公認心理師 2022-17

WAIS-Ⅳの下位検査について、制限時間の有無に関する理解を問う内容です。

検査を日常的に取っている人ならすぐに解けましたね。

問17 WAIS-Ⅳにおいて、制限時間のない下位検査を1つ選べ。
① 算数
② パズル
③ 絵の完成
④ 行列推理
⑤ バランス

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※制限時間の有無まで解説してなかったのが悔やまれます。

解答のポイント

各下位検査の内容から制限時間の必要性を判断できる。

選択肢の解説

① 算数
② パズル
③ 絵の完成
④ 行列推理
⑤ バランス

まずは過去問でやっている範囲について紹介していきます。

各下位検査の分類について記述していきましょう。

言語理解指標
(VCI)
知覚推理指標
(PRI)
ワーキングメモリ指標
(WMI)
処理速度指標
(PSI)
基本検査類似
単語
知識
積木模様
行列推理
パズル
数唱
算数
記号探し
符号
補助検査理解バランス:16~69歳のみ
絵の完成
語音整列:16~69歳のみ絵の末梢:16~69歳のみ

WAIS-Ⅳでは、全体的な認知能力を表す全検査IQ(FSIQ)と、4つの指標得点を算出します。

以下では、各項目の内容を解説していきましょう。

群指数の概要と、下位検査の簡単な実施方法および検出する能力を記載していきます(こちらのサイトがわかりやすかったので、こちらから引用しつつ)。

【言語理解:言語的なことに対する理解や把握の能力】

  • 類似:2つの言葉の共通点や類似点を答える;概念を理解し、推理する能力
  • 単語:単語の意味を答える;単語の知識や言語概念の形成について
  • 知識:一般的な知識に関する質問に答える;一般的な事実に関する知識の量や学習について
  • 理解:一般原則や社会的状況についての質問に答える;社会性や一般常識を理解する能力

【知覚推理:目で見て物事を理解したり操作したりする能力】

  • 積木模様:モデルと同じ模様を積木を使って作成する;抽象的な視覚刺激を分析して統合する能力
  • 行列推理:不完全な行列を完成させるのにもっとも適切なものを選ぶ;流動性知能や視覚性知能、空間に関する能力
  • パズル:組み合わせると見本と同じになるものを選ぶ;視覚刺激の分析に関する能力
  • バランス:天秤が釣り合うために適切な重りを選ぶ;量的な推理、類比的な推理の能力
  • 絵の完成:提示された絵の中で欠けているものを答える;重要なところとそうではないところの見分けの能力

【ワーキングメモリー:記憶や注意集中に関する能力】

  • 数唱:耳で聞いた数字を復唱する;特に聴覚的な記憶力や注意力に関する能力
  • 算数:算数の文章題を暗算で答える;計算能力や記憶力に関する能力
  • 語音整列:かなと数字を順番に並べる;記憶力、継次処理、注意力に関する能力

【処理速度:手先の器用さやスピードに関する能力】

  • 記号探し:刺激となる記号があるかどうかを探す;作業効率や集中力に関する能力
  • 符号:見本となる記号を書き写す;視覚的な認知やスピードに関する能力
  • 絵の抹消:さまざまな図形の中から特定の図形を探す;選択的な注意や運動に関する能力

さて、ここまでが過去問で求められている内容です。

以下では本問に即した解説をしていきましょう。

各選択肢で示されている下位検査について、より詳しい解説を加えていくことにします。

算数:ワーキングメモリ指標の基本検査で、制限時間内に暗算で回答させる。この下位検査を翻訳する際、原則「原版通りの問題を使用すること」とあったが、日本人に馴染みのない用語については記憶負荷を避けるため修正されている。

パズル:知覚推理指標の基本検査であり、選択肢の中から組み合わせると見本図版と同じになるもの3つを、制限時間内に選ぶ課題である。言語や文化の差異を考慮する必要が無いため、原版がそのまま使用されている。

絵の完成:知覚推理指標の補助検査で、時間制限内に提示された視覚刺激の欠落箇所を見つける課題である。この検査は主に、視知覚、視覚体制化、集中力、対象の本質的な細部を見つける力を反映していると考えられている。

行列推理:一部が空欄になった図版を提示し、その空欄に当てはまるものを選択肢の中から選ばせる課題である。この検査は主に、流動性知能、視覚性知能、分類及び空間能力、部分と全体の関係の理解、同時処理、知覚体制化を反映すると考えられている。

バランス:知覚推理指標の補助検査であり、重りの一部が隠されている天秤を見て、その隠されている重りとして適切なものを選択肢の中から制限時間内に選ぶ課題。言語や文化の差異を考慮する必要が無いため、原版の27問がそのまま用いられている。

その他の下位検査で時間制限の有無は以下の通りです。

  • 時間制限あり:積木模様、記号探し、符号、絵の抹消
  • 時間制限なし:類似、数唱、単語、知識、理解、語音整列

こうした制限時間の有無に何かしらの法則性があるか否かが重要です。

指標得点ごとに見ていくと以下の通りです。

  • 言語理解:類似・単語・知識・理解;すべて制限時間なし
  • 知覚推理:積木模様・パズル・バランス・絵の完成;この4つは制限時間あり
         行列推理;制限時間なし
  • ワーキングメモリ:数唱・語音整列;時間制限なし
             算数;時間制限あり
  • 処理速度:記号探し・符号・絵の抹消;すべて制限時間あり

このように指標得点で見ても、言語理解や処理速度では下位検査の制限時間の有無が揃っていますが、知覚推理やワーキングメモリではバラバラになっています。

そもそも論ですがウェクスラー式検査は知能を複数の能力の合算として捉えていますから、「Aという能力を見るときに採用されている下位検査は制限時間ありで、Bという能力を見るときに採用されている下位検査は制限時間が無い」という可能性も考えてみたわけですが、どうやらそういうわけでもなさそうです。

それよりも下位検査の特性によって「時間に制限があってもなくても出てくる答えや得点は変わらない」のであれば制限時間なしになっており(言語理解の下位検査はまさにそうですね)、「制限時間がないと得点が変わってしまう」のであれば制限時間が設けられる(処理速度の下位検査は制限時間がないとみんな満点ですね)ことになっているようです。

上記を踏まえれば、各下位検査の内容をよく理解しておくことが、制限時間の有無を把握する一番の近道だろうと思います。

ウェクスラー式検査は、多くの臨床現場で活用される検査ですから、下位検査の内容を把握しておいても損はありませんしね。

本問では知覚推理唯一の制限時間なしの下位検査である「行列推理」が正解になっているので、ちょっと難しく感じた人もいるかもしれませんね(他選択肢もパズル、絵の完成、バランスと知覚推理の下位検査で揃えられていたのも厳しいところでした)。

いずれにせよ、選択肢①~選択肢③および選択肢⑤は制限時間ありなので除外し、選択肢④が制限時間なしなのでこちらを選択することになります。

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