不正解の選択肢に関してもキチンと理解しておくことが重要です。
他のところでも書きましたけど、「その問題だけを解けるようにする」という考えでは、未見の問題に立ち向かうことはできませんからね。
Aに入る選択肢:Seligman,M.E.P.
Aに入るのはセリグマンになります。
Seligmanは、アメリカの心理学者で、ペンシルベニア大学教授です(でした)。
いかなる能動的行動もいっさい嫌悪刺激の回避に役立たないという経験を通して無気力が学習されること(学習性無力感)をイヌを用いた実験から明らかにしたことで有名です。
その他、種によってある行動の学習のされやすさ(準備性)があることを確認した研究、あるいは、人における帰属過程の研究など、実験心理学から臨床、社会心理学に及ぶ数多くの研究で知られています。
ちなみに、1998年度APA会長です。
実験は1967年にセリグマンとマイヤーが犬を用いて行いました。
予告信号のあとに床から電気ショックを犬に与えるというもので、犬のいる部屋は壁で仕切られており、予告信号の後、壁を飛び越せば電気ショックを回避できるようにしました。
また、前段階において次の二つの集団を用意していました。
電気ショックを回避できない状況を用意し、「その状況を経験した犬」と「足でパネルを押すことで電気ショックを終了させられる状況を経験した犬」です。
実験ではその二つの集団に加え、なにもしていない犬の集団で行われました。
実験の結果、犬の回避行動に差異が見られました。
前段階において電気ショックを回避できない犬はその他の集団に比べ回避に失敗しました。
具体的にはその他の集団が平均回避失敗数が実験10回中約2回であるのに対し、前段階において電気ショックを回避できない犬は平均回避失敗数が実験10回中約7回でした。
これは犬が前段階において、電気ショックと自分の行動が無関係であると学習しそれを認知した為、実験で回避できる状況となった場合でも何もしなくなってしまったと考えられます。
これをセリグマンらは学習性無力感と呼びました。
人に現われる症状としては以下の通りです。
長期に渡り、人が監禁されたり、暴力を振るわれたり、自分の尊厳や価値がふみにじられるような場面に置かれた場合、次のような徴候が現れます。
- 被験者は、その圧倒的に不愉快なストレスが加えられる状況から、自ら積極的にその状況から抜け出そうとする努力をしなくなる。
- 実際のところ、すこしばかりの努力をすれば、その状況から抜け出すのに成功する可能性があったとしても、努力すれば成功するかもしれないという事すら考えられなくなる。
- ストレスが加えられる状況、又ストレッサーに対して何も出来ない、何も功を奏しない、苦痛、ストレス、ストレッサーから逃れられないという状況の中で、情緒的に混乱をきたす。
Aに入らない選択肢:Beck,A.T.
Beck,A.T.は、認知療法を創始した精神科医です。
イェール大学を卒業後、精神分析療法を行っていたが、うつ病の精神療法的研究を通して認知のあり方がうつなどの情緒状態と深く関連していることを明らかにして、短期間の構造化された面接で非適応的な認知を修正することによってうつ病やパニック障害などの精神疾患を治療することを目的とした認知療法を提唱しました。
ベックの定義では、認知療法は、認知やその認知プロセスを変えることで、すでにある障害や、想定されている障害を修正しようとする方法ですね。
Aに入らない選択肢:Pavlov,I.P.
Pavlovは、旧ソ連の生理学者です。
20世紀初頭、消化生理の研究中に得た事実をヒントとして条件反射の研究を始めました。
1904年、生理学者として初めてノーベル生理学・医学賞を与えられています。
彼の心理学の貢献として有名なのは条件反射の研究です。
条件反射とは、信号となる刺激と信号づけられる反応との間に一時的な結合が形成されることによって、中枢神経系の高位部で行われる適応行動のことです。
パヴロフは、イヌの唾液分泌が、食物を摂取するときのみならず、飼育者の足音を聞いただけでも起こるなどの事実から、条件反射の理論を組み立てていきました。
条件反射説は、行動主義的心理学の提唱者ワトソンの説の展開においても中心的役割を果たしており、学習理論の発展にも寄与することとなります。
条件反射説は、行動療法として結実しました。
彼の理論を応用した動物実験により、不適応的な恐怖反応が条件づけの手続きによって、形成されたり、除去したりできることを実証した諸研究をもとに、不適応行動の病態の理解と治療法を、条件づけの立場から追求しようとする動きが起こりました。
これらの研究は今日の行動療法の基盤となりました。
パブロフは、条件反射説を応用して、動物に困難な課題を与えて、実験的に異常な状態を引き起こす実験神経症の研究を行い、臨床精神医学にも大きな影響を与えました。
その上、実際に人間の精神疾患(ヒステリー)を観察することによって、それらを生理学的に理解し、神経症や精神病は可逆的で、実験的に起こしたり、治療したりすることができると結論したのです。
Bに入る選択肢:学習性無力感
客観的非随伴が非随伴的知覚を導き、別の新たな状況に対しても不適切な一般化を生じて無力感が形成されます。
つまり、強制的・不可避的な不快経験やその繰り返しの結果、何をしても環境に対して影響を及ぼすことができないという誤った全般的ネガティブな感覚が生じることにより、解決への試みが放棄され「あきらめ」が支配する結果となるのです。
セリグマンは、統制不能の電気ショックを与えられ続けたイヌが、別の統制可能な状況において、自ら電気ショックから逃れようとせずうずくまったままであったことについて、電気ショックが逃避不能であり自分の行動が無力であることを学習したとして、これを学習性無力感と呼びました。
この学習性無力感の獲得は動物にとって、食欲・性欲の減退のほか、腫瘍の形成や体重の減少、脳内の化学物質の変化など、生理的過程への波及を含む幅広く深い影響を生じさせるものであることが明らかになっています。
Bに入らない選択肢:否定的スキーマ
否定的自働思考は、患者の思考に熟慮なく飛び込んでくる習慣的思考のことです。
当然、知らぬ間に否定的感情をもたらし、うつ気分にさせます。
さらに、スキーマ、仮説、信念などと呼ばれている上位の概念が否定的自働思考の背景にあり、幼児期より次第に形成されるが、このスキーマや仮説のゆがみも、認知療法の重要な治療ないし予防の対象とされています。
ベックによると、うつ病者というのは、幼児期より否定的見方、つまり歪んだスキーマ(否定的スキーマ)をもっており、それがストレスによって発動され、それが具体的には否定的自働思考となって日常生活に機能し、うつ病が引き起こされるとしています。
例えば、「自分は完全な仕事ができなければ人から好かれない」という否定的自働思考があれば、仕事のつまずきによって容易に否定的見方に取り込まれてしまうということですね。
この点についてベックは、うつ病患者は否定的認知の3兆候という、独特の不合理な信念を持っていると指摘しています。
「自己に対する否定的概念」「人生に対する否定的解釈」「将来に対する空虚で絶望的な考え」がそれであり、この3兆候はすべて何らかの喪失をめぐって生じてくる悲観的な考えとされています。