公認心理師 2023-99

日常生活上の遂行機能を評価する心理検査を選択する問題です。

初出の検査も出てきていますが、正解は過去問をやっていれば解けるものになっています。

問99 日常生活上の遂行機能を評価する心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① BADS
② EQ-5D
③ IES-R
④ K6
⑤ SDS

解答のポイント

各検査の目的を把握している。

選択肢の解説

① BADS

BADSは日常生活上の遂行機能に関する問題点を検出するための検査です。

カードや道具を使った6種類の下位検査と1つの質問紙から構成されています。

各下位検査は0点~4点で評価され、全体の評価は各下位検査の評価点の合計24点満点でプロフィール得点を算出します。

ちなみに遂行機能とは、「目的のある一連の行動を有効に行うために必要な認知能力」のことを指し、「実行機能」とも言います。

あらゆる日常生活のあらゆる場面で必要となり、何かの問題を解決するために用いられる認知能力で、遂行機能には以下のような要素が含まれます。

  • 意思や目標の設定:
    会話を始めない、感情の平板化、冷蔵庫が空でも買い物に行かない、などとなる。
  • 計画の立案:
    話をまとめにくくなり、話題が飛んで核心に迫らなかったり、買い物が行き当たりばったりになるなど。
  • 目的ある行動・計画の実行:
    衝動買いが多くなるなど。
  • 効果的に行動する:
    相手が関心がなくても話し続けるなど。

BADSでは、目標の設定、プランニング、計画の実行、効果的な行動という遂行機能の4つの要素を、カードや道具を使った6種類の下位検査と1つの質問紙で検査します。

上記の通り、本問の「日常生活上の遂行機能を評価する心理検査」としてBADSは適切であると言えますね。

よって、選択肢①が適切と判断できます。

② EQ-5D

EQ-5Dは、医療技術の経済評価において質調整生存年(Quality-Adjusted Life Year; QALY)の算出に用いるためのQOL値を提供することができる質問紙です。

質調整生存年とは、疾病負荷の測定方法として一般的であり、生存における量と質の2点を評価する手法とされ、医療行為に対しての費用対効果を経済的に評価する技法として用いられています。

要するに、ある人について、完全な健康状態を1、死亡を0として、時間とともに健康状態が変化する様子を捉え、それを完全な健康状態の年数に換算したものです。

上記の水色の部分が「質調整生存年」ですね。

5項目の質問で構成(簡便で、調査時の患者負担が軽度)されており、標準化された質問で構成されるため、各国が独自に質問を加えることは不可となります。

回答結果をもとに「完全な健康=1」「死亡=0」と基準化された健康状態のスコアが算出可能になっています。

以下のような質問項目が設定されています。

  • 移動の程度
    – 私は歩き回るのに問題はない…1
    – 私は歩き回るのにいくらか問題がある…2
    – 私はベッド(床)に寝たきりである…3
  • 身の回りの管理
    – 私は身の回りの管理に問題はない…1
    – 私は洗面や着替えを自分でするのにいくらか問題がある…2
    – 私は洗面や着替えを自分でできない…3
  • ふだんの活動(例:仕事、勉強、家族・余暇活動)
    – 私はふだんの活動を行うのに問題はない…1
    – 私はふだんの活動を行うのにいくらか問題がある…2
    – 私はふだんの活動を行うことができない…3
  • 痛み/不快感
    – 私は痛みや不快感はない…1
    – 私は中程度の痛みや不快感がある…2
    – 私はひどい痛みや不快感がある…3
  • 不安/ふさぎ込み
    – 私は不安でもふさぎ込んでもいない…1
    – 私は中程度に不安あるいはふさぎ込んでいる…2
    – 私はひどく不安あるいはふさぎ込んでいる…3

以上のように、EQ-5Dは、QOLを評価するための質問票であり、医療技術の経済評価において近年利用が進んでいる質調整生存年の算出に用いるためのQOL値を提供できることが最大の特徴とされています。

ですから、本問の「日常生活上の遂行機能を評価する心理検査」に合致しないことがわかります。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ IES-R

IES-R (Impact of Event Scale-Revised)とは、 改訂出来事インパクト尺度日本語版です。

IES-Rは、PTSDの症状評価尺度として国際的に評価が高く、国内の数多くの研究で使用されています。

信頼性と妥当性を検証し、心理検査法として保険診療報酬対象の認可を得ているものです。

自由にダウンロードしてよいので、興味のある方は検索されて実際の検査項目をご覧になると良いでしょう(例えば、文部科学省のこちらのページにもあります)。

IES-Rは、PTSDの診断基準に則しており、ほとんどの外傷的出来事について、使用可能な心的外傷ストレス症状尺度です。

旧IESは侵入症状7項目、回避症状8項目の計15項目より構成されているが、IES-Rは過覚醒症状6項目を追加し、さらに旧版の睡眠障害を入眠困難と中途覚醒の2項目に分け、計22項目より構成されています。

IES-Rは災害から個別被害まで、幅広い種類の心的外傷体験者のPTSD関連症状の測定が簡便にでき、横断調査、症状経過観察、スクリーニング目的など、すでに我が国でも広く活用されています。

PTSDの高危険者をスクリーニング目的では、24/25のカットオフポイントが推奨されていますね。

上記の通り、IES-Rは本問の「日常生活上の遂行機能を評価する心理検査」に合致しないことがわかります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ K6

K6とは、うつ病や不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的としています。

2002年にKesslerらにより開発されました。

一般住民を対象としており、心理的ストレスを含む何らかの精神的な問題の程度を表す指標として利用されています。

合計点が高いほど、精神的な問題がより重い可能性があるとされています。

「神経過敏に感じましたか」「絶望的だと感じましたか」「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」「気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか」「何をするのも骨折りだと感じましたか」「自分は価値のない人間だと感じましたか」の6つの質問について5段階(「まったくない」(0点)、「少しだけ」(1点)、「ときどき」(2点)、「たいてい」(3点)、「いつも」(4点))で点数化し、合計点数が高いほど、精神的な問題がより重い可能性があるとされています。

カットオフポイントは15点以上とされていますね。

以上より、K6は本問の「日常生活上の遂行機能を評価する心理検査」に合致しないことがわかります。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ SDS

SDSの目的は、抑うつ傾向の度合いを数値化することによって客観的に判断することです。

自己評価式の抑うつ尺度であり、適用年齢は15歳以上とされています。

40点未満で抑うつ性は乏しい、40点台で軽度抑うつ性、50点台で中度以上の抑うつ性とされています(このcut off関係の情報は不要になりましたね)。

上記の通り、SDSは本問の「日常生活上の遂行機能を評価する心理検査」に合致しないことがわかります。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です