公認心理師 2018-115

TATの実施と解釈について、正しいものを1つ選ぶ問題です。

所属していた大学院の先生がおっしゃっていたTATの覚え方。
「 TAT → m(TAT)m 」と泣いて手をついて謝っているとイメージします。
両脇の手にあたる部分のm2つは、Murray&Morganの頭文字m2つを指しています。
これだけで本問の選択肢を1つ削れますよ。

この問題も臨床心理士の過去問でほぼカバーできる内容となっています。
何問か見ていきましたが、心理検査や各心理療法(認知行動系以外)については、臨床心理士の過去問を参考にしておくと役立つように思います。

TATについても、臨床心理士で問われた内容も含めて解説を行っていきます。

解答のポイント

TATの手続きや解釈が、明確に定まっていないという特異性を知っていること。
その他、TAT理論の基本的事項を把握していること。

選択肢の解説

『①臨床場面での投影法検査として、L.Bellakによる解釈法と分析法が標準である』

原作者であるマレーの理論には解釈法が定められてはいます。
しかし、後述するようにマレーの手順が現在では使われていない以上、それをそのまま用いることができないのが現実です。

一方で、マレーの方法に代わる、多くの人々が依拠するような解釈法が存在するかといえば、それもありません。
TATにおける解釈法は、未だ「未確立」と言えます。
分析・解釈法については、さまざまなスコア化の試みが提案・実践されていますが、未だ体系化はされていないという状況です。

主流とはなっていませんが、反応分析・解釈に関するまとまった見解なりシステムなりを提示した人は少なくありません。
Tomkins、Stein、Henry、Murstein、Rappaport、Bellakなどです。

ちなみにベラックらは、CAT(10歳以下を対象とし、人物ではなく動物画が用いられている)やSAT(65歳以上を対象とし、登場人物に老齢者が多く登場するなど高齢者が回答しやすいよう工夫)を作成したことでも知られています。

上記の通り、選択肢①は誤りと判断できます。

『②決められた順序に従って全ての図版を呈示することによって正確な解釈が得られる』

TATの図版は、多様な受け取り方を許す場面を描いた図版30枚と、何も描かれていない白紙図版1枚の計31枚から構成されています。

TATの手続きは以下の通りです。

  • 日常生活における葛藤場面が描かれたカードを1枚ずつ呈示し、過去・現在・未来にわたる物語を自由に作ってもらう。
  • 原法では第1系列、第2系列と教示を変えてそれぞれ10枚ずつ、2日に分けて実施することになっているが、原法通りにやらないことがほとんどになっている。決められた通りの順序もない等、厳密な取り決めはない。
  • 「今どんなことが起こっているのか、登場人物がどう感じているのか、結末がどうなるのか」などを“物語ってもらう”ことが大切。
上記の通り、原法では検査者が20枚を選んでいました
また、現在では検査者が任意に何枚か選ぶという形になっています。
たいていのTAT使用者は、一般的に重要とされる図版と、個人的な経験から重要と見做す図版から、せいぜい10数枚のシリーズを構成して使用しています。
また呈示順序についても、ロールシャッハほどの厳密性はありません
TATにおいては教示も諸家によって一定の見解が得られているとは言えません(例えば「ドラマチックな話をつくる」などの教示を主張する人もいれば、それを不要とする人もいます)。
以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

『③G.W.Allportが標準化した欲求-圧力分析による解釈法を基本に、被験者の対人関係の主題を読み取る』

TATは、Murray&Morganによって1935年「空想研究の一方法」という論文で紹介されました。
TATはマレーの欲求圧力理論を基盤としており、パーソナリティを欲求と圧力の相互作用で捉えます
「欲求」とは、衝動、願望、意図等の人間が環境に向かって発する力の総称を指し、「圧力」とは、環境から人間に働きかける力の総称です。

展開される物語のテーマから、クライエントが当面している困難さの内容やそれに対する態度、願望や周囲への期待などを読み取る検査です。
ちなみにTATの日本語訳は「主題統覚検査」です。

TATでは、人物図版が多く、人間関係の様相が現れやすいとされています。
それ以外にも、社会的態度、自己の役割の自覚、他人の役割に対する期待、直接的質問では把握しがたい不満、不安などを探ります

以上より、選択肢③の「G.W.Allportが標準化した欲求-圧力分析による解釈法を基本に」という点や、必ずしも「被験者の対人関係の主題を読み取る」だけでないことがわかります。
よって、選択肢③は誤りと判断できます。

『④被験者には各図版を見てストーリーを構成することが求められるため、物語を通して主題を把握することが解釈において重視される』

TATの手続きは以下の通りです。

  • 日常生活における葛藤場面が描かれたカードを1枚ずつ呈示し、過去・現在・未来にわたる物語を自由に作ってもらう
  • 原法では第1系列、第2系列と教示を変えてそれぞれ10枚ずつ、2日に分けて実施することになっているが、原法通りにやらない。決められた通りの順序もない等、厳密な取り決めはない。
  • 「今どんなことが起こっているのか、登場人物がどう感じているのか、結末がどうなるのか」などを“物語ってもらう”ことが大切
マレーの基本構想は、図版を通して物語ってもらうことで、被検者が自分と同一視していると思われる主人公が示す欲求と、そうした欲求を促進したり阻止したりする形で環境が働きかける圧力との関係によって、その物語に備わる「主題」を把握し、さらに物語の結末の幸・不幸、登場人物の示す感情調などにも注目して、被検者の人格特性を分析する、というものでした。
以上のように、被験者には物語ることが求められ、そこから被験者の「主題」を把握していくことになります。
よって、選択肢④は正しいと判断できます。

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