公認心理師 2023-112

薬物の代謝と腸管への排出に関わる臓器を選択する問題です。

「腸管への排出」としてあるところが揺さぶりをかけてきているポイントですね。

問112 薬物の代謝と腸管への排出に関わる臓器として、最も適切なものを1つ選べ。
① 肝臓
② 心臓
③ 腎臓
④ 膵臓
⑤ 脾臓

解答のポイント

薬物の代謝および排出の仕組みを把握している。

複数ある排出のルートを把握している。

選択肢の解説

① 肝臓
② 心臓
③ 腎臓
④ 膵臓
⑤ 脾臓

薬物療法では、組織内の特定の標的部位に薬が届き、そこでその薬が作用することが必要です。

通常、薬は体内に送り込みますが(投与のプロセス)、標的部位から離れたところから入れる場合もあります。

薬は血流に乗って(吸収のプロセス)、薬を必要とする標的部位に運ばれる必要があります(分布のプロセス)。

薬には、その効果を発揮する前に体内で化学変化するもの(代謝のプロセス)、効果を発揮した後で代謝されるもの、およびまったく代謝されないものがあります。

最終段階で、薬とその代謝物(副産物)は体から除去されます(排泄のプロセス)。

患者の体重、遺伝子構成、および腎臓または肝臓の機能などの多くの要因が、これらの動態プロセスに影響する可能性があり、また、加齢による変化も、体が薬を処理する方法に影響を与えます。

本問では代謝と排出についてが問われているので、このプロセスについて詳しく見ていきましょう。

薬の代謝とは、体内で起こる薬の化学変化のことをいいます。

ほとんどの薬は、薬の代謝の主要な部位である肝臓を通過しなければなりません。

肝臓に入った後、酵素がプロドラッグ(不活性型として投与され、体内で代謝されると活性型に変化)を活性型の代謝物に変えたり、活性型の薬を不活性型に変えたりします。

薬を代謝する肝臓の主なメカニズムは、チトクロムP-450酵素という特定の酵素群を介するものであり、多くの薬の代謝速度がこのチトクロムP-450酵素群の濃度によって制御されます。

チトクロムP-450酵素群は、多くの物質(薬や食べものなど)の影響を受け、酵素群の薬を分解する能力がこのような物質によって低下すれば、その結果として薬の効果(副作用を含みます)が増します。

逆に、このような物質によって酵素群の薬を分解する能力が高まった場合、薬の効果が減少します。

こうした代謝をつかさどる酵素系は出生時には部分的にしか発達していないため、新生児では代謝が困難な薬があり、加えて、加齢に伴い酵素活性が低下するため、高齢者でも、新生児と同様に若い成人や小児のようにはうまく薬が代謝されません。

このため、新生児や高齢者では、体重当たりの投与量を若い人や中年の人よりも少なくしなければならない場合がよくあります。

薬物の排出ですが、最終的には尿として体外に排出されることになります。

大半の薬、特に水溶性の薬とその代謝物は、主として腎臓から尿中に排泄されるので、薬の投与量は腎機能に大きく依存します。

ただし、本問で問われているのは「腸管への排出」ですから、体外への排出とは別に考えねばなりません。

薬の中には、肝臓を通っても変化せず、そのまま胆汁に排泄されるものがあり、また、肝臓で代謝物に変換された後に胆汁中に排泄される薬もあります。

いずれの場合も、胆汁はその後消化管に入り、消化管から便とともに排出されるか、血液中に再吸収されて再利用されます。

肝臓が正常に機能していない場合、主に肝臓の代謝によって排泄される薬については投与量を調節する必要があります(しかし肝臓の場合は、腎機能のように、いかに良好に薬を代謝する(そしてその後排泄する)かを推定する単純な方法はありません)。

このように、腎臓は水溶性物質を排泄する主要臓器であり、胆道系は薬物が消化管から再吸収されない限り排出に寄与することになります。

一般に、腸管、唾液、汗、乳汁、および肺の排出への関与は、揮発性麻酔薬の放散を除いて小さいとされています。

薬の排出(排泄)については、こちらのサイトがわかりやすかったので引用しています(色んな排出ルートが載っているので参考になりますね)。

以上より、薬物の代謝と腸管への排出に関わる臓器は肝臓であることがわかります。

よって、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

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