公認心理師 2023-130

公認心理師法に関する問題です。

改正内容を把握していなければ解けないようになっていて、意外と厄介だなと感じました。

問130 公認心理師法に規定されている内容として、適切なものを2つ選べ。
① 被保佐人に該当する者は公認心理師となることができない。
② 公認心理師としての職務から離れた場合に守秘義務は免除される。
③ 公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。
④ 公認心理師としての登録は、公認心理師試験に合格すれば自動的に行われる。
⑤ 資質向上の責務は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するためである。

解答のポイント

公認心理師法の内容を改正部分も含めて把握している。

選択肢の解説

① 被保佐人に該当する者は公認心理師となることができない。

こちらは欠格事由に関する内容ですね。


(欠格事由)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
一 心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
四 第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者


こちらの内容、以前と変わっていることはご存じでしょうか?

以前は第3条第1項に「成年被後見人又は被保佐人」が挙げられており、本選択肢は以前であれば適切な内容でした。

しかし、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号)」によって公認心理師法第3条第1号も改正され、成年被後見人等を一律に欠格事由としていた規定が改正されました。

改正内容に相当する「心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者」は、文部科学省令・厚生労働省令で「精神の機能の障害により公認心理師の業務を適正に行うに当たって必要な認知,判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定義づけられています。

従来は、成年被後見人・被保佐人であるというだけで機械的に欠格事由とされていたことに対し、個別的な審査を行い、業務を行うことができないと判断された場合に限り欠格とする「個別審査規定」となりました。

ですから、後見人や保佐人であること=公認心理師の欠格事由とはならないということになります(もちろん、その大半は個別的な審査で欠格とされるのでしょうが)。

以上より、選択肢①は不適切と判断されます。

ちなみに、この改正によって「公認心理師 2018追加-1」および「公認心理師 2019-50」などは解説が変わってくることになります。

② 公認心理師としての職務から離れた場合に守秘義務は免除される。

こちらは秘密保持義務に関する事項ですね。


(秘密保持義務)
第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。


上記の通り、「公認心理師でなくなった後においても、同様とする」とあります。

本選択肢の内容は「職務から離れた場合」ではありますが、公認心理師でなくなった後も適用される秘密保持義務が「職務から離れた」という程度で免除されるわけがありません。

なお、秘密論は統合失調症の領域で1960年代~1980年代にかけて、土居健郎先生や神田橋條治先生などによって展開されましたが、自身の秘密を守るということはその人の内に「誰からも侵害されない領域」を作ることになります。

ですから、秘密をもつということは人間にとって重要なことになるわけですが、その秘密の内容によっては持ち重りをするということも出てくるわけです。

その秘密を語られるカウンセラーもそれなりの重みを感じることになるわけですが、この重みと一生付き合っていくのが我々の仕事に課せられた責務と言えるでしょう。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

こちらは名称の使用制限に関する規定ですね。


(名称の使用制限)
第四十四条 公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。
2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。


上記の通り、「公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない」と選択肢そのままの形で規定がなされておりますね。

おさらいですが、公認心理師は名称独占資格であり、この第44条はその規定になります。

こちらに違反した場合、「三十万円以下の罰金」に処されることになります(同法第49条)。

ただし、資格がなく公認心理師の仕事をすることには罰則規定はなく、ここが業務独占資格と名称独占資格との大きな違いとなっています(ちなみに、作業療法士、理学療法士なども名称独占資格になりますね)。

「業務独占資格」としては医師があり、これは医師法第17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」とされていることからも明らかです(医師法第17条に違反すれば「三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(同法第31条第1項)」となります)。

以上より、選択肢③は適切と判断できます。

④ 公認心理師としての登録は、公認心理師試験に合格すれば自動的に行われる。

こちらは登録に関する規定になりますね。


(登録)
第二十八条 公認心理師となる資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿に、氏名、生年月日その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。
(公認心理師登録簿)
第二十九条 公認心理師登録簿は、文部科学省及び厚生労働省に、それぞれ備える。
(公認心理師登録証)
第三十条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録をしたときは、申請者に第二十八条に規定する事項を記載した公認心理師登録証(以下この章において「登録証」という。)を交付する。


上記からも明らかなように、「公認心理師となる資格を有する者」と「公認心理師」は違います。

公認心理師試験に合格した段階では「公認心理師となる資格を有する者」に過ぎず、公認心理師ではありません。

「公認心理師となる資格を有する者(≒公認心理師試験に合格した者)」が文部科学省・厚生労働省令で定める事項の登録を受けることで「公認心理師」になれるわけです。

この点は、第2条の冒頭にも「この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう」とあるように、公認心理師とは第28条の登録を受けないとなれないものです。

臨床心理士にこだわりのある人、公認心理師の在り様や仕組みに疑問を感じている人、だけど、職務上公認心理師資格は取得しておきたい人などでは、「公認心理師となる資格を有する者」のまま留まっている人もいますね。

その人がそれで良ければ(社会的な損失等を受けなければ)、そういう状態のまま留まるということも問題ないわけです(何年かしたら合格が取り消されるということもない。今のところは)。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 資質向上の責務は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するためである。

こちらは資質向上の責務に関する規定になりますね。

関係する第2条も併せて載せておきます。


(資質向上の責務)
第四十三条 公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

(定義)
第二条 この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。
一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
四 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。


第2条にあるような業務を行っていくわけですが、この業務の内容は環境の変化や文化、社会の風潮などによって変わってきます(でなければ、社会精神医学という分野は存在しない)。

これらの変化に適応していかないと適切な支援(第2条の内容)は難しいので、第43条に「国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため」という規定が定められているわけですね。

以上より、選択肢⑤は適切と判断できます。

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