公認心理師 2024-4

説明に合致する人物を選択する問題です。

学習心理学の基本的内容と言えますから、きっちり取れるようにしておきたい問題です。

問4 刺激と反応の間の媒介変数として習慣強度を設定し、行動を説明した人物に該当するものを1つ選べ。
① B. F. Skinner
② C. L. Hull
③ E. C. Tolman
④ E. R. Guthrie
⑤ J. B. Watson

選択肢の解説

⑤ J. B. Watson

ワトソンは、アメリカの行動主義心理学の主唱者です。

少年時代はなかなかのならず者で、拳銃を撃って傷害事件を起こすほどでした。

最初に入った大学を辞めてシカゴ大学に入学し直したり、動物心理学で哲学博士の学位を得るなど異色の経歴を持ちますが、優秀だったのは間違いなく自身が設立した動物心理学実験室で研究を次々に行い、1908年には高額の年棒と優れた実験設備をもってワトソンを助教授として大学に迎え入れられました。

ワトソンは1912年にキャッテルに招かれてコロンビア大学で「行動主義者が考えているような心理学」という表題で講演を行い、それが研究誌に掲載されました。

これが「行動主義」という言葉が表に出た最初です。

ワトソンは、心理学は人間の行動を扱う自然科学の一分野であると考え、その目的は行動の予測と統制で、研究対象は観測可能な物理刺激に対する有機体の筋運動、腺分泌、それらによって引き起こされた環境の変化であるとしました。

それまでの心理学では、その対象は「意識」とするのが常識でしたが、これは仮定にすぎないものであり注意するに値しないというのがワトソンの主張で、これは若手の心理学者たちから強い支持を受けて、37歳という若さでアメリカ心理学会の会長に選出されました。

ワトソンの理論は、スキナー、ハル、トールマンなどの新行動主義に発展的に継承されたり、ウォルピやアイゼンクなどの行動療法の創始にも大きな影響を与えるなど、各方面に絶大な影響力をもっていました。

その後、ワトソンはパブロフの研究から理論を発展させていきましたが(行動主義の「刺激と反応の結びつきに還元する」という考え方は、パブロフの研究によるところが大きい)、さまざまなスキャンダルや研究倫理の問題を起こし、大学から罷免されました。

しかし、そこから実業家として財をなし、その傍らで心理学の研究を再開するなど波乱に満ちた人生を歩んだ人です。

上記からもわかる通り、ワトソンのもっとも大きな功績としては、やはり行動主義という一つの学派の礎を築いたというところにあるでしょう。

ただ、本問の「刺激と反応の間の媒介変数として習慣強度を設定し、行動を説明した人物」には該当しませんね(明らかにワトソンの主張後になされた研究内容であると言えます)。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

① B. F. Skinner
② C. L. Hull
③ E. C. Tolman
④ E. R. Guthrie

ワトソンの行動主義に影響を受けて、それを発展させようという流れで「新行動主義」が生まれました。

操作主義=「概念をそれ自体の内容で規定せず、それに対応する一群の具体的手続き(=操作)に還元して規定しようとする立場」を取り入れました。
※DSMも「操作主義」を取り入れています。概念の本質を問題にするのではなく、こういう方法(診断基準)で観察可能であれば、その概念を規定することができるということ。

操作主義を取り入れることで、環境刺激-行動の間にさまざまな媒介変数を入れることができ、「S-O-R」という考えが可能となったわけです。

新行動主義の代表的研究者は4名になります。

  • Tolman(トールマン):
    「動物と人間における目的的行動」(1932)の中で、S-Rの結合した反射のようなものを微視的行動、それに対し目的的な行動を巨視的行動と呼び、この目的的な行動の研究を重視した。
    刺激-反応の間の媒介変数(O)として、期待や仮説、信念、認知地図などを採用し、これらが認知心理学の成立へとつながっていった。
  • Hull(ハル):
    「行動の原理」(1943)で注目された。
    O(刺激と反応の間の媒介変数)として、「習慣強度(過去の学習・強化経験の結合である習慣の強さ)」「動因(行動を何らかの方向に向ける心的エネルギー)」「反応ポテンシャル(刺激反応に基づく行動の強さや早さ。観察、数量化可能なもの)」などを挙げ、強化の「動因低減説」(反応が起こりやすくなるのは、反応することによって動因を引き下げることができるから)を示した。
  • Guthrie(ガスリー):
    トールマンやハルの理論が複雑すぎるとし「近接性」の法則だけで学習を説明しようとした。
    学習理論の主流がS−RからS−O−Rに移行しつつある中、あえてSとRの時間的・空間的接近が学習の必要条件であるとし、学習は単一の条件づけによって成立可能で、強化の反復は必ずしも必要ではないと考えた。
  • Skinner(スキナー):
    学習に必要なものは、反応の後にどれだけ強化が伴うのか(=強化随伴性)とした。
    ソーンダイクの仕事をもとに理論を組み立てていった。
    「生体の行動」(1938)で、古典的条件づけとオペラント条件付けを区別した。行動強化のために強化理論を用いることをオペラント条件づけと呼び、その強化度を測定する尺度として最も適切なものは応答速度だとした。オペラント条件付けの研究のために「オペラント条件付け箱」を発明し、これはスキナー箱として知られている。
    環境に隠されている強化随伴性を変えれば、それに伴って行動は変化するという考え方から、オペラント条件づけ研究は学習におけるティーチングマシン、更には行動療法をもたらした。
    スキナーの研究は行動分析という独自の領域をもたらし、新行動主義の時代以降も独自の展開を続けている。

上記の内容については、こちらの書籍から引用しつつ述べています。

これらの内容からもわかる通り、本問の「刺激と反応の間の媒介変数として習慣強度を設定し、行動を説明した人物」に該当するのはC. L. Hullになりますね。

よって、選択肢①、選択肢③および選択肢④は「刺激と反応の間の媒介変数として習慣強度を設定し、行動を説明した人物」として不適切と判断でき、選択肢②が適切と判断できます。

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