公認心理師 2024-2

説明に合致する概念を選択する問題です。

横文字ばっかりで嫌になりますが、出題されたものは再認できるようにしておきましょう(実践で用いるようになったら、きっちりと言えるようにしておきましょうね)。

問2 チーム医療において、治療効率のよい診療行為を時系列で並べた工程を作成し、それに基づいて診療や評価を行うことで、質の保証をしながら効率的に患者の診療を行う手法に該当するものを1つ選べ。
① クリニカルパス
② ブリーフィング
③ メディエーション
④ パーソンアプローチ
⑤ スタンダードプリコーション

選択肢の解説

① クリニカルパス

クリニカルパスとは、医療の内容を評価・改善し、より質の高い医療を患者に提供することを目的として、入院から退院までの治療・検査のスケジュールを時間軸に沿い記述した計画表のことを指します。

元々は、工業界で用いられている品質管理手法である標準業務手順書(SOP)を医療に適用したものであり、リソースの使用効率性向上と、指定日時までの業務の完遂を目的としています。

クリニカルパスの導入によって医療処置のばらつきが削減され、インフォームド・コンセントの助けとなり、チーム医療が進み、アウトカム(成果や効果)が改善されるとされています。

医療サービスの提供には多職種間の連携が不可欠であり、質を維持しながら効率的なサービスを行うためには、治療や看護の標準化・最適化が欠かせないので、クリニカルパスによって医療の介入内容を一元化することでチーム医療の実現、医療の質の向上を図るわけですね。

こうしたクリニカルパスの内容は、本問の「チーム医療において、治療効率のよい診療行為を時系列で並べた工程を作成し、それに基づいて診療や評価を行うことで、質の保証をしながら効率的に患者の診療を行う手法」と合致しますね。

よって、選択肢①が適切と判断できます。

② ブリーフィング

ブリーフィングは、医療や看護の分野でも頻繁に使われ、ビジネスシーンと同じように「事前確認・打ち合わせ」を意味します。

ブリーフィングとは、主な内容は、医療活動や患者の状態などの共有、打ち合わせはもちろん、災害看護の目的地や任務内容、心構えなどさまざまを指します。

特に災害領域においては、救護活動を通して受けるストレスを軽減し、処理するために活動前に任務の説明とストレス処理法についての情報提供を受けることを指します。

災害におけるブリーフィング内容として、①目的地や任務の内容を知り、困難や危険を予想することにより、起こり得る事態への心の準備をする、②自分の役割を明確にして、自分になにが期待されているのか、なにができるのかを把握し、自分自身であまり大きな期待をもたない、③ストレスに備えるストレス症状やその自己処理法、相互援助について理解し、ストレスに備えるなどが挙げられます。

このように医療領域におけるブリーフィングとは「事前確認・打ち合わせ」であり、医療活動や患者の状態などの共有になりますが、狭義としては災害時の活動前の任務の説明とストレス処理法についての情報提供を指します。

これに対して、デブリーフィングは、プロジェクトやタスクの終了後に振り返りと評価を行い、経験から学んで次回の活動に活かす目的で行われるものですが、狭義としては災害や精神的ショックを経験した人々に対して行われる、急性期(体験後2、3日~数週間)の支援方法のことを指します。

ブリーフィングの対義語がデブリーフィングというわけですね。

こうしたブリーフィングの内容は、本問の「チーム医療において、治療効率のよい診療行為を時系列で並べた工程を作成し、それに基づいて診療や評価を行うことで、質の保証をしながら効率的に患者の診療を行う手法」と合致しません。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ メディエーション

医療メディエーションとは、患者と医療者、異なる職種間、同一職種間などで発生する様々なコンフリクト(葛藤:相対する意見ないし要求などが対立し緊張状態を生じること)を、当事者間で協働的に対応していくためのモデルで、紛争調停のみならず対人関係や医療の安全・質の改善にも応用できるモデルとされています。

上記のコンフリクトには、怒りが表出され、苦情、クレーム、紛争、対立に至った状態はもちろんだが、一方が不安、不満を感じながらも胸のうちに秘めて表出できない状態も含めます。

特に医療においては、患者が医療者に対して「言えない」といったことが生じ得るので、患者と医療者が向き合う場を設定し、対話を促進することを通して、関係再構築を支援する仕組みのことを指します。

なお、当事者自身による自主的な対話を促進する役割で、代理や代弁をしたり「解決案」を提示したりせず、あくまで当事者の患者・医療者が主役とされています。

このように医療におけるメディエーションとは「患者や家族、遺族らと医療者らの当事者間の対話を促進し、損なわれた信頼関係の回復と、相互の関係改善に資する場を提供する仕組み」を指しますから、本問の「チーム医療において、治療効率のよい診療行為を時系列で並べた工程を作成し、それに基づいて診療や評価を行うことで、質の保証をしながら効率的に患者の診療を行う手法」と合致しません。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ パーソンアプローチ

医療事故の予防には、ヒューマンエラー(果たすべきことが果たされなかった事態のことであり、一般にうっかり間違いなど意図せずに生じたエラー)の観点とシステムアプローチへの取り組みが不可欠であり、組織的な環境整備の必要性が提言されています。

システムアプローチとは、使いやすい機器設備、適切な労働環境、エラーを避ける業務手順の設計、また疲労を避ける勤務時間(休憩)設計やシフトのまわし方など、人間工学(ヒューマンファクターズ)に基づいて医療事故を防ぐ方針を指します。

このシステムアプローチと同様に医療事故防止対策にはもう一つ重要なアプローチがあり、それは、医療スタッフ個人の性格や作業に対するモチベーションを改善することでエラーをふせぐ方法、すなわちパーソンアプローチです。

安全意識に対する注意力の欠如、たとえば不注意や貧しい動機づけなどからヒューマンエラーの発生要因を考えることがパーソンアプローチの方向性ですが、一方で、パーソンアプローチはエラーを起こした人を非難・懲戒し再発防止につなぐ考え方にもなり得るので、それ単独で医療事故が防ぐことができるわけではないと考えておくことが重要です。

事故防止対策にはパーソンアプローチとシステムアプローチの両面で対応することが必要とされています。

こうしたパーソンアプローチの考え方は、本問の「チーム医療において、治療効率のよい診療行為を時系列で並べた工程を作成し、それに基づいて診療や評価を行うことで、質の保証をしながら効率的に患者の診療を行う手法」と合致しません。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ スタンダードプリコーション

スタンダードプリコーションとは、医療・ケアを提供するすべての場所で適用される感染予防策で、標準予防策とも呼ばれます。

標準予防策(スタンダードプレコーション) とは、すべての人は伝播する病原体を保有していると考え、患者および周囲の環境に接触する前後には手指衛生を行い、血液・体液・粘膜などに曝露するおそれのあるときは個人防護具を用いることを指します。

患者の血液、体液(唾液、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液等すべての体液)、分泌物(汗は除く)、排泄物、あるいは傷のある皮膚や、粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで、患者と医療従事者双方における病院感染の危険性を減少させる予防策である。

手指衛生、個人防御具の使用、リネンの取り扱い、その他の環境対策などがスタンダードプリコーションに含まれます(厚生労働省のこちらの資料なども参考になりますね)。

こうしたスタンダードプリコーションの説明は、本問の「チーム医療において、治療効率のよい診療行為を時系列で並べた工程を作成し、それに基づいて診療や評価を行うことで、質の保証をしながら効率的に患者の診療を行う手法」と合致しません。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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