公認心理師 2022-112

Iveyらのマイクロカウンセリングにおける「かかわり行動」の重要な4要素に関する問題です。

初出の概念なので、これを機に全体像を把握しておきましょう。

問112 A. E. IveyとM. Iveyのマイクロカウンセリングにおける「かかわり行動」の重要な4要素に該当しないものを1つ選べ。
① 声の調子
② 自己開示
③ 言語的追従
④ 視線の位置
⑤ 身体的言語

関連する過去問

なし

解答のポイント

マイクロカウンセリングのマイクロ技法階層表について把握している。

選択肢の解説

① 声の調子
③ 言語的追従
④ 視線の位置
⑤ 身体的言語

マイクロカウンセリングとは、1990年代にアイヴィら(アレンとメアリ)によって開発されたカウンセリングの基本モデルになります(以下の書籍が代表的かと思います。ここでの解説もこの書籍に基づいて行っていきます)。

クライエントとのコミュニケーションの形を一つひとつ技法として命名し、それらを系統的に配列し、目に見える形で一つずつ習得することができるカウンセリングの訓練プログラムとなっています(マイクロとは、小単位、ステップバイステップ、体系的、認知的といった小さい、細密というコンセプトを含有している)。

まず指導者が技法を説明し、ビデオで例を示し、その後学習者が実習を行い、再び指導者がフィードバックを行うという順で進んでいきます。

マイクロ技法階層表の最初の段階は「基本的かかわり技法」であり、「かかわり行動」「クライエント観察技法」「基本的傾聴の連鎖」「意味の反映」から成り立っています(例えば、「基本的傾聴の連鎖」は、開かれた質問、閉ざされた質問、励まし、言い換え、要約、感情の反映から構成されている)。

これらの基本的な技法だけでも十分に効果的な面接を行うことが可能とされています。

その上の段階には「焦点の当て方」「積極技法」「対決」「技法の連鎖および面接の構造化」の段階があり、最終段階として「技法の統合」に至ります。

これらの技法はカウンセリングに限らず人間に関わるさまざまな状況下で活用できるとされています。

前述の通り、アイヴィは、その臨床的体験や日常的体験から「個となる個人の異なる問題への適切なアプローチ」をモットーに、各種カウンセリング・心理療法に用いられるそれぞれのコミュニケーションの形を「技法」と命名し、階層表にまとめました。

ここでは共通の技法は以下の3つに大別されます。

  1. カウンセラーリードの少ないかかわり行動、かかわり技法
  2. 能動的にかかわる積極技法
  3. 技法が統合され、会話が構成される部分

上記の「かかわり行動」には、文化的に適切な視線の合わせ方、身体言語を解すること、声の調子でかかわること、相手の話にずれないでついていくことが含まれ、主として非言語のものになります。

「かかわり技法」には、相手を観察する技法(クライエント観察技法)、質問技法、表現を励ます技法、相手の表現したこと、特に内容をまとめて明確にするための言い換え技法と要約技法、および感情面を明確にする感情の反映技法があります。

「かかわり」は相手に伝わるものでなければならず、特に「傾聴」の姿勢が行動として現われることが重要とされています。

積極技法は、クライエントを行動に導く技法であり、指示、教示、助言、情報提供、自己開示、解釈、論理的帰結、フィードバックなどがあり、日常的に使われるが「かかわり」なくしてこれらは機能しないとされています。

なお、意味の反映、対決、焦点の当て方技法は複合技法とされています。

さて、本問で問われているのは「かかわり行動」に関する内容ですね。

ここではアイヴィの示している「かかわり行動」について詳しく見ていくことにしましょう。

かかわり行動の主たる昨日は、クライエントが話すのを励ますことであり、クライエントがストーリーを展開することで、カウンセラーの話す時間を節約することにもなります。

また、クライエントが本題から外れた話や有効でない話を長々と続けたりしているとき、それを止めてカウンセリングの流れに戻すのにも、かかわり行動は有効とされています。

人はストーリーを持っているものであり、インタビューやカウンセリングの場でカウンセラーがそれを聴くこと、それによってストーリーが展開されること、表現されることが問題解決のプロセスになります。

クライエントが自分ならびに自分の問題および自分の周りのことについて明確にすることは、問題解決のプロセスを促すことになり、聴く姿勢を示すこと(つまり、相手の言っていることに関心を示すということ)がまず援助関係のスタートになります。

カウンセラーが「かかわり」を示すことで、クライエントも「かかわり」を示すようになりますし、クライエントの「かかわり」パターンについての気づきが増します。

この「かかわり」の指標には以下の4つのポイントが示されています。

  1. 視線の合わせ方:人と話をするときに、その人を見ること。クライエントが「このカウンセラーは私の言うことを聴こうとしているのだ」ということがわかるような合図を目線のやり方で表す。目線の合わせ方の適切さは人によって異なるものなので直視が良いとは限らない。文化によっては、直視が敵意を示すこともあり、同じ文化圏であっても性別や年齢によって快適な視線の位置は異なるかもしれない。
  2. 声の質:カウンセラーの声の調子や話す速さはカウンセラーが相手をどのように感じているかをはっきりと示すものである。声の調子と話す速さを変化させることによって「私はあなたが言おうとしていることに実に関心を持っています」という表現の仕方がどれくらいあるかを考えてみよう。
  3. 言語的追跡:クライエントはその問題について話にやってくる。それゆえ、主題を変えてはいけない。クライエントの話にくっついていること。
  4. 確実な身体言語:カウンセラーがクライエントの動きと調子を合わせて、面と向かい合い、ちょっと前かがみになる姿勢と表情で、促すような、励ますようなジェスチャーを示して聴くなら、クライエントはあなたが自分に関心を持っているということを知る。

つまりは、あなた自身でありなさい、そして真剣にかかわるということが基本であるということです。

こうした「かかわり行動」はマイクロ技法の根幹を成すものであり、主に非言語によってなされるが、個人的かつ文化的に適切な「かかわり行動」なしに、面接もカウンセリングもあり得ないとされています。

このように、ここで挙げた選択肢の声の調子、言語的追従、視線の位置、身体的言語はマイクロカウンセリングにおける「かかわり行動」の4要素であると言えます。

よって、選択肢①、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は該当すると言え、除外することになります。

② 自己開示

先述の通り、マイクロ技法階層表の最初の段階は「基本的かかわり技法」であり、「かかわり行動」「クライエント観察技法」「基本的傾聴の連鎖」「意味の反映」から成り立っています。

その上の段階には「焦点の当て方」「積極技法」「対決」「技法の連鎖および面接の構造化」の段階があり、最終段階として「技法の統合」に至ります。

「かかわり行動」には、文化的に適切な視線の合わせ方、身体言語を解すること、声の調子でかかわること、相手の話にずれないでついていくことが含まれ、主として非言語のものになります。

「かかわり技法」には、相手を観察する技法(クライエント観察技法)、質問技法、表現を励ます技法、相手の表現したこと、特に内容をまとめて明確にするための言い換え技法と要約技法、および感情面を明確にする感情の反映技法があります。

積極技法は、クライエントを行動に導く技法であり、指示、教示、助言、情報提供、自己開示、解釈、論理的帰結、フィードバックなどがあり、日常的に使われるが「かかわり」なくしてこれらは機能しないとされています。

なお、意味の反映、対決、焦点の当て方技法は複合技法とされています。

これらを踏まえると、本選択肢の「自己開示」はマイクロカウンセリングにおける「積極技法」の一つであることがわかりますね。

ここではマイクロカウンセリングにおける積極技法について詳しく述べていきましょう。

積極技法はクライエントを行動に導く新しいストーリーを引き出すものです。

「ストーリーの展開、そこでの肯定的資質の探求、ストーリーの再構成、行動への意向のプロセス」は、カウンセリングのモデルであるが、これらは傾聴技法の連鎖と連携し、5段階の構成においてクライエントとその思考、感情、行動の統合を促すものです。

なお、マイクロカウンセリングにおける5段階は以下の通りです。

  1. ラポール
  2. 問題の定義化
  3. 目標を設定
  4. 選択しを探求し不一致と対決する
  5. 日常生活への般化

この5段階は、しばしばポジティブで支持的雰囲気で話しているだけで構成されますが、積極技法では一歩進んでこれを変化への、実際に検証可能な行動をもたらします。

そこでは新しい洞察により、新しいストーリーが語られ、より効果的に、個人の変化や成長を導くことになります。

積極技法における各技法と、その定義・機能は以下の通りまとめられます。

  1. 解釈/リフレーム:クライエントに代替の枠組みを提供する、そしてそこから人生の状況を眺め、新しいストーリーを引き出す。
  2. 論理的帰結:クライエントをして代替的行動について可能性のある結果を眺めさせる。
  3. 自己開示:カウンセラーは自分のストーリー、考え、経験を簡単に話すことを必要とする。慎重にこの技法を使い、クライエントに同等意識を持たせ、クライエント側の信頼と開示を励ます。
  4. フィードバック:クライエントが他者からまたは面接者からどのように見られているかについて情報を提供する。
  5. 情報提供/アドバイス/意見/指示:新しいインフォメーションをクライエントに提供する。就職についての情報、性についての教示、テストの結果など。面接者によって指示されたストラテジーと行動に従う。そしてそれはその問題についてのストーリーの展開や具体的行動を取ることを助ける。認知行動療法と主張訓練に用いられる中心的スキルとされている。

より詳しく本選択肢の「自己開示」について述べると以下の通りです。

自己開示はカウンセラーの「ひとりごと」だが、クライエントに関係のある「ひとりごと」です。

使いすぎると相手を依存的にさせる恐れがあるので、①クライエントの経験により近く、クライエントにとって意味があり、②感情的に共感性があり、③タイミングが良いこと、が重要になります。

自己開示は複雑な技法なので、以下の事柄を念頭に置くと良いとされています。

  • 個人名で呼ぶ:私が、私を、私の、という表現。
  • 感情、内容または両方を述べる:私は~思う、という風に、全てカウンセラーの何らかの行動を示す言葉を使う。
  • 副詞と形容詞を伴う目的語:「あなたがあなたのパートナーに主張的になれたことについて、私は嬉しい」など。
  • 感情を表す言葉とその表現を:カウンセラーのクライエントに関連したセルフトークという性格をもつものであり、自己開示には大切な要素の一つ。

これらをまとめると、自己開示はクライエントにカウンセラーのストーリーを話すことになります。

そこではクライエントのストーリーをきく、カウンセラー自身のストーリーの適切さを査定し、それを簡単に話し、クライエントに焦点を当てることに戻ります。

クライエントがどのようにカウンセラーのストーリーを受けとめているかが重要になります。

以上のように、「自己開示」はマイクロカウンセリングにおける「かかわり行動」の重要な4要素には該当せず、「積極技法」の一つであると言えます。

よって、選択肢②が「かかわり行動」の重要な4要素に該当しないものと判断でき、こちらを選択することになります。

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