公認心理師 2024-3

説明文に合致する職種を選択する問題です。

こういう問題では、各職種の法的根拠を把握しておくのが最初の手続きになりますね。

問3 保護観察所に勤務し、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人が社会に戻ることを促進するため、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務を主に行う職種として、最も適切なものを1つ選べ。
① 保護司
② 法務教官
③ 保護観察官
④ 少年補導職員
⑤ 社会復帰調整官

選択肢の解説

① 保護司

保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える民間のボランティアです。

保護司法に基づき、法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員とされています(ボランティアですから、給与は支給されません)。

保護司法第1条には、保護司の使命として「保護司は、社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、その使命とする」が挙げられています。

ボランティアだからこそ、法律での表現も「使命」になるわけですね。

こうした保護司の「使命」は、本問での「保護観察所に勤務し、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人が社会に戻ることを促進するため、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務を主に行う職種」とは合致しないことがわかります。

そもそもボランティアの役割に対して「職種」という表現は用いないだろうと考えるのが妥当ですよね。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 法務教官

法務教官は、少年院や少年鑑別所などに勤務する専門職員です。

幅広い視野と専門的な知識をもって、少年たちの個性や能力を伸ばし、健全な社会人として社会復帰させるために、きめ細かい指導・教育を行っています。

少年院では、健全なものの見方や考え方などを指導する生活指導、基礎学力を付与する教科指導、職業生活に必要な知識・技能を習得させる職業指導などの矯正教育を行うとともに、関係機関との連携の下、出院後の生活環境の調整、修学に向けた支援や就労支援等の円滑な社会復帰につなげるための支援を行います。

少年鑑別所では、少年の心情の安定を図りつつ、面接や行動観察を実施し、法務技官(心理)と協力して、少年の問題性やその改善の可能性を科学的に探り、家庭裁判所の審判や、少年院・保護観察所等における指導に活用される資料を提供します。

また、少年の健全な育成を考慮して、本人の希望を踏まえた上で、学習の支援、一般的な教養の付与、情操の涵養などの働き掛けを行っています。

また、刑事施設(刑務所、少年刑務所及び拘置所)に勤務し、受刑者の改善指導等に携わる道も開かれており、性犯罪や薬物依存などに関わる問題性に働きかける指導のほか、就労支援指導や教科指導等を行っています。

こうした法務教官の仕事内容は、本問の「保護観察所に勤務し、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人が社会に戻ることを促進するため、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務を主に行う職種」には合致しないことがわかりますね。

保護観察所に勤務するわけでもなく、対象も異なることが明白です。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 保護観察官

保護観察官は、犯罪をした人や非行のある少年に対して、通常の社会生活を送らせながら、その円滑な社会復帰のために指導・監督を行う「社会内処遇」の専門家です。

また、犯罪や非行のない明るい社会を築くための「犯罪予防活動」を促進しています。

保護観察官になるためには、国家公務員試験に合格し、法務省保護局又は更生保護官署(地方更生保護委員会又は保護観察所)に法務事務官として採用された後、一定の期間、更生保護行政を幅広く理解するための仕事を経験することが必要です。

保護観察官は更生保護法を根拠法とする者であり「医学、心理学、教育学、社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき、保護観察、調査、生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する(更生保護法第31条第2項)」と規定されているとおり、高い専門性が必要とされています。

ただ、こうした保護観察官の役割は、本問の「保護観察所に勤務し、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人が社会に戻ることを促進するため、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務を主に行う職種」には合致しないことがわかりますね。

保護観察官はその名の通り保護観察所に勤務するわけですが、その対象が本問で問われている内容と異なります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 少年補導職員

少年補導職員は、少年警察活動のうち、①少年相談、②継続補導、③被害少年に対する継続的支援、④街頭補導、⑤触法・ぐ犯・不良行為少年事案の処理、⑥家出少年への対応、⑦要保護少年及び児童虐待を受けたと思われる児童への対応、⑧有害環境の浄化、⑨関係機関との連携、⑩広報啓発等の各活動に従事しています。

ただし、活動の重点として、①少年相談、②継続補導及び③被害少年に対する継続的支援については、個々の少年の特質に応じた方法により継続的に行うことが特に必要な活動であり、少
年補導職員に期待される能力を十分に発揮できる分野であることから、他の活動に優先して取り組むこととされています。

個々の活動の要領については、こちらの資料をご覧ください。

このように、非行等の少年問題に関する警察の専門員として、少年の相談や問題行動のある少年の立ち直り支援を行うとともに、市町村や学校をはじめ地域住民やボランティアと連携をとりながら、少年の非行防止、犯罪被害防止を図るための活動に従事するのが少年補導職員ですから、本問の「保護観察所に勤務し、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人が社会に戻ることを促進するため、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務を主に行う職種」には合致しないことがわかりますね。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 社会復帰調整官

社会復帰調整官は、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進するため、医療観察制度における生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務に従事します。

社会復帰調整官になるためには、精神保健福祉士等の資格や、精神保健福祉に関する実務経験等を有し、選考により採用される必要があります。

こちらの資料に、仕事内容の概要が示されていますね。

社会復帰調整官の根拠法は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律:心神喪失者等医療観察法、医療観察法」であり、以下のように規定されています。


(社会復帰調整官)
第二十条 保護観察所に、社会復帰調整官を置く。
2 社会復帰調整官は、精神障害者の保健及び福祉その他のこの法律に基づく対象者の処遇に関する専門的知識に基づき、前条各号に掲げる事務に従事する。
3 社会復帰調整官は、精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者として政令で定めるものでなければならない。


医療観察法の目的は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することにあります(第1条第1項)。

処遇は、入院と通院に分けられており、保護観察所に配置された社会復帰調整官(精神保健福祉士など)を中心に、医療観察を行う枠組みが作られました。

このように社会復帰調整官とは、精神保健福祉等に関する専門的知識を活かして生活環境の調査・調整、精神保健観察等を行う法務省所属の一般職の国家公務員であり、資格は精神保健福祉士または精神障害者の保健及び福祉に関する高い専門的知識がある社会福祉士、保健師、看護師、作業療法士、臨床心理士で、大学卒業以上の学歴(学士)が必要になります。

こうした社会復帰調整官の職務や対象は、本問の「保護観察所に勤務し、精神障害者の保健及び福祉等に関する専門的知識に基づき、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人が社会に戻ることを促進するため、生活環境の調査、生活環境の調整、精神保健観察等の業務を主に行う職種」と合致することがわかりますね。

よって、選択肢⑤が適切と判断できます。

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