公認心理師 2023-92

Skinnerの行動理論に基づく介入に関する問題です。

「ポイントを貯めること」というのが要点になりますね。

問92 B. F. Skinnerの行動理論に基づく介入で、ポイントを貯めることで行動を強化する技法として、適切なものを1つ選べ。
① 三項随伴性
② チェイニング
③ フェイディング
④ レスポンスコスト
⑤ トークンエコノミー

解答のポイント

スキナーの理論から派生したさまざまな概念を把握している。

選択肢の解説

① 三項随伴性

スキナー箱の実験のように「弁別刺激(ブザー)」-「反応(レバーを押す)」-「反応結果(餌が得る)」の3つの項からなる連鎖のことを「三項随伴性」と呼びます。

応用行動分析などにおける三項随伴性では「問題を引き起こす先行刺激」「刺激に対するClの反応(標的となる問題行動)」「その反応から引き起こされる後続刺激(=結果)」という枠組みで、標的行動と環境との関連性のアセスメントをしていきます。

スキナーによる徹底的行動主義の主要な概念であり、行動と環境との相互作用を分析する枠組みと言えます。

一般に「随伴性」とは、各項の間に必ずしも因果関係が存在することを意味しませんが、三項強化随伴性という場合には、広く行動と環境との関係を指すことが慣例となっています。

このように、三項随伴性はスキナーの行動主義における主要な概念ではありますが、これ自体が何かの技法を指すというわけではなく、あくまでも行動分析の枠組みに関する概念になります。

こうした視点を以て、特定の行動に対して、当人にとって望ましい結果や望ましくない結果を共わせることで、その行動の生起頻度を変化させていくわけです。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② チェイニング

応用行動分析では、行動を分析し、一つの行動に含まれる細かい行動を把握していきます。

例えば、「手を洗う」という行動であっても、石鹸を取る、手のひらをこする、指の間をこする、手の甲をこする、水を出す、水で流す、水を止める、手を拭くなどの細かい行動で構成されているわけです。

このような行動のつながりのことを「行動連鎖」と呼び、一つひとつの行動につながりを作っていくことを「連鎖化:チェイニング」と呼びます。

スモールステップに分けて、それぞれにつながりを持たせていくようなイメージです。

以下のようないくつかのアプローチがあります。

  1. 順向連鎖化:
    いくつかあるステップの最初から順に教えていく方法。最初から1つずつやらせていく。
  2. 逆向的連鎖化:
    最後のステップから教えていく方法。例えば、ステップが7つある場合、1~6まではカウンセラーが行い、最後の7のステップだけをクライエントが行う。一人できちんとこのステップができるようになったら、1~5まではカウンセラーが、残りの6から7をクライエントが行う。このようにして段々とクライエントが一人で行う部分を後ろから前に増やしていく。
  3. 総課題提示法:
    全てのステップを一気に教える方法。それぞれのステップで褒める等の強化を行い、最後のステップに対してはより大きな強化子を準備するのが一般的。

こうしたチェイニングの技法を踏まえると、本問の「ポイントを貯めることで行動を強化する技法」とは異なることがわかりますね。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

③ フェイディング

フェイディングとは、ある刺激がある反応の弁別刺激となっている時、その弁別刺激の機能をその刺激とは別の刺激に移行させる手続きの一つです。

現行の弁別刺激から、ある刺激要素を徐々に除去あるいは付加することで移行が行われます。

溶化法およびフェイディングと呼ばれ、刺激を除去する場合を溶暗、刺激を付加する場合を溶明と呼び、この2つを組み合わせることで多様な刺激への移行が可能となります。

こうした手続きを刺激溶化と呼び、適切な行動を引き起こすために、最初は教示、身振り、身体的手助けなどを行い、それらを徐々に減らしていく手続を「プロンプティングとフェイディング」あるいは「プロンプト溶化」と呼びます。

例えば、プログラム学習では、学習者に誤りを生じさせないようにするために、手がかり刺激を複数与えて、目指す刺激条件と反応との結びつきを図りますが(キューイング技法)、それに対して、今度はそれらの手がかり刺激を少しずつ取り去りながら、目標とする一定の刺激と反応のみの結びつきを確実にしていくことをフェイディングと呼ぶわけです。

認知的徒弟制(こちらで出題あり)では、学習者が独り立ちできるよう徐々に答えに関するヒントを減らし、指導者が手を退く段階として設定されていますね。

以上がフェイディングになりますが、これは本問の「ポイントを貯めることで行動を強化する技法」とは異なることがわかりますね。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ レスポンスコスト
⑤ トークンエコノミー

精神障害患者の施設や学校の教室など、比較的小規模の集団において、代用貨幣であるトークンを流通させることによって、望ましい行動の形成や維持を試みる行動療法の技法の一つがトークンエコノミー法です。

トークン経済(エコノミー)が機能する基本原理は、オペラント条件づけの強化・弱化といった行動増減の原理に基づいています。

患者や児童が望ましい行動を取ることで、ポーカーチップなど有形な条件強化子であるトークンが提供されます(反応が先にあって、強化を行うのでオペラント条件づけですね)。

トークンは一定の価格で、さまざまなバックアップ強化子(お菓子や嗜好品などの特定の物品、外出やテレビ視聴などの特定の活動)との交換が可能になります。

ケンカやカンニングなど望ましくない行動がとられた場合には、トークンが没収されることもあるわけですが、このトークンを没収する手続きのことを「レスポンスコスト」と呼びます。

レスポンスコストは、問題行動への対価を支払うという点で単独で用いられている場合もありますが(例えば、スピード違反したら減点されるなど)、トークンエコノミーと併用されることが多い技法の一つになります。

1970年代に矯正施設、病院、学校などにおいて盛んに活用されましたが、参加者の自発的な同意に基づかない点など、参加者の権利に関する倫理的な問題の指摘もあり、次第に用いられることは少なくなっています。

ただし、特定の対象に対して(発達障害が多いかな?)、望ましい行動を取ったときに何かしらの報酬が与えられ、それを集めると何かが出来上がる(シールを集めて、それが集まると一つの絵になる。その絵が本人の好きなキャラクターである、など)といったやり方については、一般的に活用されることが多いという印象があります。

以上を踏まえれば、本問の「ポイントを貯めることで行動を強化する技法」はトークンエコノミーであり、レスポンスコストはそれと対となる技法であると言えますね。

よって、選択肢④は不適切と判断でき、選択肢⑤が適切と判断できます。

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