公認心理師 2018追加-89

トークンエコノミー法について、正しいものを1つ選ぶ問題です。

オペラント条件づけは、1つの行動を、先行条件-行動-結果(三項随伴性)で捉え、特定の行動に対して当人にとって望ましい結果(好子、強化子)や望ましくない結果(嫌子、罰子)を伴わせることで、その行動の生起頻度を変化せることを言います。

大雑把にいえば、トークンエコノミー法は、ある行動に対してトークンを与えることで、その行動の生起頻度を高める手法です。
こちらは行動療法における基本的手法なので、しっかりと押さえておきたいですね。

解答のポイント

トークンエコノミー法の基本的事項について把握していること。

選択肢の解説

『①タイムアウトを活用する』
『②レスポンスコストに基づく』
『⑤問題行動の減少を主要な目標とする』

公認心理師2018追加-39で示した通り、オペラント条件づけにおける強化子の種類と操作は以下の通りです。

  • 強化子の提示+反応頻度の増大=正の強化
  • 強化子の提示+反応頻度の減少=正の罰(正の弱化)
  • 強化子の除去+反応頻度の増大=負の強化
  • 強化子の除去+反応頻度の減少=負の罰(負の弱化)

これらをトークンエコノミー法等に当てはめると本選択肢がわかりやすいです。

まずトークンエコノミー法とは、適切な行動をとることができたらトークンを与えることで、その行動の生起頻度を増やす方法です。
よって「正の強化」に該当することがわかります

それに対して、本来与えられるトークンを没収する手続きを「レスポンスコスト」と呼びます
レスポンスコスト法は、ある行動を強化するためにトークン(強化子;単純に言えばご褒美)を与える「トークンエコノミー法」とは逆に、望ましくない行動を減少させるためにトークンを減らしていく方法ということになります
本来であれば与えられるはずであったトークンが奪われたことにより、その行動の頻度が低下するシステム「負の罰」を用いたオペラント条件付けの応用技法ということになります

そして負の罰(負の弱化)には「タイムアウト法」もあります。
タイムアウトとは、望ましくない行動を示したら強化子から遠ざけるという手続きです
それによって望ましくない行動の生起頻度を減らそうとしているわけですから「負の罰」であることがわかりますね
パニックを起こした子どもに対して、その場から遠ざけてできるだけ刺激の少ない場所(たとえば、物が少ない部屋など)に置くことによってパニックを生じさせたような強化子から遠ざけるなどがオーソドックスな使い方になります。

このようにトークンエコノミー法とタイムアウト及びレスポンスコストは、異なる枠組みの技法であることが明らかです。
以上より、選択肢①および選択肢②、選択肢⑤は誤りと判断できます。

『③賞賛によって行動を強化する』

トークンエコノミー法では、本来強化子として価値のないトークンが獲得されたとき、それがある一定のルールに基づいて本来強化子として価値のあるものと交換されるという手続きが取られます。
賞賛は強化子になり得るものですから、好ましい行動を取ったときに賞賛するのはトークンエコノミー法とは呼びません

ただし現場でのトークンエコノミー法では、例えば、子どもの片づけを目標にトークンエコノミー法を行う場合などは同時に褒めることなどもあります。
しかし、あくまでも褒めることはトークンエコノミー法の枠外の強化子であり、あくまでもトークンエコノミー法の強化子はトークンという「本来強化子として価値の無いもの」であると言えます
トークンを得た後に、トークンを強化子となり得るものと交換することが「トークンエコノミー法」になるわけですね。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

『④バックアップ強化子〈好子〉を用いる』

トークンエコノミー法では、本来強化子として価値のないトークンが獲得されたとき、それがある一定のルールに基づいて本来強化子として価値のあるものと交換されるという手続きが取られます。
このとき、トークンと交換される本来強化子として価値あるものを「バックアップ強化子」と言います
トークンという本来なら強化子としての価値がないものの「背景にある強化子」なので「バックアップ強化子」というわけですね

クレジットカードのポイントなどがそれに当たります。
「今日はポイント2倍だから使いすぎちゃった」というのは、お店からのトークンエコノミー法を受けているということです。

以上より、選択肢④が正しいと判断できます。

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