公認心理師 2024-29

止血に関わる血液中の成分を選択する問題です。

一般常識問題ですが、一応「公認心理師 2021-44」なども確認しておきましょう。

問29 止血に関わる血液中の成分として、最も適切なものを1つ選べ。
① 単球
② 血小板
③ 好中球
④ 赤血球
⑤ リンパ球

選択肢の解説

① 単球

単球は白血球の成分の一種であり、白血球の3~8%を占め、感染に対する防衛の開始に重要な細胞です。

単球はマクロファージの前身であり、骨髄内では「単球」と呼ばれますが、単球が血流を離れて組織に移動すると「マクロファージ」になります。

ですから、単球は免疫担当細胞ではありますが、その主な機能の説明はマクロファージのものになってきますから、そのつもりで読んでください。

マクロファージは、19世紀の終わりにMechnikov(メチニコフ:ロシアの微生物学者および動物学者。白血球の食作用を提唱し、免疫系における先駆的な研究を行ったことで有名)により発見されました。

メチニコフは無脊椎動物で微生物を貪食する細胞を発見し「マクロファージ」と命名しました。

マクロ=大きい、ファージ=食べるという意味のギリシャ語に由来します(つまり、マクロファージは大きくて食いしん坊な細胞という意味になる)。

前述の通り、マクロファージは単球に由来し、血液中を循環してきた単球がさまざまな末梢組織で分化して生成されます。

末梢組織に常在するマクロファージはそれぞれ組織特有の名称で呼ばれています(以下のような感じ)。

  • 肝臓:クッパー細胞
  • 脾臓:赤脾髄マクロファージ
  • リンパ節:被膜下洞マクロファージ
  • 中枢神経:ミクログリア細胞
  • 肺:肺胞マクロファージ
  • 腹腔:腹腔マクロファージ
  • 結合組織:組織球
  • 骨:破骨細胞

マクロファージは微生物や宿主由来の死細胞を貪食します。

貪食された微生物や宿主由来の死細胞は小胞(食胞)内に取り込まれて、食胞がリソソーム(真核生物が持つ細胞小器官の一つ)と融合したのち、タンパク質分解酵素、活性酸素、一酸化窒素などにより消化され、残渣は細胞外に排出されます。

マクロファージは身体の組織で門番のような役割をしており、異物を食べるように細胞内に取り込み(これが上記の「貪食」のこと)、その異物が戦うべき病原体だと気づくと炎症性サイトカインと呼ばれる物質を放出して炎症反応を起こします。

また、病原体を処理しきれないと、ヘルパーT細胞に病原体の断片を見せて助けを求めますが、こういう行動を「抗原提示」と呼びます。

このように、①貪食すること、②炎症反応を起こすこと、③ヘルパーT細胞に抗原を提示すること、がマクロファージの仕事になるわけです。

これらを踏まえると、単球は「止血に関わる血液中の成分」ではないことがわかります。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 血小板

まずはこちらの図を見ていきましょう。

赤芽球が脱核したのち赤血球へ、巨核球は血小板へと分化します。

一般に、赤血球は酸素や二酸化炭素を全身に運ぶ役割、血小板は出血をとめる役割をしていますね。

このように血小板は、赤血球や白血球と同様に骨髄の中で産生され末梢血中に現れる血液成分の1つで、血管壁が損傷した場合にその傷口に集まって凝集し出血を防ぎ、止血する役割を果たしています。

血小板の数が少なすぎると出血傾向となり、血小板数は正常でもその働き機能に異常があるとやはり出血傾向になります。

通常の血小板数(血液中を循環している血小板の数)は、1マイクロリットル当たり約14万~44万個です。

血小板の数は、月経周期に従って変化し、妊娠の終わり近くに減少することがあり(妊娠性血小板減少症)、炎症反応で増加することもあります(二次性または反応性血小板増多症)。

これらの異常はいずれも重篤なものではなく、ほとんどの場合、いずれによっても問題が生じることはありません。

血小板の病気には以下のものがあります。

  • 血小板の異常増加(本態性血小板血症と 反応性血小板増多症)
  • 血小板の減少(血小板減少症)
  • 血小板機能異常症

これらの病気があると、血液凝固に問題を生じます。

本態性血小板血症では、他の病気が見つかっていないにもかかわらず、血小板を作る骨髄細胞が過剰に増殖して、過剰な血小板を生産します。

意外なことに、血小板数が増加すると、ほとんどの場合、血液凝固が過剰になるよりも、むしろ過度の出血が起きます。

血管の病気があるか心臓発作のリスクが高い場合は、異常な血液凝固のリスクを抑えるためにアスピリンが処方されることがあります。

ときに血小板数を少なくする薬が必要になる場合があります。

反応性血小板増多症では、別の医学的な疾患によって骨髄が刺激されて過剰な血小板が作られます(その別の疾患に反応して血小板が作られます)。

そのような疾患には、感染症、慢性炎症(関節リウマチや 炎症性腸疾患などで発生)、 鉄欠乏症、特定のがんなどがあります。

血小板数が増加しても血液凝固や出血のリスクが高まるわけではありません。

血小板数が多いからといって特別な治療が必要なわけではありませんが、その原因になっている病気の治療が必要な場合があります。

血小板減少症では、血小板数が減少する原因が多くあります。

一般に、血小板の生産減少にかかわる原因と、血小板の破壊増加や喪失にかかわる原因に分けられます。

血小板機能異常症では、血小板数が正常でも、機能が正常ではありません。

以上を踏まえれば理解できるように、血小板が「止血に関わる血液中の成分」であることがわかりますね。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

③ 好中球

細胞質に顆粒を持つ白血球を顆粒球と呼びます。

顆粒球は多核で、その核の形態が多形性を示すため、多核白血球あるいは多形核白血球と呼ばれます。

顆粒球は顆粒の染色様式から、中性色素で染まる好中球、酸性色素で染まる好酸球、塩基性色素で染まる好塩基球に分類されます。

好中球は末梢血白血球の60~70%を占めます。

顆粒球の約95%が好中球であるため、多核白血球は好中球の意味で使用されることも多いです。

マクロファージと同様に、好中球は生体内に侵入した病原体や異物を貪食し、マクロファージとともに病原体感染時に防御的に機能します。

好中球の機能障害により個体の感染抵抗性は低下し、いわゆる易感染性をきたしてしまいます。

好酸球は末梢血白血球の2~4%を占めます。

寄生虫感染やI型アレルギー反応の際にIL-5(好酸球の分化、成熟、アレルギー性の炎症部位における好酸球の動員および活性化で重要な働きをする造血サイトカイン)などの作用により増加します。

好酸球の明確な役割はわかっていませんが、顆粒中に存在する主要な塩基性たんぱく質の作用により寄生虫を傷害します。

好塩基球は末梢白血球に0.2~0.5%存在します。

肥満細胞は好塩基球の分化段階の早期に末梢組織に移行して分化、成熟した細胞であり、その寿命は週から月単位とされています。

好塩基球が特定の抗原に出会うとヒスタミンなどが放出され、アレルギー反応を引き起こすとされています。

また、好中球と好酸球を問題部位に引き寄せる物質を作ります。

以上のように、好中球は白血球(というか免疫細胞)の中でも非常に数が多く、高い遊走性を有しており、主に生体内に侵入した病原体や異物の排除を担当しています。

これらを踏まえれば、好中球は「止血に関わる血液中の成分」ではないことがわかります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 赤血球

赤血球は血液細胞の一つで色は赤く血液循環によって体中を回り(血が赤いのはこいつが赤いから)、肺から得た酸素を取り込み、体の隅々の細胞に運び供給する役割を担い、また同様に二酸化炭素の排出も行います。

血液の主な働きはとしては、①酸素や栄養分、老廃物を運搬する、②外からの進入してきた菌やウイルスを防衛する(こちらが免疫担当細胞の役割ですね)、③熱や酸・アルカリを調整する働き、などがあります。

免疫担当細胞が上記の②を担当しているのに対して、赤血球は上記の①を担当しているわけですね。

これらを踏まえれば、赤血球は「止血に関わる血液中の成分」ではないことがわかります。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ リンパ球

白血球には顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、リンパ球があり、それぞれが免疫機能においてさまざまな働きをしています。

リンパ球系前駆細胞は、主にリンパ球(B細胞およびT細胞)、NK細胞に分化します。

B細胞は骨髄内で分化し、血液中を循環したのち、主にリンパ組織に到達します。

T細胞は骨髄内で分化したのち、胸腺で教育(正の選択、負の選択)を受けてから、血液を介して主にリンパ組織へと到達します。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は血液中に存在するリンパ球の約10〜30%を占めている、殺傷能力の高い免疫細胞で、全身を巡回し、がん細胞やウイルスなどを見つけたら直ちに攻撃するという特徴があります。

このように、リンパ球は細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入してくると攻撃・排除しようとする「免疫」において中心的な役割を担っています。

これらを踏まえれば、リンパ球は「止血に関わる血液中の成分」ではないことがわかります。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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