公認心理師 2024-39

フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)が行うべき業務に関する問題です。

昨年度からフォスタリング機関に関する問題が出題されるようになっていますね。

問39 フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)が行うべき業務として、不適切なものを1つ選べ。
① 里親に対する研修
② 里親制度の普及啓発
③ 里親のアセスメント
④ 子どもと里親家庭のマッチング
⑤ 里親家庭への子どもの委託措置

選択肢の解説

① 里親に対する研修
② 里親制度の普及啓発
③ 里親のアセスメント
④ 子どもと里親家庭のマッチング
⑤ 里親家庭への子どもの委託措置

こちらについては児童福祉法第11条第2項トに記載があります。


第十一条 都道府県は、この法律の施行に関し、次に掲げる業務を行わなければならない。
二 児童及び妊産婦の福祉に関し、主として次に掲げる業務を行うこと。
ト 里親に関する次に掲げる業務を行うこと。
(1) 里親に関する普及啓発を行うこと。
(2) 里親につき、その相談に応じ、必要な情報の提供、助言、研修その他の援助を行うこと。
(3) 里親と第二十七条第一項第三号の規定により入所の措置が採られて乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設又は児童自立支援施設に入所している児童及び里親相互の交流の場を提供すること。
(4) 第二十七条第一項第三号の規定による里親への委託に資するよう、里親の選定及び里親と児童との間の調整を行うこと。
(5) 第二十七条第一項第三号の規定により里親に委託しようとする児童及びその保護者並びに里親の意見を聴いて、当該児童の養育の内容その他の内閣府令で定める事項について当該児童の養育に関する計画を作成すること。


これだけではわかりにくいでしょうから、厚生労働省のこちらのページにあるフォスタリング機関に関するガイドラインを見ていきましょう。

こちらによるとフォスタリング業務とは以下を指します。

  • 里親のリクルート及びアセスメント
  • 登録前、登録後及び委託後における里親に対する研修
  • 子どもと里親家庭のマッチング
  • 里親養育への支援(未委託期間中及び委託解除後のフォローを含む)

これらの内容が児童福祉法第11条第2項トを平易に述べたものであることがわかると思います。

これらの業務をより詳しく述べると以下のようになります。

  1. 里親のリクルート及びアセスメント
    ・ 認知度向上に向けた取組を含む「攻めるリクルート」による登録候補者獲得
    ・ 里親になることへの不安や負担感を軽減する説明
    ・ 家庭訪問の実施を含めた丁寧な適性評価
  2. 登録前、登録後及び委託後における里親に対する研修
    ・ 里親のスキルアップを目指すとともに、アセスメントの機会としても活用。マッチングに活かす
    ・ 実践的内容とするとともに、里親同士の互助関係の醸成に努める。
  3. 子どもと里親家庭のマッチング
    ・ マッチングは里親委託の成否を左右する極めて重要な要素
    ・ フォスタリング機関と児童相談所が情報を持ち寄り、細部にわたって共有しながらマッチングを図る
  4. 里親養育への支援
    ・ 定期的な家庭訪問や電話によるフォローを実施し、状況を把握
    ・ 里親養育の状況に応じて、関係機関による支援をコーディネートする
    ・ 実親との協働の大切さを見失うことのないよう、子どもと実親の関係性に関する支援を行い、子どもと里親の不安を緩和する
    ・ 里親家庭での養育が不安定になった場合や虐待など不適切な養育があった場合に、要因に応じて適切に対応する
    ・ 里親委託が不調となった場合には、子どもと里親の双方に対する十分なフォローを行う
    ・ 委託解除時は、里親の喪失感を軽減できるように配慮する

これらを踏まえれば、フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)が行うべき業務として、選択肢①の里親に対する研修、選択肢②の里親制度の普及啓発、選択肢③の里親のアセスメント、選択肢④の子どもと里親家庭のマッチングが含まれることがわかりますね。

ですから、フォスタリング機関とは、里親のリクルートから里親登録前後の研修、マッチング、里親養育への支援、措置解除の里親支援まで、一貫した支援を行う機関ということになるわけです。

さて、そうなると選択肢⑤の「里親家庭への子どもの委託措置」はどこが行う業務であるのか、という疑問になりますね。

こちらについては児童相談所の業務に含まれることになります。

里親制度は、児童福祉法第27条第1項第3号の規定に基づき、児童相談所が要保護児童(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童)の養育を委託する制度であり、平成14年度に親族里親および専門里親を創設、平成20年の児童福祉法改正で、「養育里親」と「養子縁組を希望する里親」とを制度上区分、平成21年度から養育里親と専門里親について研修を義務化、平成29年度から里親の新規開拓から委託児童の自立支援までの一貫した里親支援を都道府県(児童相談所)の業務として位置付けるとともに、養子縁組里親を法定化し、研修を義務化…という流れがあります。


第二十七条 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
三 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。


ちなみに、里親に関する業務は児童相談所運営指針にも記されていますね。

上記を踏まえると、フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)が行うべき業務として、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は適切であり、除外することになります。

また、選択肢⑤がフォスタリング機関(里親養育包括支援機関)が行うべき業務ではないと判断でき、こちらを選択することになります。

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