公認心理師 2024-44

Tinbergenの「4つの問い:Tinbergenの4つのなぜ」に関する問題です。

行動主義への反発、心理学の学派に対する影響というところが出題された理由の一つでしょうね。

問44 N. Tinbergenによる、動物の行動の原理を理解するための4つの観点のうち、「生存・生殖にどのように寄与しているか」に該当するものを1つ選べ。
① 適応(究極要因)
② 個体発生(発達要因)
③ メカニズム(至近要因)
④ 系統発生(系統進化要因)

選択肢の解説

① 適応(究極要因)
② 個体発生(発達要因)
③ メカニズム(至近要因)
④ 系統発生(系統進化要因)

Tinbergenはオランダの動物行動学者であり、鳥類学者でもあります。

1973年、コンラート・ローレンツ(刻印づけなどで有名なあのローレンツですね)、カール・フォン・フリッシュと共にノーベル医学生理学賞を受賞しています。

ティンバーゲンの研究は、一部は当時のアメリカ心理学界で有力であった行動主義への反発として行われました。

ティンバーゲンは動物の行動が環境刺激への単なる反応ではなく、より複雑な動物の内面の情動に起因すると考え、行動の生理的、現象的な側面だけでなく、進化的な側面の研究の重要性を強調しています。

それに関連して示したのが、動物の行動はさまざまな次元で説明することができ、動物の行動を完全に理解するためには多様な領域からのアプローチが重要であるとする「4つの問い:Tinbergenの4つのなぜ」であり、これは行動生態学など後の行動生物学分野の重要なフレームワークとなっています。

この概念は行動に関わる分野、特に動物行動学、行動生態学、社会生物学、進化心理学、比較心理学の基本的な枠組みでもあります。

「4つの問い:Tinbergenの4つのなぜ」とは、要するに「なぜ生物がある機能を持つのか」という疑問を4つに分類したものです。

表で示すと以下のようになります。

上記を一つずつ説明していきましょう。

まず「究極要因」とは、「なぜ?」を解くものであり、「機能(なぜその行動が、動物の生存や繁殖に役立つよう進化してきたのかなど)」と「系統発生(猿と人のようによく似ている行動や特徴が祖先からどのように受け継がれてきたのかなど)」が挙げられています。

  • 機能(適応):「どんな機能をもっているのか」という問い。現在の環境において生殖または生存の問題にどう寄与しているか。そのようなデザインが、どう生殖や生存に寄与しているのか。
    鳥類のさえずりを例にとると「縄張りの防衛や雌への求愛など、生存・繁殖における利点があるのか?」
  • 系統発生:「どんな進化を経てきたのか?」という問い。
    鳥類のさえずりを例にとると「進化の過程で、いつから「さえずり」するようになったのか?」

また「至近要因」は直接要因とも訳され、「メカニズム(特定の体の部位や臓器、その他の化学物質などがどのように働いて行動として表れているのかなど)」と「発達:個体発生(個体全体や身体の一部分がどのように成長していくのかなど)」が挙げられます。

  • メカニズム:神経、脳、分子的、物理的なメカニズムに関する問い。
    鳥類のさえずりを例にとると「脳内にどのような構造があり、さえずりを学習できるのか?」
  • 個体発生(発達):ある個体が生殖細胞から現在の形になるまでの発達に関する分子機構や学習方法に関する問い。
    鳥類のさえずりを例にとると「幼鳥から成鳥になる過程で、どのようにさえずりを獲得するのか?」

これらはそれぞれが独立して研究されるだけでなく、最近では、複数の領域が歩み寄ることで、さまざまな問題解決につながっています。

上記を踏まえると、本問の「Tinbergenによる、動物の行動の原理を理解するための4つの観点のうち、「生存・生殖にどのように寄与しているか」に該当するもの」とは、究極要因の適応(機能)に該当すると言えます。

よって、選択肢②、選択肢③および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です