公認心理師 2023-55

クロニンジャーの理論に関する問題です。

名前のインパクトが大きい人ですが、他の理論と同じように覚えていけば良いです。

問55 C. R. Cloninger が提唱した気質‐性格理論の内容として、適切なものを2つ選べ。
① 気質次元の特性は、遺伝規定性が強い。
② 固執は、個人の行動を抑制させるパーソナリティ特性である。
③ 新奇性追求の特性が高い人は、衝動的な行動を起こしやすい。
④ 性格は、他者志向、協調及び自己超越の3次元から構成されている。
⑤ 損害回避の特性が高い人は、他者評価によって行動を維持しやすい。

解答のポイント

クロニンジャーの「気質‐性格理論」の概要を把握している。

選択肢の解説

① 気質次元の特性は、遺伝規定性が強い。
② 固執は、個人の行動を抑制させるパーソナリティ特性である。
③ 新奇性追求の特性が高い人は、衝動的な行動を起こしやすい。
④ 性格は、他者志向、協調及び自己超越の3次元から構成されている。
⑤ 損害回避の特性が高い人は、他者評価によって行動を維持しやすい。

クロニンジャーは、パーソナリティを「気質」と「性格」の2つから構成されると考えました。

気質とは、遺伝性で、幼児期から顕われ、物事を認知したり習慣を形成する際に、本人の思考とは無関係に影響を与えるものとされています。

気質には以下の4つをクロニンジャーは規定しています。

  • 新奇性探求:行動の活性化と関わる。新しいものに向かっていきやすい傾向のこと。高い場合は衝動的・興奮しやすい・浪費家である等の傾向があり、低い場合には慎重・倹約・現状維持などが特徴として示されている。ドーパミンと関連があるとクロニンジャーは考えた。
  • 損害回避:行動の抑制に関わる。高い場合は、用心深い・予期不安・疲れやすい等の傾向が、低い場合には、危険を顧みない・挑戦的などの特徴が示されている。セロトニンと関連があるとクロニンジャーは考えた。
  • 報酬依存:社会的関係の構築の維持や持続と関わる。高い人は情にもろい・賞賛に依存する等の傾向が、低い人は社会的関係に無関心といった特徴が示されている。ノルエピネフリンと関連があるとクロニンジャーは考えた。
  • 固執:その名の通り、行動の固執に関わる。高い場合は粘り強い・勤勉とされているが、低い場合は飽きやすい・怠惰などの特徴となる。

クロニンジャーは気質の組み合わせによってパーソナリティを記述できると考えました(以下のようなモデルになります。こちらのサイトから転載)。

例えば、新奇探求性が高く、損害回避が低く、報酬依存も低い人は、ちょっとした刺激があるとそちらに走っていき、ブレーキがかからず、人にも関心がないので助言も耳に入らず、危ない目に遭うかもしれないし、あるいは、そうした傾向によって思わぬ成功を得るかもしれません。

このような人のことを「冒険家」と呼んでいますが、このように、組み合わせによって8つのタイプが記述できるとクロニンジャーの理論では考えているわけです。

ただし、クロニンジャーは、パーソナリティは上記の気質だけでは記述できず、本人の意思や環境などさまざまな要因によって変容するものとし、性格の次元を加えました。

性格には、以下の3つをクロニンジャーは規定しています。

  • 自己志向性:個人が選択した目的や価値観に従って、状況に合う行動を調節する能力のこと。高い場合は責任感がある、行動選択及び実行の傾向が強く、低い場合は目的の欠如や非難が多い等の傾向が示されている。
  • 協調:他者受容に関する能力のこと。高い場合は共感的で寛容であるとされ、低い場合は利己的で狭量な傾向が示されている。
  • 自己超越:全てのものは全体の一部であるという意識状態と関連し、宇宙とのつながりを感じるような側面を含む。高い場合は観念的・理想主義・想像力豊かとされ、低い場合は現実的・自意識過剰な傾向が示されている。

そして、性格においても8つのタイプを想定していますね。

上記の右側が性格の8つのタイプを示したものになります(こちらのサイトから転載)。

クロニンジャーは、気質と性格が相互に影響し合ってパーソナリティが形成されると考えました。

こんな感じのイメージです(こちらのサイトから転載)。

気質によりある性格が顕現しにくいなど、パーソナリティは遺伝的に規定される面もありますが、その後の発達過程で、どのような環境でどのような経験をするかによって気質も調節されるということは大切な点です。

例えば、自分が少し刺激に向かっていきやすい気質であると自覚することで、行動を適切にコントロールすることも可能になる等、自分を知り、いかに振る舞うかなどを考える上で、クロニンジャー理論は多くの示唆を与えてくれるものと言えます。

上記を踏まえ、各選択肢を見ていきましょう。

選択肢①の「気質次元の特性は、遺伝規定性が強い」と、選択肢③の「新奇性追求の特性が高い人は、衝動的な行動を起こしやすい」については、そのまま正しい内容となっていますね。

選択肢②の「固執は、個人の行動を抑制させるパーソナリティ特性である」は誤りで、行動の抑制と関連するのは「損害回避」となっています(「固執」については、行動の固着に関わるものとされていますね)。

選択肢⑤の「損害回避の特性が高い人は、他者評価によって行動を維持しやすい」ですが、他者評価など社会的な関係と関連するのは「報酬依存」とされています。

選択肢④の「性格は、他者志向、協調及び自己超越の3次元から構成されている」ですが、正しくは「自己志向」「協調」「自己超越」の3つから構成されていますから、微妙な用語の変換での引っかけと言えます。

以上より、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢①および選択肢③が適切と判断できます。

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