公認心理師 2018-88

視床下部の機能に該当する選択肢を選ぶ問題です。
こちらも重要なのが、正答以外の選択肢がどの部位の機能であるかを理解しながら解くことができることです。

解答のポイント

脳の各部位の機能を把握していること。

選択肢の解説

『②摂食行動の中枢』

摂食行動の中枢は視床下部にあります。
視床下部は間脳の下半分に位置し、本能行動、自律神経、内分泌、免疫機能の調節に中心的な役割を担っています。

視索前野、前視床下野は雄の性行動、体温、睡眠、免疫調節を司っています
視交叉上核は概日リズムを、失傍核および視索上核は神経分泌による内分泌調節を司ります。
腹内側核は満腹中枢及び雌の性中枢でもあります。

視床下部の外側に摂食中枢が存在しており、食欲を促す働きをします。
刺激するといつまでも食べることを止めることができなくなり、破壊されると空腹でも食べなくなります。
内側にある内腹側核が満腹中枢であり、刺激すると空腹でも食べることができなくなり、破壊すると満腹でも食べ続けます。

摂食中枢と満腹中枢の2つを反応させるのは血液中のブドウ糖値(血糖値)です。
血中のブドウ糖が少なくなると、摂食中枢が刺激され、摂食促進の命令を出し、それが前頭連合野に伝わります。
血中のブドウ糖が多くなると、満腹中枢が刺激され、摂食抑制の命令を出し、それが前頭連合野に伝わります。

第一性欲中枢では、性交渉を求める機能(性交渉をしたいという欲求)を受け持ち、男性は女性の2倍大きいです。
第二性欲中枢では、性行為を行うための機能を受け持ちます。
男性の場合、空腹時に食欲を促す摂食中枢のそばにあるので、空腹による生命の危機に瀕した時、性欲が高まることがあり、女性の場合、満腹中枢のそばにあるので、失恋してやけ食いするのはそのためではと言われています。

上記の通り、摂食行動の中枢は視床下部にあると言えます。
よって、選択肢②が正しいと判断できます。

『①運動協調の調節』

主として運動の協調を司るのは小脳です。
小脳に損傷を受けると、運動はぎくしゃくした協調性に欠けたものになります。
新しい運動反応の学習に重要な部位です。

小脳と大脳の前部との間の神経回路は、言語・計画・論理に関連しており、小脳は運動だけでなく、高次の精神機能の統御と協調にも役割を果たしているとされています。

小脳虫部は体幹および眼球の運動制御、傍虫部は近位部、片葉は四肢(特に手・指)の運動制御に関係します。
特に前庭小脳は姿勢の制御に重要な役割を果たします。

よって、選択肢①は小脳の機能と判断でき、誤りとなります。

『③対光反射の中枢』

対光反射は、瞳孔反射のひとつで、視野の外から瞳孔に光を敏速にいれたとき、反射的に瞳孔が縮瞳し、光が弱まるか消失すると瞳孔が散瞳する反応を指します。

対光反射を司っているのは中脳になります。
中脳は視床下部及び橋に挟まれた領域です。

中脳は、瞳孔反射(対光反射や近距離反射)、前庭動眼反射(体動時の視野のブレを抑える)、姿勢反射(倒れかかった時に頭部や身体を正常に立て直し防御体制を取らせる)、歩行運動などの運動調節に関与しています。

動眼神経障害及び中脳・橋部障害により対光反射は消失します。
対光反射が消失し、輻輳反射が健在であればこれをアーガイル・ロバートソン徴候といい、進行麻痺、脊髄ろう、脳梅毒などの中枢神経系梅毒に特有の症状であり、脳炎 脳腫瘍 糖尿病 慢性アルコ-ル中毒でみられることもあります。
対光反射は消失または微弱だが、輻輳反応はきわめて徐々に起こり正常以上の縮瞳を示し、一般に正常より大きい瞳孔を示すとされています。
若い女性の片眼に多い瞳孔の変化をアデイー症候群と言います。

以上より、選択肢③は中脳の機能と判断でき、誤りとなります。

『④体性感覚の中継』

体性感覚の中継を行っているのは視床になります。
視床は、大脳皮質、大脳辺縁系、大脳基底核に囲まれた間脳のうち、背側部を占める領域で、腹側に視床下部が位置します。
視神経の上に位置するということで「視床」という名称となります。

大脳皮質と皮質下領域の間を結ぶ感覚および運動系信号伝達の中継核として働いています
感覚系の中継核としては視床後部の外側膝状体が視覚信号を、内側膝状体が聴覚信号を、後腹側核が体性感覚信号をそれぞれの大脳皮質感覚野へ伝え、各感覚信号の受容と識別を行っています。
外腹側核は、小脳や大脳基底核の運動系の情報を皮質運動野に伝えます。

以上より、選択肢④は視床の機能と判断でき、誤りとなります。

『⑤短期記憶の形成』

短期記憶の形成は海馬にて行われます。
海馬は側脳室下角の底面に突き出す神経構造で、断面がタツノオトシゴに似ています。
大脳皮質のうち発生的に古い古皮質に属し、細胞構築は単純で規則的です。

大脳辺縁系としての機能と記憶における役割が知られています。
海馬や側頭葉が破壊されると、新しい記憶ができなくなります。

それは海馬が脳における情報の入り口という機能を持つためですが、この貯蔵庫は一時的に情報を保存するだけで容量が小さく、それが短期記憶の貯蔵庫にとどまる限りは、すぐに忘れてしまいます
その後海馬で必要なものや印象的なものと認識を得たものが、長期記憶の保存先である大脳皮質にファイルされることになります。

海馬は長期記憶を蓄積しないが、長期記憶を作り出す際にも重要な役割を果たしています。
大量に集まった情報は、まず海馬でその情報が必要か不必要かの選別が行われ、必要なものだけが大脳皮質に保管されます。
また、インパクトのある出来事は記憶に残りやすく、喜びや恐怖の感情などは、海馬の近くの扁桃体という器官の働きが影響しており、喜怒哀楽といった感情が伴うと覚え易くなるとされています。

こうして、海馬が受ける刺激が強ければ強いほど長期記憶になりやすいわけです。
海馬に蓄えられた記憶を何度も出し入れする事で、記憶が定着しやすくなります(リハーサル、ですね)。

以上より、選択肢⑤は海馬の機能と判断でき、誤りと言えます。

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