公認心理師 2020-97

MMSE単体については初出になりますね。

実はこの問題、ちゃんと改訂の歴史を理解しているかを問うている内容になっています。

問97 MMSEについて、正しいものを1つ選べ。

① 非言語性課題が3問ある。

② 人の見当識課題は含まれない。

③ シリアル7課題(100から7を順に引く)は4回まで行う。

④ 直後再生課題に続く4課題の後に、遅延再生課題が実施される。

⑤ 直後再生課題では、全ての名称を言えるまで4回繰り返して尋ねる。

解答のポイント

MMSE-Jの内容を把握している。

MMSEの改訂による変更点の歴史を把握している。

選択肢の解説

① 非言語性課題が3問ある。
③ シリアル7課題(100から7を順に引く)は4回まで行う。
④ 直後再生課題に続く4課題の後に、遅延再生課題が実施される。
⑤ 直後再生課題では、全ての名称を言えるまで4回繰り返して尋ねる。

Mini Mental State Examination;MMSEは、認知症の診断用に米国で1975年、フォルスタインらが開発した質問セットです。

30点満点の11の質問からなり、見当識、記憶力、計算力、言語的能力、図形的能力などを評価します。

元々、認知症をスクリーニングするカットオフ値は、健常者と認知症の間で定められていましたが、近年になって「軽度認知障害(MCI)」という概念が出てきました。

MCIとは、健常と認知症の中間に属する、軽度の認知機能の障害を指します。

この概念の提出により、健常とMCI、MCIと認知症のカットオフ値が必要となってきた結果、MCI群と軽度アルツハイマー群の最適カットオフ値は23/24、健常者群とMCI群の最適カットオフ値は27/28とされています(ちなみに、健常者およびMCI群と軽度アルツハイマー群のカットオフ値は24/25となっている)。

つまり、総得点が23点以下ならば軽度認知症、24点以上27点以下ならばMCI、28点以上ならば健常者として弁別するのが妥当ということになります。

具体的な検査項目は以下の通りです。

  1. 見当識(時間の見当識)
    今年は何年ですか。
    いまの季節は何ですか。
    今日は何曜日ですか。
    今日は何月何日ですか。
  2. 見当識(場所の見当識)
    ここは何県ですか。
    ここは何市ですか。
    ここは何病院ですか。
    ここは何階ですか。
    ここは何地方ですか。
  3. 記銘
    相互に無関係な物品名を3個聞かせ、それをそのまま復唱させる。1個答えられるごとに1点。
    「今から私がいう言葉を覚えてくり返し言ってください。
    『さくら、ねこ、電車』はい、どうぞ」
    「今の言葉は、後で聞くので覚えておいてください」
    ※この3つの言葉は、質問5で再び復唱させるので3つ全部答えられなかった被験者については、全部答えられるようになるまでくり返す(ただし6回まで)。
  4. 注意と計算
    ○シリアル7課題「100から順番に7をくり返し引いてください」
    ※5回くり返し7を引かせ、正答1つにつき1点。合計5点満点。
    ※答えが止まってしまった場合は「それから」と促す。
    ※シリアル7課題を拒否した場合逆唱課題を行う(「フジノヤマ」を逆唱)。
  5. 再生
    「さっき私が言った3つの言葉は何でしたか」
    ※質問3で提示した言葉を再度復唱させる。
  6. 呼称
    時計を見せながら 「これは何ですか?」
    鉛筆を見せながら 「これは何ですか?」
    ※正答1つにつき1点。合計2点満点。
  7. 復唱
    「今から私がいう文を覚えてくり返しいってください。
    『みんなで力をあわせて綱を引きます』」
    ※口頭でゆっくり、はっきりと言い、くり返させる。1回で正確に答えられた場合1点を与える。
  8. 理解
    次の3つの命令を口頭で伝え、すべて聞き終わってから実行する。
    「右手にこの紙を持ってください」
    「それを半分に折りたたんでください」
    「机の上に置いてください」
    ※紙を机に置いた状態で教示を始める。
    ※各段階毎に正しく作業した場合に1点ずつ与える。合計3点満点。
  9. 読字
    「この文を読んで、この通りにしてください」
    ※「目を閉じてください」
    ※被験者は音読でも黙読でもかまわない。実際に目を閉じれば1点を与える。
  10. 書字
    「この部分に何か文章を書いてください。どんな文章でもかまいません」
    ※テスターが例文を与えてはならない。意味のある文章ならば正答とする。
    ※名詞のみは誤答、状態などを示す四字熟語は正答。
  11. 描画
    「この図形を正確にそのまま書き写してください」
    ※模写は書くが10個あり、2つの五角形が交差していることが正答の条件。
    ※手指のふるえなどはかまわない。
これらを踏まえて、各選択肢を見ていきましょう。

選択肢①の「非言語性課題が3問ある」ですが、MMSEは「時間の見当識」「場所の見当識」「記銘」「計算」「再生」「物品呼称」「復唱」の7項目の言語性課題と、「理解」「読字」「書字」「描画」の4項目の動作性課題を加えた計11項目から構成されていますから、非言語性課題は4問が正しい認識ですね。

選択肢③の「シリアル7課題(100から7を順に引く)は4回まで行う」ですが、こちらについては「5回くり返し7を引かせ、正答1つにつき1点」というルールが定められていますから、本選択肢の内容は誤りと言えますね。

選択肢④の「直後再生課題に続く4課題の後に、遅延再生課題が実施される」については、実際には「記銘」→「計算」→「再生」という順番になっていますから「計算」という1課題挟んだ後に行われることになっています。

選択肢⑤の「直後再生課題では、全ての名称を言えるまで4回繰り返して尋ねる」ですが、この直後再生課題(記銘)の課題を使って、その後の「再生」の課題に取り組むので、直後再生課題の段階でしっかりと覚えてもらうことが大切になります。

ですから、「この3つの言葉は、質問5で再び復唱させるので3つ全部答えられなかった被験者については、全部答えられるようになるまでくり返す」とありますが、「ただし6回まで」という注意書きがありますね。

認知症が一定以上進行している場合、その場で覚えようにも覚えられないということも起こり得ます。

そのときには「覚えるまで何度も繰り返す」というのも無理があるので、6回までという回数制限が設けられているわけです。

個人的には、6回であってもちょっと多いのではないかと感じることがありますが。

以上より、選択肢①、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断できます。

② 人の見当識課題は含まれない。

さて、本選択肢に関してですが、上記のMMSEの項目を見てもらえればわかるとおり、「人の見当識課題」については含まれていません。

ただし、実は本選択肢はただ「有るか無いかの判断」について問うているのではないのです。

本選択肢は「MMSEの歴史を把握しているか」を本質としては問うています。

MMSEは現在の形に改訂される前には、人の見当識課題が含まれておりました。

ずいぶん前の記憶なので曖昧ですが、確か「今日は誰と一緒に来ましたか?」といった質問が含まれていたと思います。

たいていは家族なのですが、施設職員ということもあり得ますね。

このように「検査者が事前に事実を知っておかねばならない」という内容であったため、いろいろ不都合があったと想像できますね。

他にも、いつも妻と来ていた人が、たまたま息子と一緒に来ていても「妻」と答えることもあったでしょうし、そうなると検査者側も「いつも奥さんと一緒に来ている人だよね」と間違えてしまうということも考えられます。

こうした事情もあって、その後の改訂では「人の見当識課題」については削除されています。

そして現在では「MMSE-J」として改訂が更になされ、シリアル7課題に拒否した場合に逆唱課題が付されたり、MCIという概念の出現に伴ってカットオフ値が修正されたりといった修正がなされています。

この点も併せて覚えておきましょう。

このように、本選択肢は「現在のMMSEに無い項目だから設定しよう」という単純な理由で定められたのではなく、「過去のMMSEには有った項目だけど、現在は無くなっているという流れを知っている人は確実に解くことができる」という、正確な理解者を歓迎するために設けられた選択肢です。

以上より、選択肢②が正しいと判断できます。

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