公認心理師 2019-96

問96は生徒指導に関する問題です。
生徒指導の意義を理解するということは、人の成長において「ルール」「枠組み」「他者と同じ活動をすること」がどういう意義を持つかを理解するということにもつながります。

問96 学校における生徒指導に関する説明で、正しいものを1つ選べ。
①教育相談の一環として行われる。
②小学校に生徒指導主事を置かなければならない。
③問題や課題のある特定の子どもに対して行われる。
④学習指導要領には、生徒指導が位置づけられている。
⑤非行や暴力、反抗などの反社会的行動を修正することである。

生徒指導の問題は、まず「生徒指導提要」を見ることが大切です。
文部科学省のこちらのページで全文を見ることが可能です。

こうした解説本もありますね。
生徒指導提要は学校領域で働くのであれば、ぜひ目を通しておきたいものです。
スクールカウンセラーは「教育相談」の一環として行われ、多くの教員にとってSCは「教育相談」には明るくても「生徒指導」には不勉強であると思われがちです。
本来、教育相談と生徒指導は車の両輪のような関係ですから、SCとして勤務する場合には教育相談だけでなく生徒指導の心理的成長上の意義をしっかりと理解しておいてほしいところです。

過去問でも2018-36および2018追加-97で出題がありますね。
この問題と同じく、生徒指導提要の把握で解けるようになっています。

解答のポイント

生徒指導提要の内容を把握している。

選択肢の解説

①教育相談の一環として行われる。

生徒指導提要第5章の冒頭には以下のような記載が見られます。

「中学校学習指導要領解説(特別活動編)によれば、「教育相談は、一人一人の生徒の教育上の問題について、本人又はその親などに、その望ましい在り方を助言することである。その方法としては、1対1の相談活動に限定することなく、すべての教師が生徒に接するあらゆる機会をとらえ、あらゆる教育活動の実践の中に生かし、教育的配慮をすることが大切である」とされています。すなわち、教育相談は、児童生徒それぞれの発達に即して、好ましい人間関係を育て、生活によく適応させ、自己理解を深めさせ、人格の成長への援助を図るものであり、決して特定の教員だけが行う性質のものではなく、相談室だけで行われるものでもありません。これら教育相談の目的を実現するためには、発達心理学や認知心理学、学校心理学などの理論と実践に学ぶことも大切です。また、学校は教育相談の実施に際して、計画的、組織的に情報提供や案内、説明を行い、実践することが必要となります」

「他方で、生徒指導は、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のこととされます。そのことは、「教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間関係を育てるとともに、生徒理解を深め、生徒が自主的に判断、行動し積極的に自己を生かしていくことができるよう」指導・援助することでもあります」

教育相談と生徒指導の相違点としては、教育相談は主に個に焦点を当て、面接や演習を通して個の内面の変容を図ろうとするのに対して、生徒指導は主に集団に焦点を当て、行事や特別活動などにおいて、集団としての成果や変容を目指し、結果として個の変容に至るところにあります。児童生徒の問題行動に対する指導や、学校・学級の集団全体の安全を守るために管理や指導を行う部分は生徒指導の領域である一方、指導を受けた児童生徒にそのことを自分の課題として受け止めさせ、問題がどこにあるのか、今後どのように行動すべきかを主体的に考え、行動につなげるようにするには、教育相談における面接の技法や、発達心理学、臨床心理学の知見が、指導の効果を高める上でも重要な役割を果たし得ます。
このように教育相談と生徒指導は重なるところも多くありますが、教育相談は、生徒指導の一環として位置付けられるものであり、その中心的な役割を担うものといえます

上記の通り、教育相談が生徒指導の一環と見なすのが適切です。
事実、校務分掌を見てみると「生徒指導部会」の中に「教育相談」が入っていることがほとんどのはずです(学校に勤めている人は見てみると良いでしょう)。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

②小学校に生徒指導主事を置かなければならない。

学校教育法施行規則第70条には以下のような規定があります。

  1. 中学校には、生徒指導主事を置くものとする
  2. 前項の規定にかかわらず、第四項に規定する生徒指導主事の担当する校務を整理する主幹教諭を置くときその他特別の事情のあるときは、生徒指導主事を置かないことができる。
  3. 生徒指導主事は、指導教諭又は教諭をもつて、これに充てる。
  4. 生徒指導主事は、校長の監督を受け、生徒指導に関する事項をつかさどり、当該事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。

このように、中学校には生徒指導主事を置くことが法律で定められております。
一方で小学校では、生徒指導主事は現行法制上、必置とされていません
ただし、各教育委員会等により置かれている主任等の例として「小学校の生徒指導主事」が置かれていることも有り得ます
もしも「教育委員会の定めで小学校に生徒指導主事を置いている学校」に勤めていたら、勘違いをして正しいと判断してしまうかもしれないですね。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

③問題や課題のある特定の子どもに対して行われる。
⑤非行や暴力、反抗などの反社会的行動を修正することである。

生徒指導の冒頭には以下のように生徒指導の意義が記されております。

生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。すなわち、生徒指導は、すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになることを目指しています。生徒指導は学校の教育目標を達成する上で重要な機能を果たすものであり、学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つものと言えます」

「各学校においては、生徒指導が、教育課程の内外において一人一人の児童生徒の健全な成長を促し、児童生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ、学校の教育活動全体を通じ、その一層の充実を図っていくことが必要です」

「自己指導能力をはぐくんでいくのは、学習指導の場を含む、学校生活のあらゆる場や機会です。授業や休み時間、放課後、部活動や地域における体験活動の場においても、生徒指導を行うことが必要です。その際、問題行動など目前の問題に対応するだけにとどめることがないようにする必要があります。発達の段階に応じた自己指導能力の育成を図るには、各学校段階や各学年段階、また年齢と共に形成されてくる精神性や社会性の程度を考慮し、どの児童生徒にも一定水準の共通した能力が形成されるような計画的な生徒指導が求められます

他方で、個々の児童生徒の発達状況を踏まえた個別の指導や援助も大切です。足りない部分を補ったり、望ましい部分をさらに伸ばしたりといったことも求められるからです。共通性を基盤に据えつつ個性のさらなる伸長を図っていくためには、学校が組織として計画的に生徒指導を行っていくことが必要なのです。教育課程全体の中で生徒指導がどのように位置付けられ、実際に行っていけばよいのかについて考えておくことが重要です」

上記の通り、生徒指導はすべての児童生徒を対象として行われるものであり、その活動を通して自己指導能力等を高めることを目指しています。
よって、選択肢③および選択肢⑤は誤りと判断できます。

④学習指導要領には、生徒指導が位置づけられている。

学習指導要領の「総則」にこちらは記載があります。

これらの内容で生徒指導の部分を見ておきましょう。

生徒指導は、学校の教育目標を達成するために重要な機能の一つであり、一人一人の生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めるように指導、援助するものである。すなわち、生徒指導は、全ての生徒のそれぞれの人格のよりよい発達を目指すとともに、学校生活が全ての生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになるようにすることを目指すものであり、単なる生徒の問題行動への対応という消極的な面だけにとどまるものではない」

学校教育において、生徒指導は学習指導と並んで重要な意義をもつものであり、また、両者は相互に深く関わっている。各学校においては、生徒指導が、一人一人の生徒の健全な成長を促し、生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ、学校の教育活動全体を通じ、学習指導と関連付けながら、その一層の充実を図っていくことが必要である」

文部科学省が作成する「学校評価ガイドライン」では、各学校や設置者において評価項目・指標等の設定について検討する際の視点となる例として考えられるものを便宜的に分類した学校運営における以下の12分野ごとに例示している。

  1. 教育課程・学習指導
  2. キャリア教育(進路指導)
  3. 生徒指導
  4. 保健管理
  5. 安全管理
  6. 特別支援教育
  7. 組織運営
  8. 研修(資質向上の取組)
  9. 教育目標・学校評価
  10. 情報提供
  11. 保護者、地域住民等との連携
  12. 環境整備

このことからも学校において生徒指導が重要な位置を占めていることがわかりますね。

以上より、学習指導要領には生徒指導が位置づけられていることがわかります。
よって、選択肢④は正しいと判断できます。

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