今回のブループリントの修正点に関して、各項目の感想を述べていきます。
全体的な感想としては、被っている項目が整理されたり、何を勉強してよいのかイメージがわかなかった箇所が修正されているという印象があるので、良かったかなと思っています。
肝心の勉強量の変化については、あまり無いと思います。
社会心理学関係が整理されたのは助かった反面、いろいろ今後出てきそうだなという感じでしょうか。
全体的な勉強量は変わりないでしょうが、もともとが広大な範囲なので大変なのは変わりません。
①公認心理師としての職責
(1)公認心理師の役割
こちらでは「多職種連携・地域連携」の削除が行われました。
しかしもともと大項目で「③多職種連携・地域連携」が設けられているため、削除したというよりも重複を避けるために上記からは削除したという意味合いが強いと思います。
というわけで、引き続き「多職種連携・地域連携」は出題されると考えられます。
④心理学・臨床心理学の全体像
(1)心理学・臨床心理学の成り立ち
こちらでは「構成主義」を「要素主義」に変更しています。
この「構成主義」という表現はティチェナーの功績も大きいので、よりヴントの「要素主義」を強調した形になっているように思われます。
そして、要素主義から他の心理学への波及をより強調した形とするために、他の心理学と併記したのでしょう。
公認心理師2018追加-5が、まさにそれを問うている問題と言えますね。
ここらへんはきちんと流れで覚えておくことが求められています。
(2)人のこころの基本的な仕組みとその働き
「感覚」が追加された形になっています。
よって、「感覚器官が刺激されたとき生じる意識経験」に関する内容も出していきますよ、ということでしょうね。
元々出題されるだろうと思われていた内容でしょうから、勉強に特に大きな変化はないでしょう。
⑤心理学における研究
(1)心理学における実証的研究法
「検査法」の追加については、単なる一般法則の発見だけでなく、その一般法則から導かれる標準値と、特定の人・集団の性格・知能・学力・興味などを一定の手続きで測定して比較することで、様々な検証を行っていくことが入ってきたのだと思います。
新たに「実践的研究」とまとめられていますが、もともとの「事例研究」や「質的研究」の中でもグラウンデッドセオリーなどのようなより実践的な研究法を想定しているのだと思います。
(2)心理学で用いられる統計手法
「マルチレベル分析」は複数のレベルの独立変数が、個人のレベルの従属変数に及ぼす影響を分析するための分析法ですが、回帰分析の発展形の一つです。
回帰分析は(3)でも削除されているので出題しないということなのかな?とも思いましたが、そう甘くはないと思います。
なぜなら回帰分析も「多変量解析」の一つですから、この中に混ぜ込んでいるのだと捉えるのが妥当でしょう。
そういうわけで引き続き回帰分析とその近隣の分析法についても学ぶ必要はありそうです。
「構造方程式モデリング」は共分散構造分析のことで、双生児研究などに用いられています。
重回帰分析や因子分析、パス解析などの機能を併せ持つ統合手法として、因果関係を示す点に特徴がある解析手法です。
この「因果関係」という点は重要だろうと思います(相関分析などは因果関係があるとは考えないから、比較しやすい)。
(3)統計に関する基礎知識
「回帰分析」の削除は上記の通り、引き続き出題される可能性は残されています。
「仮説検定」を「検定」に変えましたが、特に大きな変化とは言えないでしょう。
推定とは母集団を特徴づける母数を統計学的に推測することですが、「点推定」は平均値などを1つの値で推定することです。
「区間推定」とセットで覚えるのが良いでしょう。
⑥心理学に関する実験
(1)実験計画の立案
「リサーチクエスチョン」とは、先行研究をレビューし、わかっていることとわからないことを把握した上で、臨床的意義があり実現可能な条件を満たした問いになります。
もしかしたら、ある状況設定が示されて適切な「リサーチクエスチョン」を選択させるような問題が出るのかもしれないですね。
(2)実験データの収集とデータ処理
ここは単なる表記の変更のみですから問題ないでしょう。
心理学に関する研究にも同様の項目がありますから、同じものと見做しても良いように思います。
⑦知覚及び認知
(1)人の感覚・知覚の機序及びその障害
単なる項目の整理と字の修正に留まっています。
「失認」がここから削除されたのは妥当だと思います。
高次脳機能障害で論じる方が適切な項目でしょうから。
つまりは、ここから削除されてはいますが「失認」の問題は出る可能性はありますね。
(2)人の認知・思考の機序及びその障害
わざわざ「思考」や「意思決定」を追加していますが、すでにこの領域は出題されています。
今後もこの領域からは出していきますよ、ということでしょうね。
⑧学習及び言語
(1)人の行動が変化する過程
細かな用語の整理や、限定的な表記の取りやめ(古典的条件づけに関する用語を示さなくなった)になります。
古典的条件づけ、オペラント条件づけは幅広く出していくよ、というメッセージかもしれないですね。
「実験神経症」は削除されていますが、「般化、弁別」に吸収されたと考えることもできますから油断はできません。
「自己効力感」はこの領域に載せるのは不自然でしたから、削除は妥当だと思います。
きっちり「教育に関する心理学」の領域で残っていますから、出ると考えておいた方が良いでしょうね。
(2)言語の習得における機序
記号論に「音韻論、形態論」が加わりました。
ある特定の言語の構成にかかわる音がどのような構造を持ち、また、それらがどのような振る舞いを示すかを明らかにしようとする「音韻論」、ヒトの言語の語(単語)を構成する仕組みを研究する分野である「形態論」ですね。
概念で覚えるよりも、実際にどのようなことを研究しているのかで考えた方が理解しやすいかもしれません。
⑨感情及び人格
(1)感情に関する理論と感情喚起の機序
(2)感情が行動に及ぼす影響
感情に関して細やかに分けたという印象が強いです。
一方で「精神力動理論」など、「感覚及び感情」という領域において何を学べばよいかよくわからなかった項目が削除されました。
(3)人格の概念及び形成過程
細かく分けただけで勉強することは変わりません。
(4)人格の類型、特性
「類型論、特性論」と「5因子モデル」を分けたのは妥当だと思います。
「5因子モデル」は「特性論」の流れで示されたものですから、併記しておくと別物のような誤解を与えます。
「パーソナリティ検査」を「検査」にしたのは、単に人格検査だけでなく知能検査・発達検査も想定してだと思われます。
ここは範囲が拡大したと捉えた方が良いですね。
⑩脳・神経の働き
(2)記憶、感情等の生理学的反応の機序
項目が統合されただけで、内容も勉強しなければいけない量も据え置きでした。
⑪社会及び集団に関する心理学
(1)対人関係並びに集団における人の意識及び行動についての心の過程
削除された「対人関係、対人魅力、対人行動」についても、(2)の「対人認知、印象形成」「対人行動」に移行しただけと捉えることもできます。
ただ、元々このカテゴリーはどういった括りなのか見えにくい面が大きかったです。
今回の改定で少し見えやすくなったようにも思えます。
勉強は以前よりもしやすいかもしれません。
項目は増えましたけど。
(2)人の態度及び行動
「対人行動、対人的相互作用」という広範な概念が追加されました。
この項目だけで、実はかなりの出題範囲があると思われます。
フェスティンガーやハイダーの理論などを入れ込みやすいところです。
(3)家族、集団及び文化が個人に及ぼす影響
「不適切な養育(虐待、ネグレクト)」という不適切な項目が修正されました。
ネグレクトも虐待でしょうが、と突っ込みたくなりましたからね。
また、「異文化間葛藤」も追加されました。
削除された「紛争」とかもこの中に入るかもしれません。
⑫発達
(2)自己と他者の関係の在り方と心理的発達
⑭心理状態の観察及び結果の分析
(1)心理的アセスメントに有用な情報(生育歴や家族の状況等)とその把握の手法等
「半構造化面接」と「インテーク面接」を分けましたね。
分けた方が良いと思います。
余談ですが、心理検査については小項目で出しませんね。
あらゆる検査について把握するよう努めなさい、というメッセージでしょうか。
(4)心理検査の適応、実施及び結果の解釈
「実施上の留意点」が追加されました。
⑮心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助)
(1)代表的な心理療法並びにカウンセリングの歴史、概念、意義及び適応
「構成主義」の削除については前述の通りですね。
(2)訪問による支援や地域支援の意義
「地域包括ケアシステム」の追加は、オープンダイアローグやACTなどが想定されますが、もっと身近なケアシステムも含むのでしょうね。
(3)要支援者の特性や状況に応じた支援方法の選択、調整
「カウンセリング、逆転移」に「転移」を追加するのは、当然だと思います。
⑰福祉に関する心理学
(1)福祉現場において生じる問題とその背景
「知的障害、身体障害」に「精神障害」を追加されました。
(2)福祉現場における心理社会的課題と必要な支援方法
「基本的生活習慣の未熟さ」の削除については良かったですね。
⑱教育に関する心理学
(1)教育現場において生じる問題とその背景
「不登校、いじめ、非行」「教師-生徒関係」「プログラム学習」の追加など、より実践的な内容が記載されるようになりました。
「セルフモニタリング」の削除については、学習理論の中で出題される可能性が高い概念でしょうから引き続き勉強しておきましょう。
「学級崩壊」の削除については妥当です。
(2)教育現場における心理社会的課題と必要な支援
「学業不振」を削除しましたが、過去に2回ほどアンダーアチーバー関係は出ています。
または、「教育評価」が追加されており、これには児童・生徒の成績評価が含まれているので、こちらでもアンダーアチーバー関係は出題できそうです。
FDなどですね。
⑲司法・犯罪に関する心理学
(2)司法・犯罪分野における問題に対して必要な心理的支援
「非行・犯罪の理論」「非行・犯罪のアセスメント」「施設内処遇と社会内処遇」「司法面接」の追加があり、修正というよりも項目を作り直したという印象が強い分野でした。
⑳産業・組織に関する心理学
(1)職場における問題に対して必要な心理的支援
「労働災害」が追加されたので、労災関係の事例が今後は出てくる可能性がありますね。
「ポジティブ心理学」は削除されましたが、別の項目で近いものが残っています。
㉑人体の構造と機能及び疾病
(1)心身機能、身体構造及びさまざまな疾病と障害
重なっている項目が削除されるなど、妥当な変化だったと思います。
㉒精神疾患とその治療
(1)代表的な精神疾患の成因、症状、診断法、治療法、経過、本人や家族への支援
患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味する「アドヒアランス」が追加されました。
㉓公認心理師に関係する制度
(2)福祉分野に関する法律、制度
「障害福祉計画」「障害者基本法」が追加されたので、しっかりと押さえておきましょう。