公認心理師 2023-122

障害者虐待防止法に関する問題です。

障害者虐待防止法の問題ではありますが、高齢者虐待防止法の条項の把握も求められていますね。

問122 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律〈障害者虐待防止法〉の内容として、誤っているものを1つ選べ。
① この法律における養護者とは、障害者福祉施設従事者である。
② この法律における障害者とは、障害者基本法に規定する障害者である。
③ 障害者福祉施設従事者等は、障害者虐待の早期発見に努めなければならない。
④ 市町村は、養護者から虐待を受けた障害者を保護するために、必要な居室を確保する。
⑤ 養介護事業に係るサービスの提供を受ける65歳未満の養介護施設入所中の障害者は、高齢者とみなして、高齢者虐待に関する規定が適用される。

解答のポイント

障害者虐待防止法の内容を把握している。

また、障害者虐待防止法と高齢者虐待防止法の制度的な関連を理解している。

選択肢の解説

① この法律における養護者とは、障害者福祉施設従事者である。
② この法律における障害者とは、障害者基本法に規定する障害者である。

こちらは定義に関する内容ですね。


(定義)
第二条 この法律において「障害者」とは、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号に規定する障害者をいう。
2 この法律において「障害者虐待」とは、養護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待及び使用者による障害者虐待をいう。
3 この法律において「養護者」とは、障害者を現に養護する者であって障害者福祉施設従事者等及び使用者以外のものをいう。
4 この法律において「障害者福祉施設従事者等」とは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設(以下「障害者支援施設」という。)若しくは独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成十四年法律第百六十七号)第十一条第一号の規定により独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設(以下「のぞみの園」という。)(以下「障害者福祉施設」という。)又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第一項に規定する障害福祉サービス事業、同条第十八項に規定する一般相談支援事業若しくは特定相談支援事業、同条第二十六項に規定する移動支援事業、同条第二十七項に規定する地域活動支援センターを経営する事業若しくは同条第二十八項に規定する福祉ホームを経営する事業その他厚生労働省令で定める事業(以下「障害福祉サービス事業等」という。)に係る業務に従事する者をいう。
5 この法律において「使用者」とは、障害者を雇用する事業主(当該障害者が派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)である場合において当該派遣労働者に係る労働者派遣(同条第一号に規定する労働者派遣をいう。)の役務の提供を受ける事業主その他これに類するものとして政令で定める事業主を含み、国及び地方公共団体を除く。以下同じ。)又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする者をいう。
6 この法律において「養護者による障害者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 養護者がその養護する障害者について行う次に掲げる行為
イ 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
ロ 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
ハ 障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイからハまでに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
二 養護者又は障害者の親族が当該障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。
7 この法律において「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」とは、障害者福祉施設従事者等が、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用する障害者又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける障害者について行う次のいずれかに該当する行為をいう。
一 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
二 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
三 障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
四 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用する他の障害者又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける他の障害者による前三号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
五 障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること。
8 この法律において「使用者による障害者虐待」とは、使用者が当該事業所に使用される障害者について行う次のいずれかに該当する行為をいう。
一 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
二 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
三 障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
四 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該事業所に使用される他の労働者による前三号に掲げる行為と同様の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。
五 障害者の財産を不当に処分することその他障害者から不当に財産上の利益を得ること。


まず選択肢②についてですが、上記の第1項にて「この法律において「障害者」とは、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号に規定する障害者をいう」とされていますから、選択肢②の内容が正しいことがわかりますね。

ちなみに「障害者基本法第二条第一号に規定する障害者」とは、「障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」とされています。

以上より、選択肢②は正しいと判断でき、除外することになります。

続いて、選択肢①の「この法律における養護者とは、障害者福祉施設従事者である」となっていますが、正しくは「この法律において「養護者」とは、障害者を現に養護する者であって障害者福祉施設従事者等及び使用者以外のものをいう」とされています。

つまり、養護者とは「障害者を現に養護する者」であり、「障害者福祉施設従事者等及び使用者」ではないということになります。

よって、選択肢①が誤りと判断でき、こちらを選択することになります。

③ 障害者福祉施設従事者等は、障害者虐待の早期発見に努めなければならない。

こちらについては「障害者虐待の早期発見」として規定されていますね。


(障害者虐待の早期発見等)
第六条 国及び地方公共団体の障害者の福祉に関する事務を所掌する部局その他の関係機関は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることに鑑み、相互に緊密な連携を図りつつ、障害者虐待の早期発見に努めなければならない。
2 障害者福祉施設、学校、医療機関、保健所その他障害者の福祉に業務上関係のある団体並びに障害者福祉施設従事者等、学校の教職員、医師、歯科医師、保健師、弁護士その他障害者の福祉に職務上関係のある者及び使用者は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、障害者虐待の早期発見に努めなければならない。
3 前項に規定する者は、国及び地方公共団体が講ずる障害者虐待の防止のための啓発活動並びに障害者虐待を受けた障害者の保護及び自立の支援のための施策に協力するよう努めなければならない。


上記の通り、「障害者福祉施設、学校、医療機関、保健所その他障害者の福祉に業務上関係のある団体並びに障害者福祉施設従事者等、学校の教職員、医師、歯科医師、保健師、弁護士その他障害者の福祉に職務上関係のある者及び使用者は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、障害者虐待の早期発見に努めなければならない」とありますね。

以上より、選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。

④ 市町村は、養護者から虐待を受けた障害者を保護するために、必要な居室を確保する。

こちらについては「居室の確保」として規定されています。


(居室の確保)
第十条 市町村は、養護者による障害者虐待を受けた障害者について前条第二項の措置を採るために必要な居室を確保するための措置を講ずるものとする。


ポイントは「養護者による障害者虐待を受けた障害者」に関する規定(すなわち第二章「養護者による障害者虐待の防止、養護者に対する支援等」内の規定)であり、第三章の「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等」では「居室の確保」に関する規定は存在しないということです。

養護者による虐待だと住む場所が無くなっちゃうので(養護者のもとにおいておけないから)居室の確保が求められますが、施設内での虐待は住む場所がないという形にはなりにくいですからね(それでも別の施設を探したり、家庭で受け入れるというのは大変ですけどね)。

また、居室の確保の主体は「市町村」であることも理解しておきましょう(試験問題では、こういうところを変えてくることがあるので)。

以上より、選択肢④は正しいと判断でき、除外することになります。

⑤ 養介護事業に係るサービスの提供を受ける65歳未満の養介護施設入所中の障害者は、高齢者とみなして、高齢者虐待に関する規定が適用される。

こちらは高齢者虐待防止法の「定義等」に規定があります。


(定義等)
第二条 この法律において「高齢者」とは、六十五歳以上の者をいう。
2 この法律において「養護者」とは、高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等(第五項第一号の施設の業務に従事する者及び同項第二号の事業において業務に従事する者をいう。以下同じ。)以外のものをいう。
3 この法律において「高齢者虐待」とは、養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待をいう。
4 この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
二 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
5 この法律において「養介護施設従事者等による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
一 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三に規定する老人福祉施設若しくは同法第二十九条第一項に規定する有料老人ホーム又は介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十二項に規定する地域密着型介護老人福祉施設、同条第二十七項に規定する介護老人福祉施設、同条第二十八項に規定する介護老人保健施設、同条第二十九項に規定する介護医療院若しくは同法第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センター(以下「養介護施設」という。)の業務に従事する者が、当該養介護施設に入所し、その他当該養介護施設を利用する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
ホ 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
二 老人福祉法第五条の二第一項に規定する老人居宅生活支援事業又は介護保険法第八条第一項に規定する居宅サービス事業、同条第十四項に規定する地域密着型サービス事業、同条第二十四項に規定する居宅介護支援事業、同法第八条の二第一項に規定する介護予防サービス事業、同条第十二項に規定する地域密着型介護予防サービス事業若しくは同条第十六項に規定する介護予防支援事業(以下「養介護事業」という。)において業務に従事する者が、当該養介護事業に係るサービスの提供を受ける高齢者について行う前号イからホまでに掲げる行為
6 六十五歳未満の者であって養介護施設に入所し、その他養介護施設を利用し、又は養介護事業に係るサービスの提供を受ける障害者(障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号に規定する障害者をいう。)については、高齢者とみなして、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関する規定を適用する。


高齢者虐待防止法では、「高齢者」を65歳以上の者と定義しています(第2条第1項)。

ただし、65歳未満の者であって養介護施設に入所し、その他養介護施設を利用し、又はその他養介護事業に係るサービスの提供を受ける障害者については、「高齢者」とみなして養介護施設従事者等による虐待に関する規定が適用されます(第2条第6項)。

こちらの選択肢については「高齢者虐待防止法で規定されている障害者虐待防止法と関連する事項」という印象ですから、本問のテーマ「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律〈障害者虐待防止法〉の内容として…」と外れてはいないけど、ちょっとすかした設定の選択肢になっていますね。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することになります。

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