この問題については以前解説を行いましたが、以下の通り修正します。
以前の記事をご確認のうえで、以下を読み進めて頂けると幸いです。
本問は選択肢⑤を正答と捉えておりましたが、公式回答では選択肢④が正答となるとのことでした。
ここでは、選択肢⑤を「適切」とした判断の修正と、選択肢④を「不適切」とした判断の修正を行っていきます。
選択肢⑤を「適切」とした判断の修正
以前の解説において『⑤マグニチュード推定法』については、「(方法の)説明を読むと観察者の感覚で判断させている感じがあるので不適切かなと思いましたが」としており、マグニチュード推定法を適切とするのに懸念を示しております。
一方で、こちらを「適切」と判断した理由として採用しているのが、「比率尺度を構成することを前提としている」という点でした。
この点について「基礎心理学実験法ハンドブック」には、以下のように記載されていました。
「しかしながら、マグニチュード推定を行う観察者自身が評価において適用する尺度が直観的なものなので、それを比率尺度としてみなし、報告された数値の間に無条件で比率関係を認めることに問題があると指摘されている」
すなわち、以前の解説内で根拠としていた「比率尺度を構成する」という点については、問題が指摘されているということでした。
それ以外にも問題点が指摘されています。
- 測定に用いられる刺激強度の系列の範囲やモデュラスの値によって冪指数の値が変動することが経験的に知られている。
- 同じ刺激強度についての推定であっても、別の刺激強度系列に対する推定を行った前と後では、系列間の刺激強度の関係によって、感覚量の推定値が変動するという文脈効果があることが知られている。
これらの点は、マグニチュード推定法に反応バイアスを生じさせる可能性があることを示しております。
よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。
選択肢④を「不適切」とした判断の修正
まず以前の解説を読むと「『④二肢強制選択法』については、2択の選択をかなりの数行わせて、統計的に測定値を算出するという手法なので、バイアスが入りにくいように感じます」とバイアスの入りにくさを述べております。
その一方で、こちらを「誤り」と判断した理由として、以下を挙げています。
- 『④二肢強制選択法』自体は、実験者が2択に絞ってどちらかを選ばせる、という方法だと思うので、バイアスがかかりそうな気がする。
- 恒常法がかなりの回数の施行をさせるため「疲労」というバイアスが入ってくることが考えられる。
Yes/No法による判断では、刺激が閾下にある時には、あるいは刺激が存在しない時には、観察者が刺激の存在を報告する反応バイアスを避けることができません。
これを取り除く試みとして強制選択法が開発されました。
強制選択法における観察者の課題は、いくつ化の観察対象の中から刺激が含まれる対象を選ぶというものです。
観察には、次々に提示される選択対象の中から選ぶ時間的強制選択と、同時に異なった位置に提示された対象から選ぶ空間的強制選択とがあります。
強制選択法によってバイアスが排除できるのは、刺激を報告するか否かの選択の余地が観察者にはないからとされています。
二肢強制選択法の例で説明すれば、刺激が弱くて検出できないなら正しく選択できる確率はチャンスレベル(50%)にとどまります。
刺激を検出できるようになると、成績はチャンスレベルを上回るようになっていきます。
すなわち、選択肢④は反応バイアスを取り除く試みとして開発されたという背景があり、この点から選択肢④が正しいと判断できると思われます。