公認心理師 2021-120

医療観察法に関する問題です。

過去問で出題されている内容も多かったので、選択肢を絞りやすかったと言えますね。

問120 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律〈医療観察法〉について、誤っているものを1つ選べ。
① 通院期間は、最長5年以内である。
② 社会復帰調整官は、保護観察所に置かれる。
③ 精神保健観察は、社会復帰調整官が担当する。
④ 入院施設からの退院は、入院施設の管理者が決定する。
⑤ 心神喪失等の状態で放火を行った者は、医療及び観察等の対象となる。

解答のポイント

医療観察法に関する基本的事項を把握している。

選択肢の解説

① 通院期間は、最長5年以内である。

こちらについては医療観察法第44条に規定されていますね。


第四十四条(通院期間) 第四十二条第一項第二号の決定による入院によらない医療を行う期間は、当該決定があった日から起算して三年間とする。ただし、裁判所は、通じて二年を超えない範囲で、当該期間を延長することができる。


上記の通り、「3年間」が基本で、延長は「2年を超えない範囲」ですから、本選択肢の「最長5年以内」というのは正しい内容であることがわかりますね。

この「超えない範囲」を「以内」と読み替えられるかが問われている印象もあります(この辺は日本語の正しい理解という感じでしょうかね)。

ちなみに「第四十二条第一項第二号」についてもチェックしておきましょう。


第四十二条(入院等の決定) 裁判所は、第三十三条第一項の申立てがあった場合は、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎とし、かつ、同条第三項に規定する意見及び対象者の生活環境を考慮し、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める決定をしなければならない。
一 対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定
二 前号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 入院によらない医療を受けさせる旨の決定
三 前二号の場合に当たらないとき この法律による医療を行わない旨の決定


このように、要は通院治療を受けさせるという決定に関する条項ということになりますね。

以上より、選択肢①は正しいと判断でき、除外することになります。

② 社会復帰調整官は、保護観察所に置かれる。
③ 精神保健観察は、社会復帰調整官が担当する。

これらの選択肢の内容は「公認心理師 2018追加-31」で示されていますね。

こちらについては、以下の規定が定められています。


第十九条(事務) 保護観察所は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 第三十八条(第五十三条、第五十八条及び第六十三条において準用する場合を含む。)に規定する生活環境の調査に関すること。
二 第百一条に規定する生活環境の調整に関すること。
三 第百六条に規定する精神保健観察の実施に関すること。
四 第百八条に規定する関係機関相互間の連携の確保に関すること。
五 その他この法律により保護観察所の所掌に属せしめられた事務

第二十条(社会復帰調整官) 保護観察所に、社会復帰調整官を置く。
2 社会復帰調整官は、精神障害者の保健及び福祉その他のこの法律に基づく対象者の処遇に関する専門的知識に基づき、前条各号に掲げる事務に従事する。
3 社会復帰調整官は、精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者として政令で定めるものでなければならない。


このように、社会復帰調整官は保護観察所に置かれ、「生活環境の調整」「精神保健観察」「関係機関相互間の連携の確保」などを行うことが規定されています。

以上より、選択肢②および選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。

④ 入院施設からの退院は、入院施設の管理者が決定する。

こちらについてはちょっと長いですが、必要な箇所を引用しましょう。



第四十九条(指定入院医療機関の管理者による申立て) 指定入院医療機関の管理者は、当該指定入院医療機関に勤務する精神保健指定医による診察の結果、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により入院している者について、第三十七条第二項に規定する事項を考慮し、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するために入院を継続させてこの法律による医療を行う必要があると認めることができなくなった場合は、保護観察所の長の意見を付して、直ちに、地方裁判所に対し、退院の許可の申立てをしなければならない。

第五十条(退院の許可等の申立て) 第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により入院している者、その保護者又は付添人は、地方裁判所に対し、退院の許可又はこの法律による医療の終了の申立てをすることができる。

第五十一条(退院の許可又は入院継続の確認の決定) 裁判所は、第四十九条第一項若しくは第二項又は前条の申立てがあった場合は、指定入院医療機関の管理者の意見を基礎とし、かつ、対象者の生活環境を考慮し、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める決定をしなければならない。
一 対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院を継続させてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 退院の許可の申立て若しくはこの法律による医療の終了の申立てを棄却し、又は入院を継続すべきことを確認する旨の決定
二 前号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 退院を許可するとともに入院によらない医療を受けさせる旨の決定
三 前二号の場合に当たらないとき この法律による医療を終了する旨の決定
2 裁判所は、申立てが不適法であると認める場合は、決定をもって、当該申立てを却下しなければならない。
3 第四十三条第二項から第四項までの規定は、第一項第二号の決定を受けた者について準用する。
4 第四十四条の規定は、第一項第二号の決定について準用する。


これらの内容をまとめておきましょう。

まず、入院の申し立てをできるのは、①指定入院医療機関の管理者(第49条)、②保護者又は付添人(第50条)になりますね。

この申し立てを受けた「地方裁判所」は、「継続入院(申立てを棄却。医療観察法による医療は継続)」「退院治療から通院治療に変更(医療観察法による医療は継続)」「医療観察法による医療を終了(退院)」のいずれかを決定することになります(第51条)。

このように、医療観察法において、入院施設からの退院は、「地方裁判所」が決定することが定められていますね。

以上より、選択肢④が誤りと判断でき、こちらを選択することになります。

⑤ 心神喪失等の状態で放火を行った者は、医療及び観察等の対象となる。

対象となる罪種に関しては「公認心理師 2018追加-31」などでも出題されていますね。

医療観察法第2条に本法における対象行為の規定が示されています。


第二条(定義) この法律において「対象行為」とは、次の各号に掲げるいずれかの行為に当たるものをいう。

  1. 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八条から第百十条まで又は第百十二条に規定する行為
  2. 刑法第百七十六条から第百八十条までに規定する行為
  3. 刑法第百九十九条、第二百二条又は第二百三条に規定する行為
  4. 刑法第二百四条に規定する行為
  5. 刑法第二百三十六条、第二百三十八条又は第二百四十三条(第二百三十六条又は第二百三十八条に係るものに限る)に規定する行為

具体的な罪名については上記の刑法の条項を引く必要がありますが、それは以下になります。

  1. 現住建造物等放火、非現住建造物等放火、建造物等以外放火と各未遂罪
  2. 強制わいせつ、強制性交、準強制わいせつ及び準強制性交と各未遂罪
  3. 殺人、殺人関与及び同意殺人と各未遂罪
  4. 傷害(傷害致死を含む)
  5. 強盗、事後強盗と各未遂罪(強盗致死傷を含む)

上記のうち、強制わいせつ(未遂含む)と強制性交(未遂含む)を分けて、いわゆる6罪種と呼ばれています。

ちなみに傷害は軽微なものは除外されます。

このように「心神喪失等の状態で放火を行った者」は、医療観察法の対象になることがわかりますね。

よって、選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することになります。

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