公認心理師 2018追加-5

世界で最初の心理学実験室を創設したW.Wundtの心理学の特徴として、正しいものを1つ選ぶ問題です。

公認心理師2018-79が類似問題ですね。

直前の公認心理師2018追加-4とも関連が深い問題です。

問5 世界で最初の心理学実験室を創設した W. Wundt の心理学の特徴として、正しいものを1つ選べ。
① 行動レベルの反応を測定した。
② 心的過程の全体性を重視した。
③ 無意識の研究の発端となった。
④ ヒト以外の動物も実験対象とした。
⑤ 心的要素間の結合様式を解明しようとした。

心理学の源流を学ぶ上で、ヴントの構成心理学についてはきちんと把握しておくことが大切です。

ヴントは1879年にドイツのライプチヒ大学で世界で最初に心理学の実験室を設けた人物です。

解答のポイント

ヴントの構成心理学について理解していること。

正答以外の選択肢が示している理論についても把握している。

選択肢の解説

⑤心的要素間の結合様式を解明しようとした

ヴントは訓練された実験参加者に、自分自身の「意識」の内容を観察・報告させる「内観法」と呼ばれる方法を用いて、厳密に統制された状況下で「意識」の分析を行いました。

そして、意識の構成要素は純粋感覚と単純感情であり、それらの複合体として意識の成り立ちを説明できると考えました。

すなわち、物質の成り立ち(分子や原子の複合体)と同様のことが心理の世界でも生じると考えたわけです。

これと類似した考えとして、ティチェナーの考え方があります。

ティチェナーは、意識を要素へ分解し、その要素が連合する法則を見出したり、要素の生理学的条件とを結びつけることが心理学の本質と考えました。  

ティチェナーとヴントの違いは、意識の基本的要素を統合するか否かが大きく、ティチェナーは統合することには関知しませんでした。

個人差を無視して心的過程の一般法則を発見しようとする純粋科学としての心理学を追求する姿勢はティチェナーがより強かったです。

ヴントも心的要素を探したが、ティチェナーの方がその要素還元論の姿勢は強く、また徹底していました。  

以上よりも、心的要素を探し、それらの結合を理解しようとした点にヴントの構成心理学の特徴があると言えます。

よって、選択肢⑤は正しいと判断できます。      

①行動レベルの反応を測定した
④ヒト以外の動物も実験対象とした

こちらは行動主義に関する内容になっています。

上記のヴントの心理学を批判する形で広がった理論の一つが、行動主義になります。  

ヴントが対象とした「意識」は外部から観察できない主観的な現象です。

ワトソンは、その点を批判し、心理学が科学になるためには外部から客観的に観察できる「行動」を研究対象とするべきと主張しました。

この考え方が行動主義の中心にあり、その後、スキナーやハルらに受け継がれていきました。

元々のワトソンの主張も、パブロフの研究を参考にしていました。

パブロフと言えば、イヌの条件づけが有名ですね。

スキナーやハル、トールマンなども動物を用いた実験研究を行っています。  

動物の行動も客観的に観察可能であり、動物実験を通して得た知見を人間にも応用する形になっています。 スキナーは、スキナーボックスに自分の娘を入れたそうですね。  

この点は、行動主義の考えを用いている行動療法にもつながっています。

行動療法への批判はその点に関するものが多いとされていますが、確かに「動物でも人間でも起こるような現象」に関しては非常に行動療法の価値の大きさを感じます。 (もちろん行動療法の価値はそれに留まるものではありません)  

以上より、選択肢①および選択肢④は誤りと判断できます。      

②心的過程の全体性を重視した

こちらはゲシュタルト心理学に関する内容になっています。

ヴントは、心を構成要素の複合体であると考えていましたが、ゲシュタルト心理学では心理現象の全体性を主張しました。  

その主張の例として出されるのが、ヴェルトハイマーの仮現運動です。

仮現運動とは2つの点が一定間隔で点滅することで、光が動いて見えるという現象です。

単に心が要素の複合体ならば、2つの点は2つの点以上に感じられるはずがなく、それが「動いて見える」ということが生じているのは、人間は単に部分の総和ではなく、1つのまとまり(ゲシュタルト)をもつからである考えるわけです。  

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。      

③無意識の研究の発端となった

こちらは精神分析学に関する内容になっています。

フロイトは、人間の精神活動においては意識よりも無意識の方が重要な役割を果たすと考え、意識の分析をするだけでは人間の心を理解することはできないと考えました。

この「意識」ではなく「無意識」を重視する点が、ヴントとの大きな違いです。  

この考え方は性格心理学、臨床心理学、哲学の方面に多大な影響を与えました。

人間は、自分が思っているほど、自分をコントロールできているわけではないということですね。  

フロイトは、無意識を前提としてさまざまな方法論を編み出しており、その代表が自由連想法です。

こうしたことを背景としてフロイトの創始したのが精神分析です。

精神分析において重要なのは「無意識の存在を盲信すること」とする人がいるくらい、無意識というのは大切な概念となっています。  

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。  

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