調査法に関する問題です。
方法の内容を知らなくても解きやすい問題でしたね。
問81 調査において、代理回答や記入ミスが起こりにくい実施方法として、最も適切なものを1つ選べ。
① 電話調査
② 留置調査
③ 面接調査
④ 郵送調査
⑤ ウェブ調査
解答のポイント
調査の各方法の特徴を把握している。
選択肢の解説
③ 面接調査
② 留置調査
訪問にて行う調査研究には、留置調査と面接調査があり、研究対象者と対面して研究者が質問し、研究対象者の回答を記録する面接調査に対して、留置調査はその場で回答を回収しないため人前で回答しにくい場合などに有効とされています。
留置調査では、研究目的や内容を説明して調査票を渡し、後日再訪問して回答を回収するので、対象者は目的や内容を理解した上で時間をかけて回答することができる、 回答回収の確実性が高くて郵送調査などに比べ高い回収率の確保が可能という利点があります。
面接調査であれば、その場で研究者が回答を記録するため、本問で問われている「代理回答や記入ミス」は起こりにくいと考えられます。
留置調査になると、質問票を渡して研究対象者側に回答を委ねる(答える・記入する)ことになるので、どうしても「代理回答や記入ミスが起こりにくい実施方法」とは言えなくなります。
能力は様々なので、当人にその気がなくても記入ミスが起こり得ますし(その辺は同じ人が記入する面接調査だと大丈夫な割合が高い)、「めんどくさいから、アンタやっといて」みたいに他の家族成員に委ねるということも起こり得ますね。
それぞれの調査法には特徴があり、それぞれメリット・デメリットがありますから、自身の調査研究の目的や研究内容に応じて使い分けることが望ましいと言えますね(上述のように、答えにくい質問内容であれば留置調査は有効)。
以上より、選択肢②は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。
① 電話調査
④ 郵送調査
⑤ ウェブ調査
電話調査とは研究対象者に対し、電話を通じて研究内容について聞き取る調査方法のことです。
電話調査の際は、個人や法人に電話をかけることになりますが、名簿方式(あらかじめ用意されている名簿をもとに電話したり、電話帳に記載されている電話番号に電話するというような方法)やRDD方式(Random digit dialing。コンピュータが自動的に数字を組み合わせ、電話番号を作って連絡する方法。携帯電話だけという人も増えており、このような人に対してもRDD方式なら調査が可能になる。ただし、個人・法人の弁別は不可能)などがあります。
電話調査だと、その場で回答がもらえる、具体的な質問ができる、場所の制約が少ない等のメリットはありますが、長時間の電話でのやり取りは不可能(=質問数は制限される)、基本的には電話番号がない世帯には調査できない(調査対象者が絞られる)などのデメリットもあります。
回答については電話口で研究者が行うことができるので、「記入ミス」はすくなくなりますが、電話口で話している人が本当に「自身の研究対象として適切か」を判断する術はありませんから「代理での回答」が生じるリスクは常にあると思っておくと良いでしょう。
郵送調査とは、紙のアンケートを研究対象者に送付し、記入後に返送してもらうという流れで実施する調査研究手法です。
研究対象者の都合の良いタイミングで回答してもらえるため、回答ボリュームの大きい調査内容などに向いているという特徴があります。
また、インターネットに不慣れなシニア層向け、住所がわかれば実施が可能なためメールアドレスが分からない場合などに有効な調査方法とされています。
その特性上、本問の「代理回答や記入ミスが起こりにくい実施方法」とは言えないと考えられますね。
調査対象者の「都合の良いタイミングで回答できる」という利点は、裏を返せば「代理回答がしやすい状況」でもありますし、向こうが記入する以上「記入ミス」のリスクは生じやすいと言えるでしょう。
ウェブ調査とは、文字通りWeb上で実施する調査のことであり、一般的にWeb上での回答で調査が完結するものを指します。
アンケート画面をWeb上に作成し、研究対象者にインターネットを利用してアクセス・回答してもらいます。
Web上で完結するので居住地による制限がない、回答者に足を運んでもらう必要がない、ウェブ上で回答内容を処理できるので回答の分岐や矛盾回答をコントロールできるなどの利点があります。
一方、回答者がインターネット環境のある人に限られるというバイアスがある、回答時点や回答直後に回答について確認・深堀したりすることができないなどのデメリットもあります。
研究内容によっては、対象者がごく狭い範囲に限られることになり、そうなると対象者に直接メールで送ることもあり得ますが、その場合は対象者のメールアドレスを知っておく必要がありますね(だから、対象者がそれほど狭い範囲ではない研究の方が向いているというイメージです)。
その特性上、本問の「代理回答や記入ミスが起こりにくい実施方法」とは言えないと考えられますね。
ネット上の調査などになると真偽を確かめる術はありませんし(あったとしてもあまり数が多くてそんな労力を割くメリットがない)、回答者が正直に答えないこと、回答のミス、代理での回答も生じるリスクがあるわけです。
以上より、選択肢①、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断できます。