公認心理師 2023-11

迷走神経反射に関する問題です。

興奮したときとそうでないときで弁別できそうな感じがあるので、知らなくても解きやすい問題だったかもしれませんね。

問11 迷走神経反射によって起こる現象として、最も適切なものを1つ選べ。
① 意識の喪失
② 顔面の紅潮
③ 血圧の上昇
④ 脈拍の増加
⑤ 脳血流の増加

解答のポイント

迷走神経反射の概要を把握している。

選択肢の解説

① 意識の喪失
② 顔面の紅潮
③ 血圧の上昇
④ 脈拍の増加
⑤ 脳血流の増加

迷走神経反射は厚生労働省のこちらのサイトにもある通り、コロナワクチン接種時の注意点として挙げられていますね(正確には、注射するときに起こりやすいだけなので、コロナワクチン自体の問題ではないのですけど)。

迷走神経反射(血管迷走神経反射)とは、長時間の立位や座位、強い痛み、疲れ、ストレスなどをきっかけとして生じる心拍数の減少や血圧の低下のことです。

ヒトの体は交感神経と副交感神経からなる自律神経によって支配され、活動しているときに交感神経が働き、心身がリラックスしているときに副交感神経が働いており、この2つの神経が状況に応じて切り替わることで体の状態を調整しています。

交感神経・副交感神経については「公認心理師 2020-129」などに詳しいので参照にしておくと良いでしょう。

迷走神経は副交感神経の1つで、迷走神経が刺激されるとリラックス状態に切り替わり、急激に心拍数が減少し、血圧が低下したりして脳が貧血状態となります。

これによって、血の気が引く、気分が悪い、冷や汗、めまいなどの症状が数分間続き、最終的には失神に至ります。

意識を保つには脳への十分な血流量が必要なため、急激に心拍数や血圧が低下すると脳への血流量が減ってしまい、その結果意識を失うことになるのです。

迷走神経が反射的にはたらく要因として、長時間の立位・座位姿勢、痛み、恐怖、ストレス、疲労、環境(人混みの中・閉鎖空間)などが挙げられ、学校の朝礼や通勤時の満員電車、注射を打つときなどによくみられます。

上記にもある通り、迷走神経反射によって脳の血流量が低下すると、血の気が引く、気分が悪い、吐き気・嘔吐、あくびが出る、急に眠くなる、冷や汗、頭が重い、頭痛、腹痛、視界がぼやける、視界が暗くなるなどの症状が現れ、これを前駆症状と呼びます。

これらの症状が数分間続くことが典型的で、このような症状の後、気の遠くなるようなめまいや失神が起こることがありますが、横になって休めば脳の血流がよくなって症状が改善し、意識も通常1分以内に回復するので、脳の後遺症が起こることはありません。

気をつけねばならないは、失神をきっかけに転倒して地面に頭をぶつけたりすることがあることであり、前駆症状が現れたらなるべく早く休むことが大切です(休む際には座らず、きちんと横になることが大事です)。

起立性調節障害をはじめ、失神が生じる病気は数多くあるので、それらとの弁別が重要になります(このような病気が隠れていないかを調べるために、心電図、24時間ホルター心電図、運動負荷心電図、心臓超音波検査、血液検査、尿検査などが行われることもあります)。

これらを踏まえると、選択肢①の「意識の喪失」が迷走神経反射によって起こる現象と言え、それ以外の「顔面の紅潮」「血圧の上昇」「脈拍の増加」「脳血流の増加」については副交感神経優位の状態とは逆の内容となっていますね。

特に「脳血流の増加」については、「意識の喪失」と相反するので真っ先に除外しておきたいところです。

以上より、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

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