公認心理師 2022-120

公認心理師の登録取り消しに関する問題です。

公認心理師資格試験における頻出問題の一つと言えるでしょう。

問120 公認心理師の行為のうち、登録が取り消される場合があるものを1つ選べ。
① 公認心理師としての資質の向上を怠った。
② 公認心理師の信用を傷つける行為をした。
③ 高校生のカウンセリングを行うに当たって、担任教師と連携しなかった。
④ クライエントの自殺を回避するために、面接で得た秘密を関係者に伝えた。

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解答のポイント

公認心理師の義務と、それに違反した場合の法的解釈を理解している。

選択肢の解説

① 公認心理師としての資質の向上を怠った。
② 公認心理師の信用を傷つける行為をした。
③ 高校生のカウンセリングを行うに当たって、担任教師と連携しなかった。
④ クライエントの自殺を回避するために、面接で得た秘密を関係者に伝えた。

まずは資質向上の責務について公認心理師法から抜き出してみましょう。

こちらは公認心理師法第43条の「資質向上の責務」を指しています。


第四十条(信用失墜行為の禁止) 公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

第四十一条(秘密保持義務) 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

第四十二条(連携等) 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

第四十三条(資質向上の責務) 公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

※第2条各号は以下の通り。

  1. 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
  2. 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

上記のように、公認心理師は信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、連携等、資質向上の責務などの義務を有しています。

さて、ポイントなのが、こうした義務に反した場合に登録が取り消されるか否かです。

こちらについては、公認心理師法第32条第2項に規定されています。


第三十二条(登録の取消し等) 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。
一 第三条各号(第四号を除く)のいずれかに該当するに至った場合
二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。


上記の通り、信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、医師からの指示(連携)の規定に違反した場合は、登録の取り消しと名称及び心理師という文字の使用停止が命じられる可能性があります。

この時点で、資質向上の責務(上記の第43条がそれ)に違反したとしても、登録の取り消しと名称及び心理師という文字の使用停止が命じられることはないことがわかりますね(つまり、選択肢①が除外される)。

資質向上の責務については、何をもって違反とするかがわかりづらいところがありますから(例えば、子育てで休職中であったとしても、子育てという営み自体が臨床実践に役立つことが多いわけですし、映画や小説を嗜むことだって重要とされていますね)、理解できるところではあります。

また、選択肢③の「高校生のカウンセリングを行うに当たって、担任教師と連携しなかった」についても、もちろん、連携しなかったことは問題ではありますが、その対象が「担任教師」である以上、上記の条項には該当しないことになります。

公認心理師法の「登録の取消し等」に関しては、あくまでも「医師からの指示」の規定に違反した場合に該当するとなっていますから、本問の「担任教師」というのは該当しないことになるわけですね。

とは言え、法律上は問題がなかったとしても、やはり連携をしないというのは実践上の問題があり、それによって最も不利益を被るのはクライエントになりますから、連携を重視すべきという点は変わりません。

続いて、選択肢④の「クライエントの自殺を回避するために、面接で得た秘密を関係者に伝えた」になります。

こちらは秘密保持義務の違反になるか否かが重要になってきますが、以下の秘密保持義務の例外状況を知っておくことが大切になります。

  1. 明確で差し迫った生命の危険があり、攻撃される相手が特定されている場合
  2. 自殺など、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態
  3. 虐待などが疑われる場合
  4. そのクライエントのケアなどに直接関わっている専門家同士で話し合う場合(相談室内のケース・カンファレンスなど)
  5. 法による定めがある場合
  6. 医療保険による支払いが行われる場合
  7. クライエントが、自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判などによって提起した場合
  8. クライエントによる明示的な意思表示がある場合

これらについては、過去に何度も試験問題で問われている内容になります。

選択肢④の「クライエントの自殺を回避するため」というのは、秘密保持義務の例外状況に該当しますから、クライエントを守るために「面接で得た秘密を関係者に伝えた」という対応を取ることは問題ありません。

もちろん、クライエントの状態が本当に危機的なものであるか否かという見立てが重要になってくるわけですが、その辺の判断は本当に難しいと感じます(特に、何か客観的な指標を用いることができないような状況であれば尚更ですね)。

最後に選択肢②の「公認心理師の信用を傷つける行為をした」を見ていきましょう。

この「信用失墜行為の禁止」に関しては、「違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる」という事項になりますね。

こちらは刑事罰ではなく、あくまでも行政処分ということになりますね(刑事罰になり得るのは秘密保持義務違反ですね)。

このように、信用失墜行為をしてしまった場合は、公認心理師の登録が取り消される可能性があります。

以上より、選択肢①、選択肢③および選択肢④は公認心理師の登録が取り消されることはなく、選択肢②が登録取り消しの可能性があると判断できます。

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