公認心理師 2023-8

色覚多様性に関する問題です。

選択肢③の正誤判断が難しかったですね。

問8 色覚多様性の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 男性より女性に多い。
② 後天的に生じるものがある。
③ 1型、2型及び3型の3種に分けられる。
④ 桿体が機能不全を起こすことによって生じるものがある。
⑤ 色覚検査は、学校保健安全法施行規則に定める児童生徒等の健康診断における必須の検査項目である。

解答のポイント

色覚多様性(色覚異常)について理解している。

選択肢の解説

① 男性より女性に多い。
② 後天的に生じるものがある。
③ 1型、2型及び3型の3種に分けられる。
④ 桿体が機能不全を起こすことによって生じるものがある。
⑤ 色覚検査は、学校保健安全法施行規則に定める児童生徒等の健康診断における必須の検査項目である。

平成15年から学校での色覚検査は定期健康診断から削除され、希望者への検査へと移行しております。

ただし、平成26年4月30日に文部科学省から「学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)」が発出され、学校における色覚検査が適正に実施できるよう体制を整えることとその留意点などが明記されたところです。


学校における色覚の検査については、平成15年度より児童生徒等の健康診断の必須項目から削除し、希望者に対して個別に実施するものとしたところであるが、児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま卒業を迎え、就職に当たって初めて色覚による就業規制に直面するという実態の報告や、保護者等に対して色覚異常及び色覚の検査に関する基本的事項についての周知が十分に行われていないのではないかという指摘もある。

このため、平成14年3月29日付け13文科ス第489号の趣旨を十分に踏まえ、①学校医による健康相談において、児童生徒や保護者の事前の同意を得て個別に検査、指導を行うなど、必要に応じ、適切な対応ができる体制を整えること、②教職員が、色覚異常に関する正確な知識を持ち、学習指導、生徒指導、進路指導等において、色覚異常について配慮を行うとともに、適切な指導を行うよう取り計らうこと等を推進すること。特に、児童生徒等が自身の色覚の特性を知らないまま不利益を受けることのないよう、保健調査に色覚に関する項目を新たに追加するなど、より積極的に保護者等への周知を図る必要があること。


このように、最近では学校で色覚検査の実施義務が無くなりましたが、色覚異常が無くなったわけではありません。

色覚異常について詳しく見ていきましょう。

色覚異常には、先天色覚異常と後天色覚異常があります。原因が遺伝的なもので、生まれつき異常があるものを先天色覚異常、他の目の病気の一つの症状として色覚に異常が出るものを後天色覚異常といいます。

先天性の場合は原因が遺伝的なものなので、現時点では有効な治療法がない一方、色覚異常の程度は変化せず、また色覚以外の視機能は問題ないことがほとんどです。

後天性の場合は、なにかの病気(緑内障や網膜の病気など)の一つの症状として、色覚に異常が現れるので、色覚以外の視力や視野にも影響が出たり、病気の状態によって色の見え方が変わることがあります。

ここではまず先天色覚異常について述べていきましょう。

色覚は遺伝子(X染色体)に定義されており、男性はX染色体を1つしか持たない(XY)ため、このX染色体が色覚異常の因子を持っていると色覚異常になります。

X染色体に色覚に関係する遺伝子があり、男性の場合は母親からX染色体を受け継ぐので、母親のX染色体に色覚異常の遺伝子があれば色覚異常になります。

女性は両親からひとつずつX染色体を受け継ぐので、片方のX染色体に色覚異常の遺伝子があれば保因者(色覚異常にはならない)に、両方のX染色体にあれば色覚異常になります。

このような事情から先天性の色覚異常は女性よりも男性に多く、日本人男性の5%、女性の0.2%の頻度で起きていて、国内で300万人以上が該当しまれなものではありません。

網膜には、色を感じる3種類の錐体細胞があり、この3 種類が働いて全ての色を感じる仕組みになっていますが、色覚異常では色を感じる錐体細胞を作る遺伝子がX染色体に少ないという事態になっています。

錐体は明るいところで物を詳しく見るのに適した光センサーで、錐体は3種類(L、M、S)あり、その組み合わせで色を見分けます。

「L 錐体」が機能しない場合は赤色(1型)が、「M 錐体」が機能しない場合は緑色(2型)が、「S 錐体」が機能しない場合は青色(3型)が、それぞれ見えにくくなり、そして、どの錐体が正常に機能しないかによって色覚異常は大きく三つのタイプに分けられています。

ただ、錐体の機能が弱い場合もあれば完全に欠損していることもあるなど色覚異常も様々ですが、対応する錐体細胞によって1型~3型に分類され、その錐体細胞を何種類備えているかで色覚異常の型が決まります。

  1. 異常3色覚
    1型3色覚(=第1色弱):赤の要素の鈍いもの
    2型3色覚(=第2色弱):緑の要素の鈍いもの
    3型3色覚(=第3色弱):青の要素の鈍いもの
  2. 2色色覚
    1型2色覚(=第1色盲):赤要素が欠損しているもの
    2型2色覚(=第2色盲):緑要素が欠損しているもの
    3型2色覚(=第3色盲):青要素が欠損しているもの
  3. 1色覚(=全色盲)
    杆体1色覚:錐体の機能をまったく欠き、多くは中心暗点を示す。視力は0.1以下で、昼盲、眼振、差明などを訴える。
    錐体1色盲:きわめてまれ。

特に上の表を見てほしいのですが、選択肢③で問われている型に関する理解についてです。

1型~3型までの分類は、あくまでも「対応する錐体」による分類であり、選択肢で問われている色覚異常の「型」については「錐体を何種類備えているか:三色覚・二色覚・一色覚」で表現されることになります。

こういうことですね。

1型~3型では、上記の一色覚をうまく表現できなくなりますから、色覚異常の型は「錐体を何種類備えているかによる分類」で見ていくことになります。

これに対して、後天色覚異常についても述べていきましょう。

後天色覚異常では、網膜、視神経、視路の疾患で色覚異常が生じます。

後天色覚異常も、色覚異常の症状を呈する他の眼の病気の有病率から考えると、決してまれではなく、とりわけ、加齢の延長線上にある白内障は全人口に対して30%を超える割合(80歳以上では100%)で所見が見られ、その中でも視力が低下しているものに関しては色覚異常もあると考えられ、高齢者のかなりの割合が加齢による色覚異常を有していると考えられます。

特に先天色覚異常は自覚しにくい場合が多いため、まずは検査を受けて色覚異常かどうかを知り正しく理解することが大切です。

後天色覚異常の特徴としては、①色覚の異常を自覚することが多い、②通常他の視機能異常を伴って出現し、片眼性も多い、③異常の程度は原疾患の経過により変化する、が挙げられます。

障害部位と色覚異常型との関連としては…

  1. 網膜・脈絡膜疾患:青・黄異常
  2. 視神経疾患:赤・緑異常、または全色相の混同
  3. 中枢疾患:赤・緑異常、または全色相の混同

…となっています。

最後に、本問が「色覚異常」ではなく「色覚多様性」と表現している件についてです。

色覚の「異常」であることは間違いないのですが、すでに述べた通り、かなりの数の人がこうした「異常」を備えていることになります。

有名どころでは、あの有名な画家のゴッホも色覚特性が異常だったと言われており、奇抜な色使いもみられますが、個性豊かなすばらしい色感覚の絵画を描いています。

こうした背景から、色覚特性も人の持つ多くの能力のうちの一つと見なし、個性として尊重することが大切であるという考えから、「色覚異常」ではなく「色覚多様性」と表現するようになっているわけです。

以上をまとめると、色覚多様性は女性よりも男性に多く、先天性のものと後天性のものがあり、錐体の機能不全で生じ、この錐体を何種類備えているかで分類され、現在の学校では必須の検査項目とはなっていないということになります。

よって、選択肢①、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢②が適切と判断できます。

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