフイベントを1つ選べ。
① 親友の死
② 近親者の死
③ 配偶者の死
④ 本人の怪我や病気
⑤ 経済状態の大きな変化

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解答のポイント

T.Holmesらの社会的再適応評価尺度においてLCU得点の高いライフイベントを把握している。

選択肢の解説

① 親友の死
② 近親者の死
③ 配偶者の死
④ 本人の怪我や病気
⑤ 経済状態の大きな変化

1960年代後半に、生活環境の変化や生活上の出来事と心身の疾患との関連性について検討した生活ストレス研究を契機として、ストレスに関わる心理社会的要因を明らかにしようとする研究が盛んに行われました。

ホームズ&レイは、生活上の重大な出来事によって引き起こされた生活様式の変化に再適応するまでの労力が心身の健康に影響を及ぼすという考え方に基づいて、社会的再適応評価尺度を作成、個人のストレスレベルを測定しようとしました。

この尺度は、生活上の何らかの変化をもたらす出来事が記述された43の項目からなり、各項目には出来事の重大さに応じて重みづけ得点が与えられています(以下がその項目と得点になります)。

順位ライフイベントLCU得点









10
11
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13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
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28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
配偶者の死
離婚
夫婦別居生活
拘留
親族の死
個人の怪我や病気
結婚
解雇・失業
夫婦の和解・調停
退職
家族の健康上の大きな変化
妊娠
性的障害
新たな家族構成員の増加
仕事の再調整
経済状況の大きな変化
親友の死
転職
配偶者との口論の大きな変化
1万ドル以上の抵当(借金)
担保、貸付金の損失
仕事上の責任の変化
息子や娘が家を離れる
親せきとのトラブル
個人的な輝かしい成功
妻の就職や離職
就学・卒業
生活条件の変化
個人的習慣の修正
上司とのトラブル
労働条件の変化
住居の変化
学校を変わる
レクリエーションの変化
教会活動の変化
社会活動の変化
1万ドル以下の抵当(借金)
睡眠習慣の変化
団欒する家族の数の変化
食生活の変化
休暇
クリスマス
些細な違反行為
100
73
65
63
63
53
50
47
45
45
44
40
39
39
39
38
37
36
35
31
30
29
29
29
28
26
26
25
24
23
20
20
20
19
19
18
17
16
15
15
13
12
11

過去一年間の得点の合計が一定の基準を超えると心身疾患に罹患する可能性が高まることが報告されていますが、可能性の重大さの評価の個人差が反映されていないこと等が本研究の問題点と言えます。

1年間の合計点数が300点を突破した人のうち、79%は翌年に何らかの身体疾患を訴えており、200~299点の層では51%に、150~199点では39%までに減少していることから、ストレスの蓄積と身体疾患を訴える頻度は比例することが明確になりました。

さて、上記を踏まえて挙げられている選択肢のLCU得点を見ていくと以下の通りです。

選択肢① 親友の死:37
選択肢② 近親者の死:63
選択肢③ 配偶者の死:100
選択肢④ 本人の怪我や病気:53
選択肢⑤ 経済状態の大きな変化:38

このように、Holmesの社会的再適応評価尺度においてLCU得点が最も高く設定されているのは「配偶者の死」であることがわかりますね。

奥田英朗の「我が家のヒミツ」の「手紙に乗せて」は、妻を亡くしたおじさん同士の手紙のやり取りの物語ですが、私はこれが結構好きです。

この中に「この歳になって伴侶を失うというのは、自分の人生の半分を失うのと一緒なんだよ。ぼくは定年後の人生設計が全部吹き飛んだ。これは大変なショックだ」という一節があります。

妻を亡くしたことのない私にはピンとこないところがありますが、きっとそういうものなのだろうという感じもあります。

いずれにせよ、配偶者を亡くすというのは大きな負担になるというのは想像に難くありませんね。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。

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