公認心理師 2023-143

事例に対して療育支援を行うことができる機関・サービスを選択する問題です。

各機関・サービスの特徴を把握しておくことが大切ですね。

問143 3歳の男児A。 3歳児健診の際、母親Bから希望があり公認心理師Cが個別相談を実施した。Bによると、Aは小さい頃から視線の合いにくさや感覚の過敏さがみられた。また、言葉の発達を含め、コミュニケーションの困難さもみられた。Cは、Bの話やAの行動観察の結果を踏まえ、Aには定期的な療育支援の継続が必要であると考えた。
 このとき考えられる、療育支援を担当する機関又はサービスとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 児童発達支援事業所
② 地域子育て支援拠点
③ フォスタリング機関
④ 放課後等デイサービス
⑤ ファミリー・サポート・センター

解答のポイント

各機関の特徴を踏まえ、事例に合致する場を選択できる。

選択肢の解説

① 児童発達支援事業所

本問では「Aは小さい頃から視線の合いにくさや感覚の過敏さがみられた。また、言葉の発達を含め、コミュニケーションの困難さもみられた」という点から、何かしらの発達上の課題・遅れが存在すると仮定することができます。

こうした事例に対して、見立てとして「定期的な療育支援の継続が必要であると考えた」わけですから、選択肢で示されている機関のうち、定期的・継続的な療育支援が可能な機関を選択することが求められるわけです。

併せて、Aが「3歳児」であることも踏まえておく必要がありますね(機関によっては、就学していないとダメということがあるので)。

各機関の説明をし、上記のような条件に合致するかどうかを判断していくことにしましょう。

児童発達支援事業所は、0歳〜小学校入学前までの、まだ就学していない子どもたちが、自分の慣れ親しんだ地域での発達支援を提供している施設です。

発達に不安のある子どもたちのケアを行い、課題を解決する手伝いをしたり、その家族への支援を行い負担を軽減することを主な目的としています。

障害を持った子どものなかでも発達障害の子ども、難病にかかっている子ども、心身に障害を持った子どもを対象に支援を行なっています。

子どもそれぞれの個性を尊重し、発達の段階や個人の特性を考慮したうえで、日常生活での基本的な動作の指導、集団生活に馴染むための訓練、技能や知識の習得などを行なっていきます。

児童発達支援事業所は、一般的に地域に根ざした支援を提供している施設になりますので、子どもやその保護者だけでなく、幼稚園・保育所・特別支援学校・小学校・認定こども園などの施設と連携を取りつつサービスを行なっていきます。

似たような機関として「児童発達支援センター」があり、こちらは平成24年の改正児童福祉法の施行により創設されました。

平成24年当時の議論では、児童発達支援センターの役割は、「児童発達支援を行うほか、施設の有する専門性を活かし、地域の障害児やその家族への相談、障害児を預かる家族への援助・助言を合わせて行う地域の中核的な療育支援施設」とされ、第二期障害児福祉計画の基本指針においても、①「障害の重度化・重複化や多様化に対応する専門的機能の強化」を図った上で、②「地域における中核的な支援施設」として、一般の「事業所と密接な連携」を図るものとされています。

「センター」と「事業所」のいずれも「通所利用の障害児やその家族に対する支援を行うこと」は共通していますが、センターは施設の有する専門機能を活かし、地域の障害児やその家族への相談、障害児を預かる施設への援助・助言を行うなど、地域の中核的な療育支援を行う施設とされています。

これに対して「事業」は、もっぱら利用障害児やその家族に対する支援を行う身近な療育の場として位置づけられています。

これらを踏まえれば、本事例が療育支援を担当する機関として児童発達支援事業所は、選択として適切であると言えますね。

よって、選択肢①が適切と判断できます。

② 地域子育て支援拠点

地域子育て支援拠点事業の設置の背景として、3歳未満児の約7~8割は家庭で子育てしていること、核家族化・地域のつながりの希薄化、男性の子育てへの関わりが少ない、児童数の減少などにより、子育てが孤立化し、子育ての不安感、負担感が増え、子どもの多様な大人・子どもとの関わりが減るなどの問題がありました。

こうした問題への対応として、子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供するという目的で地域子育て支援拠点が設けられております。

公共施設や保育所、児童館等の地域の身近な場所で、乳幼児のいる子育て中の親子の交流や育児相談、情報提供等を実施しており、NPOなど多様な主体の参画による地域の支え合い、子育て中の当事者による支え合いにより、地域の子育て力を向上していきます。

地域子育て支援拠点の事業内容として、①交流の場の提供・交流促進、②子育てに関する相談・援助、③地域の子育て関連情報提供、④子育て・子育て支援に関する講習等が設定されております。

事業形態として「一般型・連携型」と「地域機能強化型」があり、詳しくはこちらの資料を参考にしてください。

子ども家庭庁が示している事業内容を抜き出すと、一般型は「常設の地域子育て支援拠点を開設し、子育て家庭の親とその子ども(主として概ね3歳未満の児童及び保護者)を対象として(1)に定める基本事業を実施する」とあり、連携型は「効率的かつ効果的に地域の子育て支援のニーズに対応できるよう児童福祉施設・児童福祉事業を実施する施設において、(1)に掲げる基本事業を実施する」とあります((1)の内容は上記の①~④の事業内容になります)。

これらを踏まえると、地域子育て支援拠点は発達の問題・課題に対する対応を中核的に行う場ではないこと、3歳未満が対象であることなどがわかります。

ですから、本事例のような療育支援を継続的に行う3歳児の支援には合致しない機関と言えるでしょう。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ フォスタリング機関

本来、Fosterは「育てる、養育する」を意味する単語で、ここから転じて「フォスタリング機関」とは里親支援を行う機関を意味します。

厚生労働省の資料によると、フォスタリング機関とは、一連のフォスタリング業務を包括的に実施する機関のことで、また民間フォスタリング機関とは、都道府県知事から一連のフォスタリング業務の包括的な委託を受けた民間機関のことであると定義付けられています。

フォスタリング業務とは、里親のリクルートおよびアセスメント・里親登録前後および委託後における里親に対する研修・子どもと里親家庭のマッチング・子どもの里親委託中における里親養育への支援・里親委託措置解除後における支援に至るまでの一連の過程において、子どもにとって質の高い里親養育がなされるために行われるさまざまな支援のことです。

2016年に改正された児童福祉法により「子どもの家庭養育優先原則」が明確化され、都道府県の行うべき里親に関する業務(=フォスタリング業務)が具体的に位置付けられました。

また、2017年8月には、厚生労働省のもとで「新しい社会的養育ビジョン」が取りまとめられ、子どもの発達ニーズの観点からの里親委託率とより質の高い里親養育の実現が求められています。

これを受けて、今後ますます重要な役割を担うようになる民間のフォスタリング機関の設置が全国で拡大しています。

上記の通り、フォスタリング機関とは里親に関する業務を行う機関のことですから、本事例のような発達に課題のある子どもに対する定期的な療育支援を行う場ではないことがわかります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 放課後等デイサービス

放課後デイサービスは2012年の児童福祉法の一部改正に伴い、障害児施設・事業の一元化を図る中で、障害児通所支援の一つとして創設されたものです。

障害のある学齢期児童に対して、放課後や夏休みなどの学校の長期休暇中に、社会生活を送るために必要な生活能力の向上のための訓練および社会的な交流促進のための支援などを継続的に提供し、学校と連携しながらその自立を促進するとともに、放課後などの居場所づくりを推進することを目的としています。

主に6歳から18歳の障害のある児童を対象として、放課後や夏休み等長期休業日に生活能力向上のための訓練および社会との交流促進等を継続的に提供します(特例として20歳に達するまで利用できる)。

1か月の利用日数は施設と保護者が相談した上で自治体が決定することになっており、利用に際して療育手帳や身体障害者手帳は必須ではないため、学習障害等の児童も利用しやすい利点があります。

民間事業者の参入も進んでおり、利用者の選択肢が増えています。

これらサービスの利用には、利用者が市町村に対して申し込む必要があり、決定されると障害児通所給付費及び特例障害児通所給付費が支給されます。

月額の利用料は原則として1割が自己負担で、残りのうち国が2分の1負担、都道府県と基礎自治体が各4分の1を負担します(所得により上限があり、自治体独自の補助を設けている場合もある)。

法的には児童福祉法第21条の5の2に「障害児通所給付費及び特例障害児通所給付費の支給は、次に掲げる障害児通所支援に関して次条及び第二十一条の五の四の規定により支給する給付とする」と規定されており、障害児通所支援として、児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援などが示されております。

上記の通り、放課後デイサービスでは、障害のある児童を対象に行っているものではありますが、「放課後」という表現からもわかる通り、学齢期の子ども(基本として6歳~18歳)を対象にしたサービスになります。

ですから、就学前の本事例は対象にならないことがわかると思います。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

⑤ ファミリー・サポート・センター

ファミリー・サポート・センター事業は、子どもの送迎や預かりなど、子育ての「援助を受けたい人(依頼会員)」と「援助を行いたい人(提供会員)」が会員となり、地域で相互援助活動(有償)を行う事業です。

厚生労働省が示しているリーフレットがわかりやすいと思いますので、こちらをご参照ください。

センターは市区町村または市区町村から委託等を受けた団体が運営しており、会員同士の相互援助活動のマッチングや連絡、調整、提供会員に対する講習会や会員同士の交流会などを実施しています。

実際の活動内容例としては以下のようなものが示されています。

  • 子どもの預かり
    保育所の開始前や終了後
    学校の放課後や学童保育終了後
    学校の夏休みなど
    保護者等の病気や急用等の場合
    冠婚葬祭や他の子どもの学校行事のとき
    保護者が買い物等で外出するとき など
  • 子どもの送迎
    保育施設までの送迎
    学童クラブへの送迎
    子どもの習い事への送迎 など

平成27年4月より国の「子ども・子育て支援新制度」の中の「地域子ども・子育て支援事業」の1つに位置付けられ、現在では育児のサポートの対象は、子どもを持つすべての家庭に広がっています。

上記の通り、ファミリー・サポート・センターは継続的な療育支援を行う機関ではないことがわかります。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です