公認心理師 2019-145

問145はプログラム学習に関する問題です。
プログラム学習の原理を把握し、各選択肢がその原理に沿っているか否かを判断させようとしています。

問145 中学1年生の数学教科担任Aは、方程式の単元で困難度の異なる計算問題30問が印刷されたプリントを授業中に用いることを考えた。その際、最初から少しずつ難しくなるように問題を配置し、生徒が積極的に解答を書き込めるような工夫をした。また、模範解答も用意した。さらに、授業中には自分のペースで取り組めるような時間を設定するこ
とにした。
このプリントを用いたAの授業をプログラム学習の原理に沿ったものにするために必要なこととして、最も適切なものを1つ選べ。
①グループで答え合わせをする時間を設ける。
②解答するための1問当たりの制限時間を生徒に設定させる。
③1問ずつ解答した直後に、答え合わせをするように指示する。
④計算問題が苦手な生徒に対しては、教師が一緒に答え合わせを行う。
⑤全ての問題に正しく解答した生徒から休み時間にしてよいと告げる。

今年度の試験では、こうした教育方法・評価に関する問題の出題も見られましたね。
2019-27の形成的評価の問題など。
教育学関係の知識も求められているということになりますね。

解答のポイント

プログラム学習の5つの原理を把握していること。

選択肢の解説

①グループで答え合わせをする時間を設ける。
②解答するための1問当たりの制限時間を生徒に設定させる。
③1問ずつ解答した直後に、答え合わせをするように指示する。
④計算問題が苦手な生徒に対しては、教師が一緒に答え合わせを行う。
⑤全ての問題に正しく解答した生徒から休み時間にしてよいと告げる。

プログラム学習は、スキナーの理論提起が主たる契機となって構築されたものです。
プログラム学習におけるプログラムとは「学習目標を書く学習者に達成させるために学習内容を具体化し目標行動として、あらかじめ系列化した意図に従って確実に学習させる整理・体系化した内容」を指します。
すなわち、学習内容が強化の論理に従って細かく順序よく整理され(=スモールステップの原理)、ステップごとに学習者の反応が喚起されるよう(=積極的反応の原理)に進行しながら、各ステップの学習の確認(=フィードバックの原理)がなされ得るようになっていることです。
また、プログラムによる学習の進度は各学習者の個別(=自己ペースの原理)に応じてなされます。
更に、意図的に作成され学習者に供するプログラムは常時学習者の学習結果により修正(=学習者検証の原理)されることが特徴です

つまりプログラム学習は以下のようにまとめられます。

  1. スモールステップの原理:細かく学習内容がわかれ、順序よく整理されている。
  2. 積極的反応の原理:積極的に反応しないと学習がすすまない。
  3. フィードバックの原理:反応の結果がすぐにわかること。
  4. 自己ペースの原理:自分のペースで進められること。
  5. 学習者検証の原理:学習者の検証・診断ができること。

これらに合わせ、本問の選択肢の検証を行っていきましょう。

まず選択肢①については、「フィードバックの原理」に反していると思われます
グループでの答え合わせになると、解いた直後に正誤の判定が行われないということになります。
このことは即時正誤判断が行われるべきという「フィードバックの原理」に反していると同時に、周囲のペースに合わせるという面から見れば「自己ペースの原理」にも反していると見なすことができます。

選択肢②および選択肢⑤については、「自己ペースの原理」に反していると思われます
選択肢⑤は、正解することで報酬が与えられるような形になっており、それは自分のペースで進めるという方針と反すると考えられます。
プログラム学習であれば、学習内容によって学習者が自ら進めていくような形式を採ることが求められますから、こうした報酬などの外的要因を持ち出すのは不適切です。
選択肢②の制限時間という考え方も同様に自分のペースで進めるという方針と反しているように思われますが、選択肢②では「制限時間を生徒に設定させる」とあるので確実に反しているとは言えません。
オペラント条件づけを人間の教育に応用したのがプログラム学習ですから、これらの選択肢はその辺からの混乱を狙っているものと思われます。
ただスキナー自身は「遅い学習者はさらに悲惨な結果をこうむっているのだ。当人の自然なスピードを超えて進行することへのプレッシャーの効果は累積する」と述べているように、こうした外的要因によるプレッシャーをネガティブなものと見なしていることがわかりますね。
いずれにせよ、これらはプログラム学習という枠組みの取り組みと合致しないということは明らかだと思われます。

選択肢③については、「フィードバックの原理」に沿ったものであると判断できます
プログラム学習においては、学習者が問題に答えた直後に正誤が判明します。
時間をおいてからまとめて結果を通知されるよりも、1問答えるごとにフィードバックをもらえるほうが、より強い印象を受けるということになります。
スキナーは「ティーチングマシンは家庭教師のごとく、正しい返答をするたびに生徒を強化する」と述べており、それはこの原理を指しています。

選択肢④については、「スモールステップの原理」および「積極的反応の原理」に反していると思われます
そもそも「計算問題が苦手な生徒」に対しては、教師が一緒に何かをするのではなく、その生徒が自らの力で学べるような設定を行うのがプログラム学習のはずです。
そのためにスモールステップを設け、苦手であっても能動的に取り組めるようにすることが大切と言えるでしょう。
スキナーは「それぞれのステップは、生徒が必ず理解できるくらい小さく、かつ行動の充分な修得にいくらか近づくものでなければならない」と述べていますね。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です